Friday, June 21, 2013

国際経済学I, 第10回

講義内容:
  • 比較優位続き.
    • 比較優位が貿易パターンを決める上で重要である.
      • が実は比較優位だけでは説明できない貿易パターンもある.そうした貿易パターンを説明するためにはもう少し込み入った分析の枠組みが必要になる.
    • 絶対優位が何もない人にも比較優位のある仕事がどこかにある.誰もが分業を通じて社会に貢献できるのだ.
    • とはいえ,比較優位通りに特化することが常に望ましいとは限らない.たとえば長期的なタイムスパンで見たときに,衰退産業に特化した地域はいつまでも経済成長するきっかけを掴めず,産業とともに荒廃していくかもしれない.特化と分業が便益を生むのは確かであるが,リスクやコストを一切伴わないということまでは意味しない.
      • コーヒーやサトウキビや天然ゴムに特化した地域では,生産性の「のびしろ」が少なく,かつ天候など外的環境の変動に脆弱である(リスクヘッジするにも限界がある).「モノカルチャー経済」という言葉でもってこうした経済が問題視された.
    • リカードモデルでは比較優位は労働生産性に応じて決まる.生産性は時間とともに変化していくものであるので,比較優位の構造も流動的なものである.
 来週:
  • レジュメ4に入る.俗に言う特殊要素モデルを用いて分配の問題を扱う.
コメントより:
  • 「短い時間で仕事をこなすことができるということはその仕事に比較優位を持つ」
    • 単に仕事の効率がよいだけのことを,絶対優位と言います.
    • 他人よりも失うものが少ない」(=機会費用が相対的に小さい)ときに比較優位を持つと言います.例題では,妻は夫よりも短い時間で料理できる(絶対優位)が,料理をすることで失う時間の価値が夫よりも高いので,料理には比較優位を持たない(比較劣位を持つ)状況を考えました.
    • 比較優位の概念は少しトリッキーですが絶対優位との違いを正確に理解しましょう.
  • 「絶対優位がなくても,比較優位はある可能性が高い」
    • 比較優位がない状況は,たとえば夫と妻がまったく同じ生産性を持っているときに生じます.同じ生産性=同質的な労働者,ということなので,違いが出せません.
      • まったく同質的な人間はいないにせよ,双子のごとく似通った人間同士で取引をしても比較優位に基づく分業のメリットはさほど生じません.誰がやってもいっしょだからです.
    • また,仕事が1つしかないという状況では,他の選択肢がなく機会費用もへったくれもないので比較優位について考えることができなくなります.
  • 「テストの解説はしないの?」
    • 講義中にはいたしません.気になる問題があれば質問してください.一部の問題については以前本ブログで解説をしています.

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