Sunday, September 29, 2013

A Snapshot of Big Mac

購買力平価に基づく為替レートの図を作成した(講義資料の没ネタである).
名目円ドルレートの推移. PPPレートはCPI総合(日本は2010年基準, USは1982-84基準)を利用して,2004年1月を基準に. 出典: 総務省, BLS, The Economist.
 BigMacレートは13年7月時点で1ドル=70.2円と高い.(日本のビッグマックが安すぎるのか?安すぎるとすればなぜか?ちなみに円ウォンレートだと乖離はもっと小さい)

 ビッグマックの代わりにKindle Fire HD 8.9 (16GB)を使い"Kindle指数"を計算すると,1ドル=87.3円となる(日本で24800円, USで284ドル).これは多くの日本企業の想定レートと同様,上図のCPIベース購買力平価に近い水準だ.(ただし私も普段使っている32GB版だと1ドル=94.9円となる. 価格弾力性の違い?)

 一方,"iPad with Retina display指数"の場合,1ドル=99.8円と,現在の円相場(1ドル=98.2円)とかなり近い値となっている.(ただしiPadの価格は49800円, 499ドルとそれぞれfocalnessがありそうな数値なので,PPPを計算する財としてはKindle以上に相応しくないかもしれない.)

 上の図からは,現在の円がundervaluedかどうかは何も言えない.しかし何かをきっかけに通貨安に転機が来たらいろいろと大変そうである.

(注: 投資は自己責任で)


 最近所得収支の動向が気になっている.何か思考の土台となる良いモデルはないだろうか.Momota-Futagami?

Friday, September 27, 2013

国際経済学II, 第1回

私事になるが,私はこの夏休みからそれなりのコストをかけて英会話教室に通っている.アラサーにもなると,勉強するにはお金もかかるし時間的な機会費用も高い,脳みその吸収能力は絶望的,と自分の能力を磨く余裕はほとんど消滅する.学生は極めて低い限界費用で学ぶことができるのでうらやましい限りだ.

 国際経済学IIに関するblog記事には,openmacroというラベルを貼っておく.必要に応じて利用してほしい.

本日の内容:
  • 講義概要
    • ディープな勉強をする機会を提供する
      • 単位がほしいだけなら履修取消をお勧めする
      • 時間をかけて取り組む価値あるレジュメを提供する
    • 救済措置なし 
      • 「卒業がかかってるんですー」などと来ても取り合わない.
      • 疾病や傷害など,特別な事情があれば遠慮なく申し出てほしい.
    • オフィスアワーは金曜1限
      • 気軽に利用してほしい.
      • ただし,私に限らず大学教員は見た目ほどヒマではないので,配慮するように.
    • 勉強の仕方
      • まずはレジュメを熟読することから.自分の言葉で説明できるよう咀嚼すること.
    • レジュメの準備
      • 3回目以降のレジュメは各自プリントアウトなりなんなりして用意するように.私が印刷するのは本日配布した分のみ.
      • パスワードを聞き逃した人は私か誰かに聞くように.パスワードはネット上(LINE含む)で公にしないように.
  • 国際マクロを学ぶとは
    • ゲームのルールを学ぶことからスタート.すぐに勝てるようになるわけではないので過度な期待は禁物.
    • ルールを違反しまくる「知識人」は多い.ルールを知らないと無闇に騙され翻弄されるかも.
      • 「勉強不足でも成功している人がいる」 と「勉強しないほうが成功する」には大きな違いがあるので注意.
  • 数学
    • 講義中にかけ算・わり算・グラフの読み書きを懇切丁寧に教えるほどの時間はない.ので各自フォローアップするか,恥ずかしがらずに誰かに教わること.
    • グラフをうまく使えば,大量の情報を直感的に処理することができるようになる.

次回:
  • 一次関数をおさらい
  • グラフを使って,国際金融論の世界を眺める

参考文献補足:
  • 同志社大学の田中靖人先生がご自身のウェブで国際経済学のテキストを公開されている.お金をかけなくても勉強するためのリソースはたくさん手に入れることができる.
  • 英語でよければ,Stephanie Schmitt-Grohe and Martin Uribe (2013) ``International Macroeconomics"が無料で公開されている中でお勧め.
  • 為替取引に興味があれば,まずはUBS銀行東京支店外国為替部 (2004) 『プロ投資家のための外国為替取引』日経BP社,あたりをさらりと読むとよいだろう(バカっぽい記述も多いがご愛敬).ただしギャンブル気分で為替に手を出すのはあまりお勧めしない.

