Showing posts with label trade. Show all posts
Showing posts with label trade. Show all posts

Saturday, January 29, 2022

ザル経済? パート1

最近報道で「ザル経済」が一つのキーワードになっているらしく,私も意見を聞かれることがある (あった).自分のためにも,いくつかぱっと思いついた論点を整理しておきたい.


1. 基本的な考え方

  • ミクロレベルの「ザル」 (特定の公共事業で県外企業が受注) と,マクロレベルでの「ザル」 (貿易収支バランス) は区別して議論する必要がある.
    • 後者の場合,貯蓄・投資のバランスから決まるもの,という動学的なフレームワークが不可欠だと思う.というか,地域間財政移転に伴う双子の赤字的な状況ではないかと疑っている.
    • 後者については,沖縄の場合県外からの純要素所得は労働所得も資本所得もプラス,金融収支もプラス,ということと整合的になるか考える必要がある.集計レベルでは,県外に資本所得が流出どころか,資本を県外に輸出して資本所得を稼いでいるポジションだろう.
  • 域内の「循環」や「漏れバケツ (leaky bucket)」 みたいな話はどちらかと言えばマクロの議論であり,個別の事業が適正・透明に遂行されたかというミクロな評価とは分けて議論すべきであろう.
    • 域内循環を高めるために県内企業の受注割合を高める…といったことを乱暴にやると,入札談合の温床になると懸念される.安直な排外主義は腐敗を招く.
    • 経済学者の多くは,「循環」そのものではなく経済厚生を重視していると思う.ので,どういった歪み・失敗があるかを特定する必要がある.
    • 循環を高めることが経済厚生の改善につながるとは言えない.地元でインプットを調達できることが望ましいとしても,それは輸送費用の節約や集積の経済や競争が理由であり,お金が回るからではない(なくてもよい).
    • 受注する県外資本にも競争がある.「中抜き」で楽してレントを得ているとは限らない.(マークアップがあったとしても,沖縄だけで問題になるという理屈は自明ではない.) 県民の所得と雇用を生み出すために県外企業の力が必要で,県外企業が正当な対価を受け取っているだけならば,それを叩くのは難しい.
    • 特定の産業で自給率を高めて輸入を減らしても,そのせいで他の産業の輸出が減って,マクロレベルでの「漏れ」を減らすことにつながらない可能性は十分考えられる.
  • 県民の生活水準の向上が目的だったとして,公共事業が合目的な政策手段かは問われてしかるべきである.現場では予算を消化することばかりが優先されているかもしれない.
    • 所得や雇用や生産性にどれだけ結びついたのか費用対効果を検証すべきである.しかしこうした政策評価は産業連関分析やロジックモデルでは (今どきの研究者を納得させることは) 難しいと思う.
      • 産連によるよくある「経済効果」はルーカス批判を回避できないどころか,価格も資源制約も反実仮想も民間投資のクラウディングアウトもへったくれもないような・・.
    • ワイズ・スペンディングが難しいのはわかるが,県内経済のボトルネックや歪みを緩和するためにお金を使ってほしい…
  • 県内の受注割合は,県内に落ちるお金の割合,を意味しない.
    • 県外企業が県内で労働者や資材を調達するかもしれない.大手ゼネコンは受注の多くを占めるが,外注も多いものである.
      • イオンにも県産食品は売っているし県民が多数働いている,サンエーにも移入財・サービス・県外資本のテナントはたくさんある.イオンは避けてサンエーやりうぼうに行こう,という類いの話は直感的におかしい (無論,地元ブランドを選好すること自体はよい).
    • 結局誰が便益を受けているのか,は自明じゃない.県外大手ゼネコンじゃなくて,建設場所周辺の県内在住地主が一番儲かっているかもしれない.
  • 産業構造の視点.
    • 県内調達を増やし県内建設業がより儲かるようになったとして,建設業に資源がシフトすると他の産業が縮小することになるのでは.Dutch diseaseみたいな話はやはり産連では出てこない(はず).
  • ひも付き援助.
    • 対外援助が,ドナー国から調達するようになっているなど「ひも付き」になっているせいで,思うような効果を挙げていない,という話は開発経済学で古くからあると思われる.公共事業が県外からの調達につながっているとして,それにまつわる論点はすでに軒並み出尽くしている気がする.援助全額がホスト国で使われるわけでなく,ドナー側でのアドミンのコストや調達コストが高くついてしまい現地には予算規模ほどには届かない,みたいな実情は現代でもある(と思うが専門外なので文献は知らない).
  • 分配の問題など,そもそもの目的が自明ではない.
    • 誰がレントを取るべきか,は分配の問題.パイを増やす問題と比べて,何が最適解なのかは自明ではない.語り得ぬ物には沈黙…と言うか,経済学だけではたいしたことは言えない(政治的信念が必要)ので個人的にはあまり触れたくないトピックである.
    • domesticとnationalのどちらを見るべきか,というのも特に答えのない問題.だが,県外に「漏れ」た所得をただの無駄,とみなすのはいささか視野が狭いのではないだろうか.
      • 県外に「漏れ」た所得は,県外の所得を増やし県の輸出需要を増やす,みたいな効果もあるはず.
    • 生産要素の所有権がどのように決まっているか,は大事な問題だと思うけど,どのように決まっているべきか,はちょっと話が大きくなりすぎる気がする.
      • 資本の所有権がないなら,貯蓄して投資して資本所得を稼げばよいという話になりそう.現時点でも県民は建設業ETFやREITに自由に投資できるのだから.


2. Brecher and Bhagwati 1981 JPE

域外からの所得移転が直感に反してネガティブになる,という議論はtransfer paradoxやcurse of foreign aidといった文脈と密接だと思う.専門外だが勉強も兼ねて,眺めた論文の簡単なメモを残しておく.この文脈は日本人経済学者 (八田先生や矢野先生など) も重要な貢献をしているので,そのうち気が向いたら引き続きメモをしたい.


BrecherとBhagwatiは,生産要素の所有権に注目してHOモデルを書いている.設定は単純で,国内にある$\bar{K}$のうち国民が持つ分が少ない(外資が国内で生産しているイメージ),といった状況を考えている.基本的にはただそれだけ.

この場合,「国内」でみれば援助で厚生改善したとしても「国民」でみれば援助が厚生悪化になる可能性が出てくる.TOTが変化したとき(Stolper-Samuelsonで)損する生産要素があるから (得する方の要素があってもその所有権がなければ…),というのがおおまかな直感.

  • 正確には論文9式.貿易の価格弾力性や変化前の貿易パターンに依存する.貿易パターンは要素賦存量で決まる.なお,「国民」の貿易パターンは,仮に「国民」の持つ要素だけで生産していれば,というものである.国内で見ればXを輸出してるかもしれないけど国民だけならXを輸入しYを輸出するはずだったということすらありえるよ,という感じ.


しかし現代の沖縄の文脈には直接援用できないモデルかもしれない.建設業は非貿易セクターなので.


Reference

  • Brecher, Richard A., and Jagdish N. Bhagwati. "Foreign ownership and the theory of trade and welfare." Journal of Political Economy 89.3 (1981): 497-511.


続く…かもしれない?

Tuesday, July 5, 2016

国際経済学I, 第10回, 2016

五月病というか,ブログを書く時間とモチベーションを失っていたのでかなり久しぶりの更新.中間試験前にいったんまとめをするつもりでしたが間に合いませんでした,申し訳ありません.

中間試験の結果は以下の通りです.
  • 受験者93人,平均71.5, 中央値70, 標準偏差18.9. 
  • 得点分布は少しいびつです:

  • 受験したうち28人が60点未満でした.難易度は例年とさほど変わりませんが,3割程度の学生が不可になりそうな状況というのはワースト記録です.期末試験での奮闘を期待します.

期末は8月5日に予定しております.そろそろ他の科目と合わせて試験勉強を始めてはいかがでしょうか.

解答の返却・解説は行いません.気になる方は直接お尋ねください.

