Tuesday, July 16, 2013

24年就業構造基本調査, 沖縄

cf. 過去のエントリ: 沖縄の非正規雇用

就業構造基本調査が5年ぶりにアップデートされた.さっそく簡単に眺めてみた.(出典は以下すべて総務省「就業構造基本調査」より)

まずは雇用者数(役員除く)に占める非正規雇用者の割合を見る(単位: %):

男女計, 年齢別. 青=2012年沖縄, オレンジ=2007年沖縄, 灰=2012年日本.

男, 年齢別. 青=2012年沖縄, オレンジ=2007年沖縄, 灰=2012年日本.


女, 年齢別. 青=2012年沖縄, オレンジ=2007年沖縄, 灰=2012年日本.

  • 男女とも5年前よりも非正規雇用者のシェアは軒並み上昇している.
    • 25-29歳女性は52.5%へと前回調査時よりも低下している.非正規雇用者数は絶対数でも減っている(約2%)し,それ以上に分母の雇用者数が増加(約8%増)している.
    • 全国もおおむね同様の動きをしている.
  • 20-24歳のコホートが特に厳しい様子である.正規雇用にありつけるのが3~4割って….
  • 前回調査(2007年10月時点)だと,リーマン・ショック前で全国的に景気がよかった2006年頃の就職市場を大きく反映していると思う.ので,5年前より悪化して見えるのは驚くべきことではないのかも.
労働力調査との比較:
  • 労働力調査の完全失業率で見る分には,2007年よりも2012年のほうが改善している.
    • 07年平均は7.4%(男8.1%, 女6.3%) → 12年平均は6.8% (男7.7%, 女5.8%).
  • 非正規雇用は完全失業者には含まれないことを思いだそう.完全失業率の改善は必ずしも雇用環境の改善を意味しないのである.
    • 女性は非正規雇用が増えまくりだと思っていた(労働力調査では,就業時間が35時間未満の女性がここ数年急速に伸びている)が,若年に関しては思ったよりはマイルドな変化であった.


次に,所得分布を正規雇用と非正規雇用に分けてプロット.
雇用者の所得分布. 青=非正規, オレンジ=正規. (単位: 万円, %).
  • 正規-非正規間の所得格差は歴然.
    • 非正規雇用の85.1%は年収200万円以下,69.1%は年収150万円以下.
    • 正規雇用の85.9%は年収150万円以上,72.5%は年収200万円以上
  • よく知られているように,どちらも正規分布ではない(Kolmogorov-Smirnov検定にもかけてみた).
    • 正規雇用の分布に注目すると,250-299万円に谷があり,twin peakな密度関数になっていることが見て取れる(所得税率が変わる閾値は330万円でありちょっとズレている).ここに谷があるのは全国も同様.(労働経済学者さんなぜだか教えて!)
  • 注: 正規雇用になるかどうかは各人の持つスキルにも依存している.上のグラフを見て雇用契約形態そのものが所得格差の源泉であると解釈するのは早計である.
    • たとえば,「非正規⇒低所得」なので「政府が労働市場に介入して非正規雇用を正規雇用にすればよい」,などとは言えない.「低スキル⇒低所得」と「低スキル⇒非正規」というチャンネルが重要な場合,非正規雇用を正規雇用に転換しても労働者が持つスキルが上がるとは限らず,所得も上がらないしそもそも仕事に就けないような事態に陥るかもしれない.
未婚の男女に絞って見ると,次の通り.
沖縄の未婚男女の所得分布. 青=男性, オレンジ=女性. (単位: 万円, %).
  • 未婚男性の79.7%は年収300万円以下で,87.3%は年収400万円以下
  • 婚活の際に「年収400万以上じゃなきゃイヤ」と主張することさえ結構なシンデレラであるようだ.専業主婦として暮らしていけるのは本当に一握りの様子.
    • 婚活はランダムサーチなわけがない.ので普通の合コン・街コンでは年収400万円以上の異性と出会う確率は10%もないと思うし,首尾よく捕まえられる確率はもっと低いはず.
    • もちろん現在年収400万なくても,将来400万円以上になりうる人はもう少し多い(現在400万以上稼いでいる男性は15歳以上男性の25.5%).
    • 私のポジションはというと…キャピタルゲイン次第でしょうか.
  • 高い付加価値を生み出すことができる若者が活躍する機会がほとんどないのかと思うとげんなりするよ.
    • ただの大卒ではない「エクセレントな大卒」が少ないのが現状であり問題だと思う(skilled emigrationによるbrain gainの効果はいかほどか?).もっと分布の右裾が分厚くなってほしい.



次に,高卒と大卒がどういう産業に就いているのかを見た.
産業別有業者 / 有業者 (単位: %).
  •  上から,正規雇用者のシェアが高い順に産業を並べてある.
    • たとえば非正規雇用/正規雇用の値は,一番上の電気・ガス・熱供給・水道業は14.3%, 一番下の宿泊・飲食サービス業では71.0%, となる.
  • おおむね,大卒は正規雇用が多い産業で働いており,高卒は非正規雇用が多い産業で働いている.つまり,大卒のほうがより安定した職を提供できる産業に就いているようである.
    • 高卒有業者の24.6%は運輸・郵便・建設・製造業に就いている.これらの産業は正規雇用の割合も比較的高い.
    • 高卒は宿泊・飲食といった非正規メインで離職率も高い産業に進むケースが多いようだ.
    • 大学生の進路として人気な「公務員」や「先生」の道を実際に歩む人は意外と多いようである.
    • 大卒になると,金融・保険・教育など,知性が不可欠な産業に進むチャンスが拓けるようだ.



最後に,いわゆるM字カーブが観察されるはずの有業率(=有業者/15歳以上人口)を見てみた.
沖縄の有業率, 2007年と2012年, 男女.
  • 女性は若年層(25-29歳と35-39歳)で有業率が上昇している.
    • 30-34歳で出産のためいったん下がる,というM字っぽさが出てきている.
    • 2007年は有業率の底が35-39歳にあるわそもそもM字に見えないわで特殊であった.
    • ただし40-44歳(バブル崩壊時に青春を迎えた世代?)にもう一つ谷ができており,依然としてM字感に乏しい


Excel 2010が凍りまくるので今日はとりあえずここまで.

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