Friday, August 7, 2015

地域開発論, 2015年

非常勤がだいたい一段落した.
  • 今年度縁あって自分の専門領域に近い講義内容を担当することとなった.一連のliteratureを体系的に眺め直した経験は,自分の研究にもよい影響をもたらしたはずだ.ただ,学習しにくい雑然とした講義だったかもしれない.自分が学生の立場なら履修しないかもしれないと思うと,出席も取っていないのに毎朝参加してくれた学生たちに頭が上がらない.
  • 琉大生のペーパーテスト能力を過信していた.素点だとほぼ全員良以下,ってのはさすがに鬼すぎた模様.平均90点ぐらいのつもりで作っていたのだけど誰も信じてくれなさそうだ.常勤の講義と違ってあまり学生のリアクションを確認せずにおいたが,コミュニケーションをサボると不幸が起こる.普段の受講態度がとても真面目で熱心に見えたこともあって油断した.
    • 非常勤は,学生の育成にコミットするインセンティブが常勤に比べて低い.intrinsicな動機(と高度な専門性)をもってしっかり授業をする非常勤の方はとても貴重だと思ったし,教員の人事・給与をめぐるインセンティブ設計って本質的に大事だとも思った.
      • 私はほとんどgift giving(≒余計なお世話)のつもりでやっていました.
  • 自動車通勤というものをはじめて経験した.new urban economicsモデルは正しい.
  • 一般に地域経済系の講義は,理論と実証をまともに修めてすらいないアマチュアが自分勝手な「学問」を教える場になりがちだ.そうしたいかがわしい講義と差別化することにこだわりすぎた気がする.もう少し淡々と講義できればよりよいと思った.

このblogをチェックしている人がどれだけいるか不明だが,試験を少し解説しておく.

  • 基盤産業モデル

 このモデルには,「雇用増→人口増」と「人口増→雇用増」の2つの効果が入っている.これらは互いに増幅し合う.話は単純だが,この連鎖的メカニズムをちゃんと答えられた人は数人しかいなかった.

人口は
$N = \frac{a+b(c+L_A)}{1-bd}$
と解ける.$a$が増えたらどうなるの?という質問は,$\mathrm{d} N / \mathrm{d} a = 1/(1-bd) > 0$, を考えれば良い.微分をしなくても,分子を見れば$a$が増えれば$N$が増えるであろうことはすぐわかるはず.$L_B$についても同様.
$a$が増えた以上に人口が増える($\mathrm{d} N / \mathrm{d} a >1$)のは,人口増→雇用増→人口増→雇用増→…,と連鎖するからだ.
$L_B$は,求めた$N$を$L_B=c+dN$に代入すればよい.
(経済数学って必修だよね? 素朴な連立方程式すら解こうとしない人多すぎね?)

このモデルを適当に拡張すると,直感に反するような結果も出てくる.テストで出した拡張モデルでは,失業率が高まると人口が増えて雇用量は変化しない,という不思議な結果が得られる.当てずっぽうな解答では正解できないはず.
ただし,このモデル自体が変ではあるので,結果の現実的妥当性までは問わなかった.

高齢者の地方移住支援,というストーリーは実際に「日本版CCRC」の一環として動き出しつつあるらしい.(link: まち・ひと・しごと創生本部)


  • 都市システムモデル

基本的には,内点解の条件である, $U(L_U) = U_R$, を満たす点に着目しながら考えればよい.移住しても効用が高まらないのだから,誰も移住するインセンティブはなく,均衡と呼べる.
カタストロフィだけ異常に正答率が高かったのがなんだかツボ.

設問が少しぼんやりしていて申し訳なくも思うが,正確性を期すとかえって難解になってしまうもので,勘弁してほしい.


  • 全体的な雑感

「一を聞いて十を知る」という俚諺がある.10通り考えるかどうかはともかく,Aを一つ教わったら,それを一般化すればA'になり具体例としてA''になることも,BやCが演繹・類推できることも,DやEではないことも,Aの前提条件F, GのうちどれがAを本質的に支えているのかも,頭の中でひと通り検討するのが普通ではないのだろうか?
教わったことはトレースできるけどその応用も批判もできない,というのは寂しすぎるぜ.


はあーーー,台風ってなんで洗車した直後に来るんでしょう.