Tuesday, May 10, 2016

国際経済学I, 第2-3回, 2016

講義内容
  • グローバル化の進展
    • 陰謀論は疑ってかかるべし.
  • 琉球王国と貿易
    • 外交を交えた公的貿易だったことが今との大きな違い.
    • 貿易は単にモノ・カネを運ぶだけでなく,情報も運んでいく.
  • 数学の準備
    • 一次方程式$y=ax+b$は絵的には直線になるようなxとyの関係.
  • 入門ミクロ
    • 以後考えるモデルでは,登場人物はみなプライス・テイカーと仮定する.

コメントより
  • 「沖縄は各自治体で県産品を作っていると思うが,どうして輸出が少ないのか疑問に思った.もっと沖縄ブランドを発信すべき」
    • 県産品に対する需要が少ない,移輸出するコストが高い,という2点が主なハードルになっているのではないでしょうか.特産品はライバルが多く市場が小さいですから.
  • 「琉球王国時代の経済の中心はどこだったか」
    • 那覇港とその周辺には当時交易で栄えた形跡がありますよ.阿麻和利のいた勝連も,貿易で発展したと聞いたことがあります.
  • 「海外の貿易=発展のための材料だと考える.貿易がなければ琉球は発展できなかったし,日本も海外との貿易がなければ今より豊かではないと思った」「貿易の大切さがわかった」
    • (市場の歪みがあるので)必ず発展するとは限りませんが,発展の足がかりになるでしょうね. 
  • 「現在でも波及効果があるんじゃないか」
    • そうですね.それどころか先端的な産業ほど情報が伝わりやすくそのメリットも大きいかもしれません.
  • 「中国の影響はやっぱりでかい」
    • 首里城なんかはまるで和式じゃないですしね.
  • 「貿易はお金やものの取引の事という固定観念があった」
    • 取引の副産物も大事ですね.
  • 「命がけで商売をしていた昔の人たちってすごい!!!」
    • そうですね.でも現代であっても命がけの覚悟でやらないと!
  • 「沖縄の産業は観光がメインで移出入はとても多くなっていると思ったが,移出が移入を大きく下回っている上減っているというのが正直ショックだった」
    • データで補足されていない観光収入は少なくないような気もしますが,
  • 「沖縄の地の利を活かして貿易がもう一度盛んになればいいな」
    • 地の利(market potential)が他の地域よりも高いかどうかはあまり確信が持てないところではあります.
  • 「別の講義で倭寇が貿易に関わっていると聴いており,結びついた」
    • 中世の海は面白い話がいっぱいありますねぇ.
  • 「日本経済だけでなく世界のことにも興味があるので,少しでも自分で考えられるようにしたい」
    • 興味に従って本をたくさん読みましょう.
  • 「リーマンショック以後輸入額が輸出額を上回っているのは円高の影響か」
    • 為替レートも大切ですが原油の動向の方が大きい気がします.
  • 「意外と興味がわいた」「いろいろ知りたいと思えるような授業だった」「勉強になった」「わかりやすかった」「ありがとうございました」
    • こちらこそ.
  • 「クーラーをつけてほしい」
    • 指摘ありがとうございます.前にいると気づかないので助かります.
  • 「すみません寝ちゃいましたm(_ _)m次から気をつけます」
    • 今の若者が古典的な顔文字を使っていることに驚きました. 
    • 理解できなくて寝てしまう,でないことを祈ります.
  • 「グローバル化は教育でも進んでいて,経済や教育にも影響を及ぼしていると感じた」
    • この講義では狭い意味で用いますが,グローバル化という現象はとても複雑で多面的なものですね.我々はそのまっただ中に生きています.
  • 「自分は台湾人なので初めて聞いた.面白かったと思う」
    • せっかくですから沖縄の歴史や文化も学んでいってください.
  • 「ミクロを取ってないのでとてもがんばらないとなって思った」「数学を復習しようと思った」「わかりやすかったがこれからレベルが上がっていくと思うので遅れないようにがんばる」
    • この講義では難しいミクロ・数学の知識は必要ありませんが,講義の範囲を超えた内容も各自勉強しておくべきだと思います.
  • 「沖縄関連のクイズを出します!北谷町アラハ公園は巨大な船の遊具があるということで有名です.その船は何の船でしょうか?」 
    • それは間違いなくうわなにをするqあwせdrftgyふじこ…これぞせんさーしっぷ,なんつって.
  • 「正解はイギリスの船でしたー.ではなぜイギリス?」
    • 全然わかりませんが,よもやあなたの指導教員が関係してません?
  • 「一次方程式を覚えていてよかった」「経済学で使うので基礎を押さえておきたい」
    • 忘れないようにしましょう.
  • 「試験でグラフの問題を出すなら何問?」 
    • 中間試験ではたくさん出る気がします.
  • 「台風が来ると野菜の値段が上がるとよく聞くが,そのシステムが市場システムだということを改めて理解した」
    • 私は逆に,台風のとき思ったより価格は動かないなという印象を持っていますが,台風に限らず農産物や海洋資源の価格は気候に大きく左右されるようですね.
  • 「自分で価格を決められる人はなんていうのか」 
    • プライス・メイカーと呼ばれることもありますが,他の表現(「価格支配力を持つ企業」など)のほうをよく目にします. 
  • 「嫌われてると言っていましたが,私は先生の授業のやり方は好きですよ.わかりやすくて楽しい」 
    • ありがとうございます.みなさんの愛がほしくて仕事しているわけでもないので多少は仕方ないと思っています. 
  • 「意味はわかるが国経でも必要か?」
    • 必要ないことをやるほど講義計画に余裕はありませんよ.
  • 「英語だけでもイメージで何かを理解できた」 
    • 経済学用語には堅苦しい訳語が多く,最初は取っつきにくいと思います.英語の方がストレートでわかりやすいこともありますね.
  • 「二次方程式などグラフなど出てきて難しいと思った」 
    • 二次方程式は出てませんね. 
  • 「グラフが書けなかった」「難しく大変だった」「覚えていなくて勉強不足を実感した」 
    • かなりの学生が自力で書けなかったように見えました.勉強不足だと感じたらすぐ勉強しましょう.


Thursday, April 21, 2016

国際経済学I, 第1回, 2016

今年度もよろしくお願いします.

このblogでは講義のフォローなどを行っています.オープンにしても恥ずかしくない内容を教えるという意味もあります.(blogに書いていない講義もありますがそちらで恥ずかしい内容をやっているというわけではありません.)

講義内容
  • 講義の概要
    • グラフの読解や一次方程式の理解といった簡単な数学の知識は使う.
  • 大卒プレミアム
    • 大学生活の中で何かを掴もう.
    • 能力を高めるメリットは大きくなっている.という一方,分業や特化を通じて,誰にでも社会に建設的に貢献できることを国際経済学は教えてくれる(予定).
本ブログでは,ありがたくも出席カードにいただいたコメントに対して,すべてではありませんが返答をします.コメントによっては講義中に取り上げることもあります.ご了承ください.教員の話を鵜呑みにせず批判的に聞くことは大切だと思います.どんどん疑問を持ちましょう.

