Friday, May 31, 2013

国際経済学I, 第7回

講義内容:
  • 小国開放で貿易利益の解説
    • 基本的には×印のグラフを眺めているだけ.難しすぎて無理,と諦めずにじっくり取り組もう.
  • ロビー活動
    • 理想や正義ばかりが政治を動かしているわけではない.
中間試験:
出席カードのコメントから:
  • 「TPPで日本の農業に勝ち目はない」
    • 一般論として,経済問題を勝ち負けの二項対立で捉えないほうがよい.勝ったからといって幸せになれるとは限らない.
    • 農家にも様々ある.たとえば近年沖縄では紅茶を育て,世界に売り出す試みがなされている.(株)沖縄ティーファクトリーの琉球紅茶は世界で戦えるクオリティを誇る,と感じる(らしい).創意工夫を凝らしリスクを取ったとしても勝機をまったく見いだすことができない,というほど「勝ち目がない」状況であるとは思わない.
      • 私の実感で言うと,国産の農産品は価格は高いがその分クオリティも他国の追従を許さないほど高い.low-end consumers向けの製品と棲み分けをすることでかえって利潤を高めることもできるかもしれない(e.g., Ishibashi and Matsushima 2009).
    • モデルでは明示的に扱われていないが,輸送費用も現実には無視できない.当たり前のことだが,日本の農家は日本という一大消費地に距離的に世界一近い,というアドバンテージを持っている.鮮度が求められるプロダクトに生産をシフトするなど,戦い方はいろいろあるはずだ.
      • 輸送費用の重要性について日本の農業のデータで丹念に調べた研究にKano et al. (forthcoming) がある.
      • 私の実感ベースでは,沖縄は県産の野菜が強い.県外から運んでくるコストが,県内で生産するコストと比べて十分高いのではないか.
    • TPPの議論は政治的な色彩が強すぎる.賛成にせよ反対にせよ,一方的な考え方ばかり追って踊らされるだけにならないようにしたい.偉い人が言っているからと鵜呑みにしてはいけない.
    • 「勝てないから反対である」という段階で考えることをやめるのではなく,「勝ち負けとはもっと具体的に言うとどういうことか」,「なぜ勝つ必要があるのか」,「他の産業が勝つチャンスを潰していないか」,「貿易相手国の生活は無視していいのか」,「どうすれば勝てるようになるのか」などと考えをいっそう深めていってほしい.
  • 「オリンピックの競技選びの場でもロビー活動が活発らしい.きれいな言葉ではないね.」
    • スポーツが金にまみれている,肝心の選手は儲からない,というのは悲しいが現実である.スポーツをドラマティックに仕立てビジネスをする側の世界では,フェアプレイを遵守させるようなルールが不十分なのである.
    • スポーツ選手の中でも,ごく一握りのスーパースターだけはとてつもなく儲かる可能性がある.Rosen (1981)以来,スーパースターの経済学という研究も数多くなされている.
  • 「ダイコクドラッグにいいのどスプレーがあるよ」
    • 助かります.

References:
  • Ikuo Ishibashi and Noriaki Matsushima (2009) The Existence of Low-End Firms May Help High-End Firms, Marketing Science 28, 136-147.
  • Kazuko Kano, Takashi Kano, and Kazutaka Takechi (forthcoming) Exaggerated death of distance: Revisiting distance effects on regional price dispersions, Journal of International Economics, http://dx.doi.org/10.1016/j.jinteco.2013.02.002
  • Sherwin Rosen (1981) The Economics of Superstars, American Economic Review 71, 845-858.

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