Friday, July 19, 2013

国際経済学I, 第14回

講義内容:
  • Rybczynski定理
    • 要素価格均等化が成立している状態では,移民受け入れ(労働供給増)は賃金低下に結びつかない.
    • 産業間での資本移動が謎解明のポイント.
      • 自由参入条件や産業間の生産要素移動は,特殊要素モデルでも重要な役割を果たしていた.
  • 頭脳流出
    • 日本だと医者の数%しか移民にならないが,インドだと医者の10%以上が出て行ってしまっている.(Bhargava et al. 2011)
    • しかし流出のメリット・デメリットはいまだによくわかっていない部分も多い.
      • 沖縄では能力が高い人材は流出超過な気がする.
      • 私のようにUターンする移民は,能力がいまいちだからこそ戻ってきたタイプである可能性が(cf. Borjas and Bratsberg 1996)…自己研鑽を怠らずに地元に貢献したいところ.
  • FDI, タスク単位のoffshoring
    • 輸出・輸入とは違ったグローバル化の形.
      • 本日の某講演会では,翻訳作業を外注して裁定取引をする話も出ましたね.
    • マニュアル化できるような単純作業に従事していた労働者には厳しい時代になりつつある.途上国労働者のほうがそうした作業に比較優位を持っているかもしれない.
    • 80年代以降の国際経済学はこうした動きに対応して膨大な知見を積み重ねてきている.
次週:
  • 期末テストを実施します.試験範囲はレジュメ3以降とします(中間でカバーしなかったレジュメ2後半は出題しません).なるべくボールペンで解答してください.
コメントより:
  • 「スキルを身につけていないと,将来賃金が少なくなってしまうのかな」
    • 高賃金がほしければ自分を磨くのが不可欠ですね.運にも大きく左右されますが.
  • 「テストでがんばりたい」
    • ぜひともよい結果を残してください.
  • 「送金の金額がすごい」
    • 先進国に住んでいるとなかなか気づかない動きですね.世銀によれば,タジキスタンはGDPの47%もの送金を受け取っているようです(2011年).
  • 「移民が来たからと言ってその国で働く人たちの賃金は下がることはあまりない」
    • 「移民は脅威」とは限りませんね.むしろ新しい仕事を生み出してくれるかもしれません.
    • 移民の議論は入ってくるのも不安だし,かといって出て行く(特に高技能労働者)のも不安,という感覚がつきまといます.こうした不安な感覚はそれなりに自然なものですが,自然なだからといって正しいわけではありません.
  • 「日本の失業者はびっくりするぐらい多いけど,それ以上に外国でたくさん雇っていることにびっくり.将来はもっと増えそう.」
    • この流れはしばらく続きそうですね.何らかの形で流れに乗るべく知恵を絞るといいですね.


参考文献:
  • Bhargava, Alok, Frederic Docquier, and Yasser Moullan (2011) Modeling the Effects of Physician Emigration on Human Development, Economics and Human Biology 9, 172-83.
  • Borjas, George J., and Bernt Bratsberg (1996) Who Leaves? The Outmigration of the Foreign-Born, Review of Economics and Statistics 78, 165-176.

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