コメントより
  • 「自動運転ができるようになればいいと思っていたが失業するかもしれないなどと考えたことは今までできなかった.様々な角度から見られるようにしたい」 
    • 時事ネタを見聞きするときも,その背景や含意を豊かに想像できるようになりたいものですね.
  • 「いずれ人間が働かなくなる時代がくるのかもしれないと思った」
    • 今でもろくに働かないおっさんはたくさんいますが…
    • いわゆる「シンギュラリティ」はいつか来るかもしれませんね.
  • 「日本のホテルでロボットが導入されたのを見て変化を感じた.グローバル化は,夏休みにアジアの方々とバイトして低賃金長時間労働を見ていた.」
    • 雇い主が法律に引っかかっていないことを祈ります.
  • 「自分の価値を高めて供給の少ない貴重な人材になり,高い需要に応えられるようになれたらいい」「使える人材になりたい」「これからもたくさん勉強したい」「たくさん本を読んだり資格を取ったりしたい」「特別何かしたいというわけでもなく迷っているがとりあえず行動して卒業したい」「自分は能力があるわけじゃないのでせめて大学に通ったことで大きく成長できたらいいなと思った」「英語など自分の武器がほしい」「絶対卒業したい」
    • 需要と供給の考え方が身についている方もいるようでなによりです.
    • おのおののペースで焦らずこつこつとがんばってください.
  • 「肩書きに頼らず,それに見合った能力を身につけないといけないと思った」
    • 肩書き以上の能力を身につけましょう. 弊学卒という肩書きの価値をもっと高められるようにしてください.
  • 「大卒でもデメリットが大きければ今やめたほうがいいんだなとちょっと悩んだ」 「改めて考えさせられた」
    • 熟慮した上で,後々後悔しない選択をしてください.
  • 「社会に出るのが遅れているという不安があった.だが今日の話を聞いて自信が付いた.がんばった甲斐があったと思う」
    • 就活でこけないように気を抜かずがんばってください.
  • 「高卒の友人からおごってもらったりして正直就職すれば良かったかなと思うが,今日の話を聞いて大学をがんばって卒業して自分の能力も高めたいと思った」
    • 無事卒業・就職できたら恩返しをしましょう.
  • 「一回しかインターンシップに参加してないのでもっといろいろ挑戦したい」 
    • インターンに参加した経験から何が自分に足りないのかがわかっていれば,それを埋められるようにしてはいかがでしょうか.
  • 「ミクロは取ってないが来年取る」
    • 授業を取らなくても教科書を買えばいつでも勉強できますよ.
  • 「国際経済学に強くなりたい」
    • その意気や良し,です.教科書を読みましょう.
  • 「他国の経済活動に興味があって,それを学んで自分に取り込んでいきたいと考えている」
    • あまり海外ビジネスの事例を紹介することはありません.図書館で「ジェトロセンサー」「ハーバードビジネスレビュー」などを探して読んでみるといいかもしれません.
  • 「わかりやすくて興味ある」「丁寧」「楽しい」
    • 次回以降はあまり楽しい内容ではありません.
  • 「テストの形式は?」
    • 例年は記号の選択,作図,短めの論述,などを出しています.計算問題はほぼありません.
  • 「出席点は感想を書いて出せばいいの?」
    • そうです.感想や質問などを自由に書いていただければと.
    • 講義中に受講者のみなさんの意見や質問を聞く機会は少ないので,出席カードと本ブログを通じてコミュニケーションを図りたいと思います.
  • 「留学生なので文法に間違いがあるかもしれない.申し訳ない」
    • この講義では言語能力は不問です.文法ミスで減点することはありません.ミスを恐れないでください.
    • 話を聴き取りきれない場合,参考書を読むなどして補うようにしてください.質問も歓迎です.
  • 「本学も今年からコンピュータで休講案内を出すようになったのはグローバル化の影響」
    • 休講通知はもっと前からウェブで確認できましたしグローバル化の議論は直接関係ないですね.
  • 「もう何回目の受講かわかりませんけど今度こそがんばります」
    • 早く卒業してください.

Tuesday, July 28, 2015

国際経済学I,第14回, 2015

テストお疲れさまでした.補講も台風の中にも関わらずたくさんの方に出席いただきありがとうございました.

難易度はおおよそ例年通りかやや易化というところでしたが,苦戦した人が多かったようです.あまり手応えがないテストだったのではないでしょうか.その中でも満点は1名いました.
素点の分布は以下の通りです.
  • 平均が67.4点,中央値が69点,標準偏差が17.4.
  • 適当に重回帰したときに,出席回数が例年と違って有意にならなかった.女子ダミーは例年通り有意ではない.

中間試験はもう少しよかったので,適当に平均して授業参加点を足せば3/4強程度の人は合格ラインを越えるのではないでしょうか.


できが悪かったところに一部コメント:
  • 関税を課すと,消費者価格だけでなく生産者価格も上昇する.消費者が11000円払って買うときは,国内生産者も11000円で売れるはず.レジュメにも同様の箇所があり簡単な問題だと思っていたが,ほとんどの人が間違えていた.
  • 関税の余剰分析は,レジュメ・練習問題を理解していればむずかしくないはず.特にトリッキーな設問ではない.
  • 機会費用の計算は,試験直前にやったのにも関わらずできが悪かった.割り算でつまづいている人多すぎ.
  • 輸出する品目は,比較優位があるものになる.

採点というルーチン・ワークをやっていると,このまま自分の創造性が枯渇しまうのではないか,というような強迫観念に囚われてしまう.あまり時間はかけたくないものだ(マジメにやってますが).

Thursday, July 23, 2015

国際経済学I,第13回, 2015

前述の通り,台風で休講になりましたが, 期末テストのスケジュールはシラバス通り次回実施します.

講義内容
  • 比較優位と貿易
    • 労働は限りある資源.これを無駄なく活用するためには,なるべく「得意」な産業で働いてもらうとよさそう.
    • 各国は比較優位のある財を輸出することになる.
    • 貿易は分業を通じて両国を豊かにする.ゼロサムゲームではなく,みんながwin-winになるチャンスがある. 
  • 要素価格均等化定理
    • 労働移動ができなくても,財が移動できるなら賃金が均等化してしまう.貿易を通じて我々の労働環境も外界とリンクしている.
      • テクニカルには,生産技術が同一で要素集約度逆転がなく,財市場と生産要素市場の数が一致…など現実に当てはめにくい前提条件が多い定理である(証明の骨子はレジュメの通り).
  • 多国籍企業
    • FDIは年々増加している.この波に乗っかりたい.

コメントより
  • 「沖縄は最低賃金だが,もし自由貿易が行われ輸出が増えれば最低賃金も上がるか?」
    • 最低賃金は財市場の需給バランスだけで決められているわけではないのでなんとも言えません.
    • 自由貿易をすれば賃金が上がるか,という質問は,学問的に答える価値のあるよい問いかけだと思います.一般論としてはなんとも言えません.最低賃金すれすれの労働者たちの賃金が短期的には厳しいものになる可能性も十分あると思います.
  • 「沖縄では社員が少なくアルバイトが多いので最低賃金が少なくないのかと思った」
    • 現象としては,賃金が低い非正規雇用の割合が高いのは正しいと思います.ただ,その真の原因が何なのかはもっと深く考える必要があるでしょう.
  • 「沖縄は他府県と比べて賃金が安いので,この賃金格差はなくならないのかなと思った」
    • 他府県並みの生産性があればよいのですけどね.
  • 「自由貿易で貧困国とも賃金格差がない世界になったらいいと思った」
    • たとえ貿易とは関係なくとも,より多くの人が貧困から抜け出せることができればすばらしいと思います.
  • 「労働移動ができて裁定取引可能な一国内においても,賃金格差が生じていると思った.これも理論上のことか?」
    • 講義で紹介した話の背後で想定しているような素朴な理論だと,賃金格差は生じません.なので,理論が依って立つ前提条件のどこか(労働移動が完全に自由,など)に,現実の近似として不適切なものが紛れ込んでいると考えられそうです.現実と照らし合わせながら仮定を疑う,という批判精神はとても大切だと思いますので,鋭い質問だと思いました.賃金格差がなぜ生じているのかを理解することはとても大切なテーマでもあります.
    • 労働移動が自由な状況でも(観察される)賃金に地域間格差がある状況を表現する経済理論はいくつも捻り出すことができます.
      • 「理論」という言葉の意味するところが,研究者とみなさんとで若干食い違いがあるかもしれません.経済学において「理論」は唯一無二のものではなく,もう少し広い意味で用いています.(経済理論は,何らかの整合的な論理体系をもって現実を抽象化しその本質を明らかにするもの,という程度の意味合いに私は捉えています.)
  • 「比較優位は大事なことだと思った.自分に絶対優位があったとしても,その中でも苦手なものがあるはずで,相手が得意でなくても任せた方が生産性が高まるはず.これは日常や仕事にも使えそう.」 「比較優位を持った企業・国がそれを生産した方が効率もいいし経済も良くなると思った」
    • すべてを自前でやらなくてもよいしやらないほうがよいかもしれない,という話を頭のどこかに入れておいてください.
  • 「グラフを見ながら説明があってもなかなか難しく,正直あまり理解できなかった」
    • どこが飲み込めなかったのかもう少し具体的に教えていただければ.
    • 講義後半は少し急ぎ足だったので,説明不足なところはあったかと思います.テストでは講義中に重点的に説明した部分を中心に出題しますので,枝葉の部分の理解にあまり時間を割かなくてもかまいません(もちろんすべてを完璧にするのが望ましいですけど)
  • 「特に難しいところもなかったので期末でいい点とれるようにしたい」「しっかり復習して備えたい」
    • がんばってください,期待してます.
  • 「半年間ありがとうございました!」
    • こちらこそ! いつもコメントありがとうございました.

