Sunday, May 12, 2013

Race Against the Machine

村井氏の翻訳で日本語でもアクセスできるようになった『機械との競争』を読み了えた(原著で読んだので訳の良し悪しまでは存じ上げない).

Erik Brynjolfsson and Andrew McAfee (2011) Race against the machine: How the digital revolution is accelerating innovation, driving productivity, and irreversibly transforming employment and the economy, Digital Frontier Press.
書籍のwebsite

著者らの意向で電子ブックは$5もしない低価格で読める.英語は平易で分量も軽く,さらりと読み終えることができた.経済学を知らなくても十分楽しめるはずである.

読んでいて頭をよぎったのはMalthusの人口論だ.人口はどんどん増えていくのだが,土地は有限なので食糧生産が人口増加に追いつけない.人口が増えても豊かにならん,ということでMalthusian trapと呼ばれる.

Brynjolfsson and McAfeeのポイントは,Moore's lawよろしくICT技術がどんどん向上してきたしこれから先もしていくと予想されるのに,普通の人間がそれに追いつかないということだ.コンピューターと競合するような単純な仕事をやっているようでは,遠からず仕事を失い人生が詰むことになる.(特に私の勤務校では機械に代替される仕事にしかありつけずloserになる危険性の高い学生が少なくないかもしれない.)

では我々はどうすべきか.「against the machine」と機械に正面から挑むのではなく,「with the machine」と機械を活用する仕事をするとよいはずだ.ICTの発達は普通の労働者には脅威だが,それを使いこなす側には大きなチャンスをもたらしてくれる.

機械に食われないためには,もう少し具体的にどういう能力を磨くべきか.たとえば5月2日の日経新聞で東大の柳川先生は
正解」のない問題に対して答える能力こそが、コンピューターに代替されない能力である。
と述べている.問題解決能力は将来野垂れ死なずに生き抜いていく上で大事なスキルである.そしてこのスキルは閉鎖的な環境で不毛な日常を送っているだけでは身につけられないと思う.解決すべき喫緊の問題に直面しないのだから.学生時代の間に,大きな壁にぶち当たるまで真剣に何かに取り組むといいだろう.

Brynjolfsson and McAfeeの議論は特に目新しいものではない.Acemoglu and Autorやら,Goldin and Katzやら,スーパー経済学者たちも長年取り組んできた問題である.そして私も各講義初回に似たような話をしたはずだ.




ちなみに"Rage" against the machineのほうは,私が中学生の頃にはすでに伝説的バンドとなっていた.ただその真価がわかったのは大人になって本格的にリズム・トレーニングをしてからである.

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