Friday, September 20, 2013

13年9月家計調査

先月の記事: 13年8月家計調査

忙しいので簡単に.今日発表の7月分あたりからの諸指標には結構注目しているが,沖縄の景気循環は内地からけっこうなラグもあり解釈が難しい.

消費支出は前年同期比ではそこそこ悪化(名目は-6.5%).
名目消費支出(対数). 青線: HP-filterのトレンド, 黒太線: DECOMPでの季節調整値, 灰色: 原系列. 出典: 沖縄県「家計調査」.
名目消費支出のy-o-y成長率 (単位: %). 青線: HP-filterのトレンド, 黒太線: DECOMPでの季節調整値, 灰色: 原系列. 出典: 沖縄県「家計調査」.

可処分所得は下げ止まりつつある.前年同期比では-10.0%とまだまだdisappointingであるが,前年がたまたまよかった風でもある.
毎勤の実質賃金指数では,6月頃は下り坂にさしかかっているところだが.7月分はもう少し伸びるかもしれない.
二人以上の世帯のうち勤労者世帯の名目可処分所得. 青線: HP-filterのトレンド, 黒太線: DECOMPでの季節調整値, 灰色: 原系列. 出典: 沖縄県「家計調査」.
名目可処分所得のy-o-y成長率 (単位: %). 青線: HP-filterのトレンド, 黒太線: DECOMPでの季節調整値, 灰色: 原系列. 出典: 沖縄県「家計調査」.

Thursday, September 19, 2013

ビールと沖縄

沖縄県民はとにかく酒が強い,というイメージは根強い.今回のエントリでは,こうしたイメージだけで終わらせず,数字をちょっと確認してみた結果を記す.
  • 酒飲み自体は少ない?
    • 厚生労働省の国民栄養・健康調査によれば,20歳以上男性の飲酒習慣者の割合は30.8%と,47都道府県中下から4番目だ.
      • n=169人で,95%信頼区間は23.2--38.8%とのこと.2006--2010年.
    • 青森(51.6%), 鳥取(48.5%), 島根(48.3%)などに比べると大きな差があるように見える.
      • 沖縄はアル中が少ない,お酒で病院送りになった人が少ない,などを直ちに意味するわけではないので注意.
    • この統計は沖縄のBMIが全国トップであることを指摘したことで有名.
      • 私はどちらも額面通りには受け取っていない.
  • 発泡酒飲み過ぎ
    • 酒税を集めている国税庁は,お酒の消費量や生産量について詳細なデータを公表している.
    • 下のグラフは,成人一人あたりのビール(青)・発泡酒(茶色)消費量を表している.
      • 沖縄県民はあまりビールは飲んでいない.
      • しかし発泡酒の消費量はダントツである.全国平均8.2lに対し,沖縄は20.7l. これは2位の高知県18.0l, 3位の岩手県12.2lよりもさらに多い数字である.
      • 所得効果は明らか.だが,単に所得だけでは地域間格差は説明できないはずだ.
      • 友達が発泡酒を飲んでいる中で自分だけビール,というわけにもいかないわけで,ネットワーク外部性というかある種のsocial normが働く余地がある.沖縄と高知は高位均衡にいるのかもしれない.
成人一人あたりビール・発泡酒消費量 (単位: リットル), 2011年. 出典: 国税庁「国税庁統計年報」, 総務省「人口推計」.

飲む人は少ないが飲んでいる量は多い,となると…分布の形状が気になるところ.

国税庁の統計は他のお酒についても充実している.アルコール濃度で加重平均して酒飲みインデックスを作成しても面白いかもしれない.


家計調査ではビールへの支出額がトラックできる.夏期集中講義で使ったグラフを掲示しておく.発泡酒・第三のビールが登場した効果だろうか.
出典: 沖縄県「家計調査」
泡盛についても,たしか2004年頃をピークに県内消費量は減り続けていたはずだ(出所は失念).アルコール業界は厳しい戦いになっているようだ.

前期授業改善アンケート

講義終了時に実施した授業改善アンケートの結果が返ってきました.ご協力ありがとうございます.アンケートへのリプライは本学のウェブサイトにそのうち掲載されるそうです.