Monday, July 13, 2015

国際経済学Iの補講のお知らせ

先週10日台風で休講になった分,7月25日(土曜)の2限に補講を行います.教室は通常と同じくH-102です.

シラバスでは24日(金曜)に期末試験を予定していましたが,試験日程は変更しません.当面のスケジュールは,
  • 17日: 通常通り講義
  • 24日: 期末試験
  • 25日: 補講
となります.

試験範囲は,中間試験の範囲以降から,17日にカバーするところまでとします.

Monday, July 6, 2015

国際経済学I,第11回, 2015

次週は台風が来る可能性がある.今手がけている論文×2がどちらも好調なので,休みだとかえって助かる….

欧州は政治的台風まっただ中のようだ.思うところはいろいろあるけど,ともあれしばらくはリスクオフ.

講義内容
  • 比較優位
    • 分業の本質は,絶対優位ではなく比較優位にある.

コメントより
  • 「分担しないケースで販売に使う時間が2人合わせて45分 → 残りの15分は料理の時間?」
    • 2人合わせて全部で120分あるので,75分料理していることになります.
  • 「所属の団体で「できない」と言う人のものも全部か抱えようとしていた.比較優位を無視していると言われ気づかされた.うまく分担すれば私の負担も減るのではないか」
    • できないなりにやれることを任せましょう.そして自分が得たメリットを相手に還元しましょう.
  • 「逆数とは?」
    • $x$の逆数は$1 \div x$,つまり$1/x$のことです.(ただし$x \neq 0$.) 分母と分子を「逆」にしたもの,ということ.たとえば2/3の逆数は3/2です.
  • 「機会費用を比べればよい」
    • そうです.
  • 「どんな人でも分業すれば無駄を少なく作業することができる」
    • 無駄を減らすのに貢献できるのですね.
  • 「比較優位を理解できた」
    • すばらしい.

Wednesday, July 1, 2015

国際経済学I,第10回, 2015

更新を忘れていた….



講義内容
  • 小国開放経済における輸入関税
    • 需要が減り国内供給が増えて輸入が減り関税収入が発生する.このあたりの変化をひとつずつ整理して,どれもなるほどと納得してもらいたい.
    • 余剰の分析も,自分で一度整理して考えてほしい.
    • 税収は,長方形の面積($=$たて$\times$よこ)を使って考える.

コメントより
  • 「社会余剰が減るのに関税をかけるのは,生産者保護の他にも理由があるのか」
    • 前回の講義で軽く紹介しましたが,関税は輸入価格を引き下げて自国に有利にする効果(交易条件効果)も持ちます.その他,企業の立地を引きつける(関税回避型FDI)効果もありますし,外国との戦略的な関係の中で裏切られたとき相手に罰を与える目的で課されることもあります.
    • 政府は必ずしも自国の社会的余剰を最大化する存在ではありません.政治が絡むと,社会余剰を減らしてでも関税を課すことがありえます.
  • 「輸出する場合,輸出量はどこになるのか」 
    • 図解しました.なぜこうなるかは自分で考えてください.
  • 「死重損失がわかった」「グラフは理解できた」
    • 人の行動を不用意に変えると,目に見えない損失が生じます.
  • 「関税はあまりいらない感じがした」
    • 先週の講義でも紹介しましたが,ラッセル『寓話で学ぶ経済学: 自由貿易はなぜ必要か』あたりもご覧あれ.
  • 「グラフを書くとわかるが,納得できないところもある感じがする」「難しかった」
    • 極度に単純化されたモデルであり,現実に大切な部分を大幅に捨象しているのは確かです.それでもなお,モデルが抽出している,より本質的なことが何かを深く考えるとよいでしょう.

MathematicaRを行ったり来たりしていて混乱中Mathematicaはもう少しエコノメ系のパッケージ(とユーザーフレンドリーさ)が充実していると助かるのに.

Saturday, June 27, 2015

国際経済学I,第11回, 2015

このペースだとレジュメ4が全然説明できなさそうな予感…まずい.

講義内容
  • 貿易協定
    • 多角的なGATT/WTOから,FTA/EPAにトレンドが変わりつつある.
  • 分業と絶対優位
    • アダム・スミスの議論はたしかに直感的だが,必ずしも正しくない.


コメントより
  • 「幼稚産業を保護するのもいいのではないか」
    • 将来本当に成長するという保証はないですね.衰退産業に人や資源を押しとどめ続ける被害とのトレードオフがあります.
  • 「日本は保護貿易をしてコンピューター産業やテクノロジーが強くなったと聞いたことがある.保護貿易とは,関税を高くかけることか?期限を決めて貿易をしないことか?」
    • 保護貿易には様々な形があります.高い関税を課すこともその一つですし,一時的に輸入制限することもその一つです.講義中には数量割当も紹介しました.
    • 保護貿易で強くなったという説得的な実証研究は知りません.日本政府による政策が特定の産業を強くしたとは言えない,という研究はいくつか知っているのですが…(たとえば三輪・ラムザイヤー 2002, Ohashi 2005, Esteban-Pretel and Sawada 2014).
  • 「月収20は大きく,不平等な感じがした」
    • 20という数字自体は話をシンプルにするためのもので,現実にその水準というわけではありません.誤解を招く言い方ですみませんでした.
  • 「実際に関税をかけていない国はあるか?」
  • 「分業・特化の話は勉強になった.それ以外にも今日の講義は学ぶことが多くあった」
    • 残りの講義は分業と特化のメリットをくどくどと説きます.
  • 「少し難しかった」
    • グラフでつまづいているのであれば,消費者余剰や生産者余剰を再確認してみては.
  • 「少し勉強してみたいと思った」
    • 少しと言わずたくさん…
参考文献
  • 三輪芳朗・J.マーク ラムザイヤー (2002) 『産業政策論の誤解―高度成長の真実』東洋経済新報社
  • Julen Esteban-Pretel and Yasuyuki Sawada (2014) On the role of policy interventions in structural change and economic development: The case of postwar Japan. Journal of Economic Dynamics & Control 40, 67--83.
  • Hiroshi Ohashi (2005) Learning by doing, export subsidies, and industry growth: Japanese steel in the 1950s and 1960s. Journal of International Economics 66, 297--323.

Friday, June 19, 2015

国際経済学I,第9回, 2015

気づけば梅雨が明けてしまった.沖縄では夏と言っても,あらたふと青葉若葉の日の光,のような情景はまるで浮かばないのである.研究室にこもっている限り風情もへったくれもないのだけれど.

講義内容
  • 小国開放経済
    • 閉鎖経済の均衡と自由貿易下の均衡を比べることで,貿易の効果を抽出する.
    • 消費者の便益はすぐには目に見えないし,直感だけではその大きさもわからない.モデルを使うとそれが見えてくる.
      • 輸入にもメリットがあることを理解できない人は多い.貿易の利益を理解することは,アダム・スミスの時代から今日に至るまで経済学の中心的課題である.
    • 損をしそうな生産者は,建設的な努力とは別に,ロビー活動で抵抗を試みることがある.
  • 日本の輸入事情
    • 輸入との競争という観点での分析は,直近だとAcemoglu, Autor, Dorn, Hanson and Price (forthcoming) などがある.本講義ではすっかり無視している一般均衡効果や垂直的取引を考慮しても,輸入と競合すると雇用が失われてしまうようだ.(ただし日本に直接適用可能な結論かどうかは不明.)

