Tuesday, July 22, 2014

紀『土佐日記』他

 旅の味わいはその人の教養を反映すると思う.(これは西田幾多郎かだれかが書いていたことでもあるが出典を失念してしまった.) 殊に歴史を知り古人らの結節点を知っていると感慨深い旅になる.夏休みに旅行する予定がある学生は,司馬遼太郎でもなんでもいいから現地に関する本を手にとってはいかがだろうか.(もちろん旅の楽しみ方は様々あってよいのだけれど.)

 この連休は四国を周遊した.旅に備えていくつか四国関連の知識を深めたので,簡単に読書メモを残す.以下すべて青空文庫から.
  • 紀貫之『土佐日記』
 内容的には四国とほとんど関係無かったのでこのタイミングで読まなくても良かった.注釈を抜きに読むと,細々としたウィットが汲み取りにくいのでなおさらだ.
 載っている和歌の多くはなんだか趣味が悪いと感じた.「いとをかしかし.」に女子学生と共通するセンスを感じた.

  • 種田山頭火『四国遍路日記』
 フリースタイル俳句をちりばめたお遍路日記.平安セレブとはまるで見ている世界が違う.犬に噛まれた,とか,いやでいやでたまらないけど行乞した,とかパンクすぎる.
 日を追うごとに変わっていく文体に,遍路の厳しさを思う.

  • 正岡子規『歌よみに与ふる書』
 愛媛最大のカリスマ文人による芸術論.「貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候」と紀貫之をぶった切り,無批判に古い者をありがたがるな,という.単にクリエイターのプライドを若気の至りで露骨に記したというわけではない.開国維新後,異国文化からの文学的挑戦に対応を迫られていた,という歴史的文脈を踏まえて読みたい.
 万葉集でも大伴家持や柿本人麻呂は技巧を弄するところがあるとは思うけれど.

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