Saturday, April 8, 2017

後期の読書2016

いろいろ忙しく各所で不義理にしています申し訳ありません.生存報告も兼ねて学期が変わる前にblogをいったん更新.

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教科書をご恵投いただきました,ありがとうございます.
  • 小川光,家森信善 (2016) 『ミクロ経済学の基礎 【ベーシック+】』中央経済社. [Amazon]
入門ミクロのテキストはいろいろと目を通していますが,これは私好みどんぴしゃりの内容です.例も練られており,使いやすさ抜群です.他の「ベーシック+」シリーズと違ってカラー印刷なので読みやすさも抜群です.学生におすすめしておきます.

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更新のついでに,ここ約半年の読書メモを記しておく.普段は論文の読み書きが主なので所詮はゆるふわ読書にとどまっている.

もともと営利目的のblogではないが,今回試験的にAmazonのアフィリエイト付きにしてみた.定期的に更新する金銭的インセンティブになるかもしれない.アフィリエイトが嫌いな方もいるだろうから,画像抜きのリンクのみにしてある.私にコーヒー代ぐらい恵んでもいいよという奇特な方は[Amazon]と書かれたリンクをクリックしてお買い物をお願いします.

  • Thomas Gray (1751) An Elegy Wrote in a Country Church Yard and The Eton College Manuscript. [Amazon]
墓場派なる18世紀イギリスの詩人の代表作エレジー.名もないちっぽけな人生の中にある尊厳を端正に描きあげる.Fair science frown'd not on his humble birthとのことだ.
(まったく関係ないけど,大阪堀江にあった暗黒音楽専門店graveが昨年閉店してしまったようですね.お疲れさまでした.)

  • 金子智朗(2009)『「管理会計の基本」がすべてわかる本』秀和システム. [Amazon]
管理会計をまったく知らないので流し読みしてみた.本自体は初学者にとってとてもわかりやすいと思うけど,経済学畑の者にとってはもっと数学でゴリゴリ一般化した議論をしてくれたほうが見通しが良い.

  • Robert C. Feenstra (2015) Advanced International Trade: Theory and Evidence 2nd ed. [Amazon]
大学院向け定番教科書の改訂版.2003年の初版に比べ,比較的最近の主要なモデル(の簡易バージョン)の解説が増強されており,初版をそこそこ読んだ人でも買い直すのはありだと思う.

  • Alain de Janvry and Elisabeth Sadoulet (2015) Development Economics: Theory and practice. [Amazon]
開発経済学のわりと新しい学部向けテキスト.包括的で読みやすくいい感じ.前年度担当した沖縄経済論はこのテキストに随所で影響を受けている.

  • 曽道智, 高塚創 (2016)『空間経済学』東洋経済新報社. [Amazon]
理論NEGのコンパニオンとして,本書は10年以上マストアイテムの地位を占め続けると思う.
  • 清田耕造 (2016) 『日本の比較優位: 国際貿易の変遷と源泉』慶應義塾大学出版会. [Amazon]
伝統的な貿易理論の実証.プロでなくても読めるように構成されている.見習って私も大きなテーマに挑戦したい.

  • 原田隆之 (2015) 『入門 犯罪心理学』筑摩書房. [Amazon]
犯罪心理学の胸躍るサーベイになっている.心理学は経済学とエビデンス重視の姿勢を共有しており,話が早い.重回帰あたりまで理解していれば一般学生でも楽しく読めるはず.典拠となる論文で使用しているであろうデータがしばしリッチすぎる気がする.

  • 永田靖 (2003) 『サンプルサイズの決め方』朝倉書店. [Amazon]
書名通り検出力に絞った教科書.説明がとても丁寧.手元に置いておきたい.

  • 津田博史, 吉野貴晶 (2016)『株式の計量分析入門 ―バリュエーションとファクターモデル』朝倉書店. [Amazon]
かなり微妙.実務家との距離を感じる.

  • 半澤誠司, 武者忠彦, 近藤章夫, 濱田博之(2015) 『地域分析ハンドブック: Excel による図表づくりの道具箱』ナカニシヤ出版. [Amazon]
地方公務員が使いそうなグラフが作れるようになる.講義で使えるような使えないような微妙な感じ.

  • 旦部幸博 (2016) 『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』講談社. [Amazon]
コーヒーを取り巻く科学が幅広くかつ簡潔にまとめられている.家庭焙煎の下りなど,筆者の知的探求が微笑ましい.

  • ロバート・L. ウォルク (2012) 『料理の科学(1): 素朴な疑問に答えます』楽工社. [Amaozn]
The Washington Post誌に連載されて人気を博した食品科学のコラム集.目からウロコが出まくる.つい誰かに教えたくなるサイエンス小ネタが目白押しだ.専門家が社会にフィードバックする際,こういうコミュニケーションのやり方は参考になると思う.

  • 森川正之 (2016) 『サービス立国論』日本経済新聞出版社. [Amazon]
一般向けに書かれているのですらすら読める.何より森川先生ご自身の生産性の高さを見習わないと…

新年度は学生を使ってもっと教養的な読書がしたいところ.

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私が赴任してきて最初の年に担当した世代の学生はまっすぐいけば先月卒業を迎えました.出張のため卒業式には出られませんでしたが,ご卒業おめでとうございます.今後の活躍を期待します.