コメントより
  • 「外国と貿易を行うことで均衡が下がり供給が上がるとわかった.輸出しているところで価格が上がると供給が下がるのか」
    • 意図するところがよくわかりませんでしたが,頭の中で比較静学をやってみることは大事だと思います.
    • 貿易を開始すると,国内生産は減りますが,輸入した分と併せると国内で流通する量は増えます.もし国際価格が上昇すれば,国内生産量が増えて,輸入は減り,国内需要量は減ります.
  • 「輸入費用を考えたらあまり輸入しない方がいいのでは」
    • ここでの国際価格は,輸入にかかる費用も含んだもの(CIF価格)だと考えてください.
    • 輸送費用がとても高く,輸入価格が国内価格$p^*$よりも高くなってしまう場合は心配しなくても輸入が発生しません.
      • 輸送費用の節約効果も分析できるモデルに拡張することは可能ですが,本質的な結論に変化はないと思います.
  • 「閉鎖経済よりも効率が良く物を輸出入できるんだと思った」
    • 輸出入を通じて効率の良い生産・消費ができる,という理解のほうが正確です.
      • 経済学において「効率」という言葉のニュアンスは日常用語とはズレています.ミクロの教科書などで別途学んでいただければ.
  • 「どちらかに不都合なことでも社会余剰がプラスになるのであれば貿易を行うべきだ」「国は損をしていると思ったが社会全体では得しているとわかった」
    • 損するグループへの補償も必要になりそうですね.
  • 「政治家たるもの,皆のために活動してほしいですね」
    • 利害が対立するときその折り合いをつけることは政治家の大切な役割ですね.
  • 「(1) 生産者が少なくなるのか気になった,(2) 農業をする人が減っているのは貿易が関係しているのか気になった」
    • 生産量が減る背後には,生産者が減る,生産に使う工場や土地を縮小する,などを想像するとよいと思います.
    • 貿易も関係していると思いますが,貿易以外の要因もありそうです.技術変化(製造業やサービス業のほうが儲かるようになる)や所得拡大(農産物への支出が相対的に減る)も見逃せないでしょうね.
  • 「日本の製品はいいものなので,もっとリーズナブルにすれば外国にも負けないのでは」
    • もちろんよいものをより安く作ることができればよいのですが,言うはやすしですね.
  • 「なぜ中国産は安いのか」
    • 突き詰めて考えると難問です.講義後半で学ぶような理論に基づいて考えると,労働生産性が低く,労働供給が豊富にある,というところでしょうか.
  • 「国産品は高くて買う気になれない.技術の進歩はしているが,必要とされないと意味がないと最近思う」
    • 疑似科学を都合よく利用する家電メーカーを私は必要としていないかなぁ.
  • 「生産額や輸入額なども知れてよかった」
    • 理論もデータも両方見ることが大切だと思います.これは研究者にとっても同じ.
  • 「新しく出てきたグラフは少しややこしいけど前に習ったことを利用すれば簡単にできるのでそこまで難しくはないと思った」
    • ミクロの授業をじっくりやってきた甲斐があります.
  • 「難しかった」
    • 次回はもっと…
  • 「遅れてくる人は遅刻扱いにしないの?」
    • 毎回朝から出席している方には申し訳ないですが,この講義の成績評価においては出席を重視していません.講義に参加しない分だけテストが解けなくなり成績に響きますので,出席を厳密にチェックする必要性をあまり感じていません.時間を守ることよりは内容を理解し咀嚼することを優先的に評価しています.
    • なお,筆跡からあからさまな代返だとわかれば点数を割り引いています.不正を許容しているわけではありません.私は疑わしきも罰するタイプです.


参考文献
Daron Acemoglu, David Autor, David Dorn, Gordon H. Hanson, Brendan Price (forthcoming) Import Competition and the Great U.S. Employment Sag of the 2000s. Journal of Labor Economics.

Monday, June 8, 2015

国際経済学I,第8回, 2015

中間試験お疲れ様でした.例年よりも易化したと思います.
平均点が72.86点で,標準偏差が15.8点でした.得点分布は以下の通りです.第一四分位が60点なので,受験者のうちちょうど3/4の人は合格点になっています.満点も1名いました.



おおむねよくできていたので解説は省略します(多忙すぎます).

Friday, May 29, 2015

国際経済学I,第7回, 2015

投稿して1年強放置されている論文の行く末が気になる季節になってきた. 天気も悪く,少し気が滅入る.

講義内容
  • 余剰の読み取り方
    • さしあたり,どこの面積になるのかを押さえよう.
  • 小国開放経済モデルの設定
    • 貿易がスタートすると,生産や消費のパターンも変化する.その帰結を分析する技を身につけていく.
    • 小国はプライス・テイカーに似ている.外国の価格は所与としているのである.

コメントより
  • 「満足度を図で表せるということで,市場の動きを目で見てわかると思った」 
    • 余剰という概念は,市場の動きそのものというよりはその規範的な帰結です.
    • グラフを使って考える御利益は次週以降に明らかになる予定です.
  • 「余剰の図形は覚えやすかった」 
    • 覚えてくださいね.
  • 「閉鎖貿易って?」
    • 書き間違えましたか? 閉鎖経済です.
  • 「閉鎖経済は国としてのメリットはあるのか?」
    • 来週以降,貿易がもたらすメリットを学びます.貿易にメリットがあれば,貿易をしないことにはデメリットがあるとも言えます.
  • 「輸入の場合国内生産者が苦しむが,輸出の場合は逆のことが起こる.国内で希少になり値上がりして消費者が苦しむ.」
    • すばらしい洞察で,これから学ぶモデルではまったくその通りです.
  • 「国内生産者が負けないよう関税をかけたりするだろうから,国際価格のまま売られることは考えにくい.そうなると国内生産者がいなくなってしまうかも.ブランド化して差別化を図って売ることもできると思うが…」
    • 関税の分析はレジュメ2の後半でやります.
    • 価格競争に陥らないように差別化するのは大切ですね.ただ,ここではまったく差別化のされていない同質な財のみを分析します.
      • なお,オーソドックスな枠組みだと,差別化の有無それ自体はさほど結論に影響しません.
  • 「自由貿易の有無など,特別で複雑な状況が生じたらいっそう貿易が困難になる」
    • 貿易について分析することは困難になるかもしれません.
  • 「小国の仮定が面白かった.大国が何かすると変わってくるのは面白い」
    • 小国のケースを分析する場合でも,もし大国にしたらどうなりそうか,ということまで想像を巡らせるといいですね.
  • 「いろいろ貿易のことがわかってためになった」 
    • モデルを使って改めて理解する,という作業がこの講義のハイライトのひとつになります.
  • 「復習してテストがんばりたい」「テストが不安です」
    • 健闘を祈ります.
  • 「唐突なタメ口にビックリした」
    • 記憶にねーな.

Thursday, May 28, 2015

国際経済学I,第6回, 2015

いよいよ梅雨入りですね.湿気との戦いが始まっています.

講義内容
  • 均衡の比較静学
    • 需給バランスが動くと価格も動く,というのがメッセージ.
    • 需要曲線が動くか,供給曲線が動くと,需要量と供給量が一致する場所(均衡)が変化する.均衡の変化に注目すれば,価格や取引数量の変化が一目瞭然となる.
      • どういう解釈ができるのかを自分なりに考えてみよう.
連絡
  • 中間テスト用の練習問題をアップしました.
    • 試験範囲は次回やった内容までとします.