ポジティブな評価を多くいただき光栄ですが,最後まで生き残った学生しかアンケートを記入できないというサンプリング・バイアスが大きいわけですから,慢心しないように気をつけます.忌憚なき批判を書かれた方にも本当に感謝しています.(誰がどういうコメントをしたかは私にはわからないようになっています,念のため)

講義ではレジュメを各自用意するよう指示していますが, アンケートで賛否両論あったので持論を述べます.教育学の研究成果を漁ったわけではないのであくまで素人のたわ言ですが.
  • メリット
    • 資源の節約
      • 受講者数を正確に把握できないので,私が用意するとレジュメの過不足が発生してしまう.
      • 電子タブレットを積極的に使いたい人もいる.
      • 忘れたのでもう一部,という人を排除できる.
      • 余ったレジュメを見るのは悲しいよ!
        • レジュメ印刷数問題の最適解と分権的メカニズムによって達成される配分のパフォーマンスは不完全情報が入ったミクロモデルで精査できるかも? (私の印刷限界費用がnegligibleなら私がやっちゃえばいいわけですが)
    • サンク・コスト・バイアス
      • せっかく印刷したんだから…という心理的な力に働きかける.
    • 手続きコストの節約
      • 私が用意する場合,大量印刷手続きにそれなりの時間が必要.
      • 私のレジュメ生産能力が低く,「レジュメができてない→印刷間に合わない→講義できない」というケースを回避したかった.
    • ITリテラシーの向上
      • PDFを扱う,印刷する,検索する,といった当たり前のITリテラシーを身につける機会を提供する.デジタルネイティブとはいえ,SNS・ゲーム・エロぐらいにしかITを使っていない層も多い予感がしているので.
    • 積極的に講義参加している気分に
      • 与えられたものをやる,ではなく,自分から勉強する素材を用意する,という形式を取る.ちょっとした姿勢の違いが,学習意欲にいい影響を及ぼすかもしれない.
    • 印刷の質を自分で選べる
      • 私のほうで用意すると安くて薄い印刷になりがち.
    • プレコミットメント
      • 事後的な融通が利かなさそうな先生だ,という印象を植え付ける機会を作る.
    • 私自身の宣伝
      • 私のウェブサイトを経由することで,世界を相手に研究している様を知ってくれれば…
  • デメリット
    • 学生の手間
      • 前日までに用意するとなると結構負担.
      • 大学のプリンタには,印刷数に制限がかかっている.
        • 損失回避バイアスが十分に強いと,コストをかけて勉強することを断念する可能性.
        • せっかく印刷したのに講義で使わなかった,という場合に不快感を醸成してしまう.
      • やる気がなさすぎる学生のスクリーニングになる,というメリットも.
こう挙げていくと,学生にはデメリットしか見えませんが私にはメリットしか見えないようです.よりベターなシステムがあれば示唆していただければ.


他言いたいことはいろいろありますが,なによりアンケートで誰もこのブログに言及していなかったのが寂しいです.



更新頻度が下がってると叱咤いただきましたので更新しました.なんとか生きてます.

ついでに近況報告ですが,1本アクセプトされました.やったぜ.論文に関わったすべての方に改めて感謝.

Sunday, September 1, 2013

13年7月一般職業紹介状況

前回のポスト: 13年5月一般職業紹介状況

 某研究費が取れず傷心中であるが,先月更新しなかった分も合わせて,有効求人倍率を確認.相変わらず調子が良いらしく,復帰後でも2,3番目に高い数値となっているようだ.
沖縄のBeveridge curve, 2009/01--2013/07. 出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況」, 沖縄県「労働力調査」
  • 6月はvacancy rate vが高いまま失業率uが下がっていた.
  • しかし7月はu,vともに上昇.従来のUV曲線上に戻ってきた感じ.

 気になるのはUV曲線が動いているかどうかである.前回同様,2012年以前(黒丸)と以後(青白丸)で分けてプロットしてみた.今回は単なるOLSじゃなくて,平滑化スプラインを適当に当てはめている.
沖縄のBeveridge curves, 2009--2011がオレンジ, 2012/01--2013/05が緑.
 回転移動にも見える.期間の区切り方を変えれば平行に下方シフト,という感じになるかもしれない(面倒くさいので試していない.2012年1月で区切っているのに特別な理由はない).いずれにせよ,塊が右側に動いている状況をどういうデータ・モデルと合わせてどう解釈していいのかよくわからない.(単にcyclicalなブーム?)


 UV曲線シリーズはこれ以上blogで深入りするのはやめる予定.ひとえに私の勉強不足のためである.