コメントより
  • 「増税で供給が下がるのがちょっとわからなかった」
    • 税金が払えずつぶれてしまうような企業が出てくる,とイメージしてみてはいかがでしょうか.詳細は先週解説済みです.
  • 「需要・供給だけでなくそれを取り巻く環境も価格の要因となっているとまでわかった」 
    • 価格はあくまでも需要と供給で決まりますが,需要や供給は様々な環境を反映しています.
  • 「価格と取引量が同じ方向に動かないグラフもあるので気をつけたい」
    • 様々な可能性があることを理解してください.また,なんでもありえるからこそ,なにかを観察したときにその背後で何が起こっているのかを突き止めるのは難問になりそうだということにも思いをはせていただければ.
  • 「グラフを利用することで世の中の経済が見えてくるんだなと改めて思った」 「使いこなすことができれば,世の中の動きを理解できそう」「ただの2つの直線でこんなことまでわかるのはすごいと思う」
    • 売り手と買い手が登場するような場面ではいつも,需要と供給の考え方を当てはめられないかどうか考えるとよいと思います.驚くほど多くの場面で当てはめられます.
  • 「久しぶりにやったので難しく感じた」「理解するのはやっぱ難しい」「なんとなく理解できた」
    • 数学的には,均衡は連立方程式の解になっています.連立方程式を理解しておくと,経済学も理解しやすくなるでしょう.
  • 「グラフを書くとき,自分が思っていたのと逆だったところがあった」
    • 正しいほうのグラフがなぜ正しいのかを理解していただければ幸いです.
  • 「説明はわかるがグラフだけ見ても難しい.もっとグラフに集中したい」
    • 次回以降はグラフがさらに複雑化します.グラフの読解に不安があれば早めに解消しましょう.
  • 「グラフを使った方が理解しやすくて良い」
    • そうですね,言葉だけで理解しようとするとかえってこんがらがると思います.
  • 「グラフをたくさん書いていく内に,書き方も内容も理解できるようになって少し自信がついてきた」
    • よかったです.繰り返し手を動かすことはとても大切.
  • 「講義前半で前回の復習をやっていたのでよかった」 
    • しかし昨年より若干進度が遅いのが気になっています.
  • 「テストも近いのでがんばります」「テストかなり難しいんじゃないかと不安になった」
    • 例年テストは難しいと評判です.
  • 「遅刻者が多すぎてアレなので,テスト難しいことを期待します」
    • 標準化された内容をカバーする講義ですので,出席だけは適当にクリアしつつ,市販の教科書で自習するような学び方を排除しません.ただし,出席点自体は低く,ある程度の努力が必要なテスト問題を用意しますので,手を抜いた分のツケは自分で払うことになるでしょう.
  • 「アップロードする方法を教えて」
    • ユーチューバーにでもなるんですか?
    • 講義資料なら私のサイトでダウンロードできます.閲覧時には講義中にアナウンスしたパスワードを用いてください.

Friday, May 15, 2015

国際経済学I,第5回, 2015

講義内容
  • 入門ミクロ: 供給
    • 需要と比較対照しながら理解しよう.
  • 均衡
    • 需要量 = 供給量,となるところ.このときの価格が均衡価格.
    • 均衡はあくまでも想像上の産物で,現実には観察できない.しかし,誤差を伴いつつも,現実経済は均衡の周りにいる,と考えてみよう.



コメントより
  • 「均衡価格 = 相場,と認識してよいか?」
    • 相場という言葉には曖昧なところがありますが,大まかなイメージとしてはそれでかまいません.モデル上はすべての消費者・生産者がまったく同じ価格に直面します.
  • 「価格が安いときに生産量が少ないのはなんとなく理解できる.しかし生産量が少ないと平均費用が高くなるために大量に作った方が利益が出るのでは.」
    • とても鋭い質問ですね.生産量が少ないときに規模の経済が働くようなとき(俗に言うS字型生産関数)にはそのような思惑が生じるかもしれません.
      • ブログで一から解説するには少し難物になりますので,中級レベルのミクロの教科書,たとえばヴァリアン(2007)『入門ミクロ経済学』勁草書房,などに挑戦してください.
    • 手短に概略を述べます.ご指摘のように,規模の経済が働く限り,企業は生産量を増やし利益を増やしにかかるでしょう.でも規模の経済によるうまみがいつまでも続くわけでなく,どこかで生産量が増えるにつれ平均費用が上昇するようになる転機が訪れます.講義で扱うような右上がりの供給曲線は,この転機を迎えた後の部分だけを見ていることになります.
      • 十分な需要がある限り,この転機を迎える前に企業が生産をやめてしまうことはありません.もっと生産すればもっとコスト削減できて儲かるのは明らかなので,生産をやめて儲ける機会を逃すようなことは考えにくいのです.なので,そもそも規模の経済が働いた状態のまま生産することはありません(要は,二階条件を満たしません).
      • 需要がそれほど多くない場合はそういうわけにもいきません.いつまでも転機が来ず,とにかく規模の経済が強烈に働いているような企業もいるかもしれません.しかしこうした企業をプライス・テイカーと仮定するのは適切でなくなってしまいます.こうした企業を分析するには,講義で学ぶものとは別の道具が必要になります.
  • 「市場での価格は需要と供給の均衡で決まり,その相場を見て需給が決まっていくプロセスだと理解した」
    • そうですね.
  • 「現実はもっと複雑な要因があり,もっと細かいグラフになる気がする」
    • 場合によっては簡単に図示できない事態になるかもしれませんね.
  • 「価格次第で経営は大きく変わるんだなと,価格の重要性がわかった」
    • 価格は単に企業の経営を左右するという以上に,経済学上きわめて重要な役割を果たします.
  • 「均衡という状態は,理想的な状態?」
    • 特殊な状況(完全競争)の下では,理想的(効率的)な状態になります.なお,この講義では,均衡が理想的になる状況のみを分析します.均衡の善し悪しについて詳細は,ミクロ経済学で学ぶことができます.
  • 「増税で供給が減るのは大変.気になる.」
    • 経済学では,供給(や需要)が減ること自体よりも,それによってムダが生まれることをとても気にします.増税とは逆に減税したり補助金を出したりすることで供給を増やせばよいのかというと,そう簡単でもない予感がしませんか?
  • 「『沖縄の業界地図』の価格はどういう理由で決めたのか?」
    • 赤字を出すリスクを小さくしつつ,なるべく儲けが出るように決めました.特に需要量と出版社・印刷会社との分配の仕方について様々なシナリオを検討するべく,プログラムを組んでシミュレーションを走らせながら決めました.需要予測をするときには,他の沖縄本やビジネス雑誌の価格帯,想定される顧客の所得水準や書籍への支出性向なども参考にしました.また,シミュレーションでは算定しませんでしたが,我々の商品が経済学でいうところの公共財・耐久財としての性質も持つことにも配慮しました.私はビジネスの経験が皆無で,だいたいこの程度のことしか考慮できませんでした.
      • このクオリティだと5000円ぐらいしてもいいんじゃない?というような声も聞こえます.950円はお買い得ですよ!!!!
  • 「『沖縄の業界地図』が思っていたよりもとても本格的で気になる」
    • 今すぐ買うべし.
  • 「需要と供給の流れを覚え,人が求めている商売をすれば上がると思う.でも必ず下がってくると思うので,安定した商売が大切だと思った.」
    • 需要が大きくかつ安定している商売をしたいですね.
  • 「何回もやることで頭に入るので無駄ではない!むしろためになった」「書き方がわかってよかった」 「少し習ったことあるけど忘れてた」「供給という言葉は聞いたことがあり懐かしいと思った」「最初はグラフは難しくてややこしかったけど,意外にわかりやすくて簡単なのかと思った」「供給は需要に似ているから理解しやすかった」
    • 忘れずにマスターしてください.紙とペンがなくても頭の中でイメージできるようにしたいものです.
  • 「グラフは書けたけど内容はあんまり意味わからなかった」「書けるように復習したい」「正直言って難しい.テストまでにはマスターしたい」
    • この講義に関しては数学的な議論は不可避です.がんばって追いついてください.
  • 「為替の話はよくわからなかった」
    • 詳しくは後期の講義でやります. 為替の話がわからなくても現時点では問題ありません(わかるに越したことはないです).
  • 「均衡について深く学べてよかった」「均衡の説明がわかりやすく興味深い」「均衡は高校でもやった」
    • 均衡という概念を(批判的に)受け入れると,経済学の理解が進むでしょう.

ちょっと進捗が遅い気がする.研究モードから授業モードに気持ちを切り替えるのが難しい…

Thursday, May 14, 2015

国際経済学I,第4回, 2015

講義内容
  • 入門ミクロ: 需要
    • ここでの家計は,価格を見てどれだけ消費するか決める存在.こうした家計の行動をグラフに表現したものが需要曲線である.
    • 人間は価格だけに反応しているわけではないが,それでも,価格に反応する部分だけを抽出して絵に描いたものが需要曲線である.もちろん,グラフに価格以外の情報が直接出てこないからといって,消費者が価格だけを気にしていることは含意しない.
    • 価格を自分では動かせず,価格を受け入れるより他ない人をプライス・テイカーと呼ぶ.我々が今後分析していく登場人物はみなプライス・テイカーであると仮定する.つまり,現実にはプライス・テイカーではない例が散見されるが,そういう人のことは便宜上いったん無視し,いなかったことにする.
コメントより
  • 「ミクロで習った」「高校で習った」「復習になった」「今までよりしっかり理解できた」「細かく理解できた」「おもしろくて意味がわかりやすかった」「需要法則がわかった」
    • 経済学は取っつきにくい学問ですので,入門的な内容でも繰り返し学ぶとよいように思います.重複があってすっかり退屈だという方はしばらく辛抱してください.
    • 今後,特にレジュメ2ではグラフをたくさん使うので,今のうちに不安なところは解消しておきましょう.
  • 「左方上がりなのか右方下がりなのかわからない部分があった」
    • どちらも正しいです.グラフの傾きがマイナスであることこそがここでは重要なので,日本語の上下左右が逆転することそのものをさほど気にする必要はありません.
    • 私がグラフを見るときにはほぼ無意識に,原点から右,あるいは原点から上へと視点が動きます.ですので,右下がりと表現した方が自分の認知パターンにそぐうことになります.
  • 「シフトのグラフの書き方がいまいち掴めない」「シフトが難しかったので復習したい」
    • 何かが起こる前の状態と,何かが起こった後の状態とを楽に比較できるような作図をすることがここでの目的です.
    • シフト云々以前に,グラフが表すものの意味を自分の言葉で説明できるようになるといいと思います.
    • 供給を学ぶときもシフトの例を挙げます.今の段階ですぐにはピンとこなくても,何度も手を動かしながらゆっくりマスターしてください.私の講義だけで不十分な場合は,ミクロの入門教科書にトライしてみてください.
  • 「現実はもっと複雑らしいが、複雑なグラフも気になる」
    • たとえば次のグラフは昔私が研究で用いたものですが(最終的には没にしましたが),連続でも単調でもない状況を記述しています.場合によってはもっと複雑なケースを考えることもあります.
    • グラフは複雑であればよいというわけではありません.複雑な世の中の,より本質的な部分のみをシンプルにまとめ上げたグラフこそが好まれます

国際経済学I,第3回, 2015

ここ最近はブログにうつつを抜かしているどころではありませんでした.たとえば
  • 2015年のRyukyu Economics Workshopを盛況の内に終えることができました.ご参加くださったみなさままことにありがとうございました.
  • 『沖縄の業界地図』琉球新報に取り上げられました.ありがとうございました.想像以上に売れているようです.
  • メインのPCを交換しました.サクサク動くようになった代わりに,エクスプローラーがクラッシュしまくるようになりました.Windowsもうやだ.
  • 台風で非常勤先の講義が休講になりました.台風で自分の講義が休講になるのは初めての経験かも.
  • 歳をとりました.Avinash Dixitが「いつも23歳のつもりで取り組んできた」とおっしゃていたので私も永遠の23歳を標榜し続けますが.
連休のような,研究に集中できる時間がますます貴重になってきたと感じます.


講義内容
  • 関数,一次方程式
    • 経済学でよく使われる前提知識を確認した.本講義では傾きや計算問題は特に出てこない予定だが,知っておくと本講義よりも一歩進んだ世界にアクセスしやすくなる.
  • 市場の概要
    • 売り買いという,市場で行われる基本的な取引行動とその帰結を分析する技を速習する.

コメントより
  • 「傾きって何?」
    • 角度のことだと思っても構いません.傾きは,直線と横軸との角度を表しています.
    • 直角三角形をご覧下さい.結論を先取りすると,三角形左上にある右上がりの辺の傾きは,$a$と書かれている部分になります.数学的には,$a = Y \div X$という関係を満たす$a$のことです.
      • この三角形は右下で直角になっています.まずは右下の直角部分を挟んでいる2つの辺に注目しましょう.横の長さが$X$,縦の長さが$Y$となっています.
      • 次に,直角ではない,残された右上がりの辺に注目します.この辺(斜辺と呼びます)と,下のほうにある長さ$X$の辺の間の角度は直角ではなく,$a$と書かれています.
      • この$a$が,(右上がりになっている辺のX軸方向に対する)傾きと呼ばれます.傾きは$X$と$Y$の比率を表します.具体的には,$a = Y \div X$,となります.
      • 2本の直線が交わっているとき,直線の向きがどれだけお揃いなのかを測るものが角度です.たとえば下のように,黒線と青線が交わっているとき,この2直線がなす角度を$a$や$b$で表します.ここでは$a$のほうが$b$よりも小さくなっており,見た目的には鋭く尖った感じがします.左側のほうが右側に比べ,黒線と青線が似たような方向を向いています.左側のほうは右側と比べて「傾きが小さい」といいます.
      • ついでに,平行な二つの直線があって,それらを通る直線を引いたときにできる角度はまったく同じものになります.
  • 「傾きと切片以外にヒントはないの?」
    • 傾きと切片がわかれば他のヒントは必要ありません.傾きと切片の情報だけで十分なのです.
      • 傾きがわからなくても,直線がどこを通るのかについての情報が2つあれば,直線を書くことができます.直線が通る場所2カ所の座標がわかれば,傾きも自動的に計算できるからです.
  • 「グラフ自体に数字はないの?」
    • 座標軸を書かなくてよいのか? という趣旨の質問でしょうか.定規を使って目盛りを一つ一つ書いていってももちろん構いません.しかし誤解がない場合は省略されることがあります.講義中黒板に逐一目盛りを書き込む時間はありません.
    • $a$や$b$のように定数を記号で表すことにあまり馴染みがない場合,$a=1$や$b=2$などと,適当な数字を当てはめて考えてもよいでしょう.
  • 「一次方程式はあんまりやりたくないと思ったけど,やり方が分かったのでよかった」
    • 時間と練習は必要ですが,理解できるといいですね.
  • 「コツを掴めば簡単」「いい復習になった」
    • それはよかったです.
  • 「中学校では「なぜ,数学をやるのか」と思っていた.でも経済学に役立つと考えると面白いかも」
    • 数学は経済学以外でも役立つ重要な学問だと思います.
    • 料理や洗濯をするときでさえ一次方程式的な思考は自然と使っているような気はします.道具は使いようです.
  • 「一次関数でだいたいの価格が分かるってすごいね」
    • おうよ.

Friday, April 17, 2015

国際経済学I,第2回, 2015

今期は講義と学内業務がずいぶん増えてしまい,フライング五月病になりそう…

講義内容
  • グローバル化が進む要因
    • WTOが質の高いレポート(英語)を毎年刊行しており,それを眺めるのもよい.特に13年のレポートは,何が貿易に影響を与えるのかを学術的な成果に基づきながら整理している.
  • 沖縄の国際経済史
    • 沖縄の交易史は安里ほか (2010) に詳しい.
    • 貿易は単に物を交換するだけではない.情報や知識もついてくる.
    • 中継貿易でうるおった時期もあったが,長続きはしなかった.競争に敗れた先祖の轍を踏まないようにしたい.
連絡
  • 5月1日は水曜日日程のためこの講義はありません.
コメントより
  • 「貿易するには言語が必要だと思うが,日中でよく貿易できたなと思う」 
    • 古来日本のインテリは漢文を勉強していましたよね.インテリでなくても,貿易商は幼い頃から実践経験を積んでいたのかもしれません.
  • 「昔は中国と仲良かったのに今はたいして仲よくないのが残念」
    • 残念ですね.
  • 「歴史は昔学んだことがあって,復習できてよかった」「再び勉強したい」「沖縄はすごい!!」「今も変わらないと思う」「沖縄の現状はなぜだろう.歴史を学ぶと様々な疑問が出てくる.来週が楽しみ」
    • 知的好奇心の赴くままに歴史を勉強して頂けるとうれしいです.私は歴史は好きです,研究対象としない限り.
  • 「自ら生産するより,地理を活かして国際関係を強めていくと,次第に発展していくのかなーと思った」 
    • 最近の国際物流ハブ構想のことでしょうか.
  • 「国際化は最近だと思ってた」「近代のイメージがあった」
    • もちろん現代のものとは比にならないほど原始的な取引だったかと思いますが,現代まで続くような影響が残ることもあるようです.
  • 「沖縄の伝統工芸品が外国の影響を受けていたとは」「完全沖縄発祥だと思っていた」「昔は貿易で支えられていたんだな」
    • 日常的に英文を読んでいるので,むしろ外国と知的に断絶している状況が想像できなくなりつつあります.外の世界のものも貪欲に取り入れていきましょう.
  • 「沖縄は他国・地域への地理的なアクセスがよいのでは.戦争のとき沖縄が攻められて今も基地があるのも,位置がよいからと聞いたことがある」
    • 現代の基地問題でも,沖縄の戦略的価値は大切な論点の一つのようですね.(私は専門外です.)
    • ポテンシャルは高いかもしれませんが,他にもっと優れた場所があってもおかしくないようにも思いました.
  • 「官製貿易というが,民製貿易もある?」
    • 現代だと基本的には民間企業同士の取引がほとんどではないでしょうか.ただ,政府の監視や法的ルールから外れた貿易は密輸になってしまいます.民間の市場取引を円滑に執り行うためには政府の関与が不可欠です.
  • 「日本の輸入品は食糧だと思うけど,輸出しているのは何?」「なぜ日本は貿易取引量が少ないの? 技術があるのに.」
    • 日本の輸出品は自動車などの重化学工業製品が主力です.詳しい構成は財務省「貿易統計」をご覧下さい.
    • 他国との比較は,たとえばOECD Science, Technology and Industry Scoreboardで確認できます.なぜ少ないのかについては,これといって確信のある説明や適切な文献が思いつきません.すみません.北米以外との間で制度的・文化的な壁が依然として大きいのかもしれません.
  • 「沖縄の輸出入のデータは衝撃」「ここまで差があるとは思っていなかった.資源や技術がないからかはわからないけど,世界に認められるものを作っていないと感じた」「沖縄は赤字を黒字に変える方法を考えた方が良い」「昔は成功していたらしいのでそこから何かを学んで発展していければいいと思った」
    • 経常収支は後期の講義で簡単に学ぶ予定です.が沖縄の場合経済的な要因というよりは政治的な所得移転の役割が大きい気がしていますので,後期学ぶ内容と沖縄の事例とは少し距離があるかもしれません.
    • ミクロレベルでは,輸出市場に参入するためにはそれなりに高い生産性が必要,というのが研究者の間でコンセンサスとして確立されつつあります.他よりも生産性を高める努力が必要なのは言うまでもありません.
  • 「コンテナすごい」
    • いえーい.
  • 「グローバル化を簡単に言うと外の世界とつながりやすいということ?」 
    • はい.突き詰めて考えていくとそれだけでは不明瞭で不完全ですが,明瞭かつ完全無欠な定義など存在しませんし,定義は分析したい対象に応じて柔軟に設定したほうが建設的ですので,当面はそういうざっくりとした理解でOKだと思います.
  • 「グローバル化するとテクノロジーが進歩しやすくなるけどリーマン・ショックみたいな被害も受けやすくなる」
    • 特に金融取引のグローバル化はしばしそういう側面を持つかもしれません.
  • 「リーマン・ショックはやばいと思ったけど大丈夫だったので,マスコミは騒ぎすぎだと思った」
    • 100年に1度は十分やばいと思います.
    • マスメディアではご都合主義的に自説を牽強付会するような人が少なくないのでしょう.
  • 「内容がうまく分からなかった.次回はしっかりわかるようにしたい」
    • どこがよく理解できなかったか,具体的な質問をしていただければ解説し直すことは可能です.

参考文献:

  • 安里進・高良倉吉・田名真之・豊見山和行・真栄平房昭 (2010) 『沖縄県の歴史 (第2版)』 山川出版社
  • World Trade Organization (2013) "World Trade Report 2013: Factors shaping the future of world trade," WTO Publications.


Friday, April 10, 2015

国際経済学I,第1回, 2015

下の方のポストにも書いてある通り,このblogでは講義のフォローなどを行っている.オープンにしても恥ずかしくない内容を教えるという意味もある.

本講義に関するエントリーにはtradelectureというラベルをつけておく.必要に応じて活用していただければ幸いである.

講義内容
  • 講義概要
    • グラフを読むなど基礎的な数学力は要求する.
    • レジュメはウェブからダウンロードしてね.
    • 内容は昨年度とほとんど変わらない.
  • 大卒プレミアム
    • 大学生活の中で何かを掴もう.
    • 分業や特化を通じて,誰にでも社会に建設的に貢献できることを国際経済学は教えてくれる(予定).
コメントより
  • 本ブログでは,ありがたくも出席カードにいただいたコメントに対して,すべてではありませんが返答をします.コメントによっては講義中に取り上げることもあります.ご了承ください.教員の話を鵜呑みにせず批判的に聞くことは大切だと思います.どんどん疑問を持ちましょう.
  • 「大学進学率が上がっていて,まったくできない(眠ってたりやろうとしない)大学生もいるから,格差は縮まっていると思っていた」
    • よい洞察ですね.大卒の(相対的な)供給量は増えていますし,それは学歴間賃金格差を縮小するような効果を通常持つでしょう.最近流行のピケティ『21世紀の資本』にも,教育の普及が格差を縮めると言及があるそうです(私は未読です).しかし,社会はそれ以上のスピードで変化しているのかもしれません.
    • 翻訳はまだされていないようですが,Goldin and Katz (2010) などが労働市場の需給バランスの観点から整理をしています.
  • 「春休みに海外インターンシップに参加して刺激を受けたが,現実も思い知った.今大学生に必要な知識・能力・スキルは何でしょうか?」 
    • 必要なものは将来何をしたいかによって様々です.私にはわかりません. でも海外に飛び出すほどの行動力やその経験を省みる能力は大切だと思います.
    • 一般論としては,幅広い教養や,深い論理的思考能力,語学を含むコミュニケーションスキル,自己管理能力,挫折にめげない忍耐力,など挙げればきりがないほどあります.今はあまり役に立たないと思うようなスキルが将来思わぬ形で役立つこともあります.何をどう活かすかはみなさん次第です.よくわからないうちはいろんなジャンルの本を読むとよいように思います.
    • 個人的な経験では,情熱を傾けられる何かを見つけることが大切なのではと思っています.高いモチベーションを維持する能力と言えるでしょうか.
  • 「能力はあっても経済的に厳しく大学に行けない人はどうか.あるいは大学生活をテキトーに過ごして何もせず卒業した人は「能力がある」と言えるのか?」「大卒は能力がある証拠という表現は絶対か」
    • 高い能力を持っていたとしても,それを他人に知らしめるのはそう簡単ではありません.たとえ能力はあっても,高卒であるというだけで第一印象が悪くなることはあります.また,「能力がない」人でも,「能力があるように見せかける」ことはある程度可能ですね.
    • 経済学で「情報の非対称性」と呼ばれる問題の典型例です.人の持つ能力を正しく評価するのは難しいことなのです.
      • とはいえ,能力の低さは遅かれ早かれ露見しますし,逆に第一印象が悪くても挽回することは可能です.
        • 何もせずにのんびり過ごす時間もそれはそれで必要だと思いますよ.それだけだと寂しいですけどね.
    • 絶対にそうだ,という話ではありません.学歴は完全なシグナルとしては機能していませんので,例外は多々あります.あくまでも,可能性が高いと見なされる,という程度のものです.慎重に解釈して下さい.
  • 「専門的スキルを持つ専門卒が,特に知識や技術のない大卒よりも収入が低いのはなぜか」
    • シグナリング的には,元々稼得能力が低い人が専門に集まっているという仮説が立てられるでしょう.また,大卒のほうが時代の変化とともに自分のスキルを更新していくことができるのかもしれません.知識はどんどん新しくなりますので,学校で身につけた専門知があっという間に使い物にならなくなることは珍しくありません.その他いろいろな理由を考えてみてください.うまくまとめていけば卒論にもなるのでは.
  • 「iPhoneの生産国はどこになるのだろう」
    • 私の携帯には,カリフォルニアでデザインして中国で組み立てた,と書いてあります.
    • 原産地の決め方は,脱税や節税とも関連し実務上大切な論点になります.基本的には,どこで決定的な加工をしたのか,に注目します.
  • 「iPhoneの利益はどこにいくのだろう」
    • 利益の分配を正確に知るのは難問で,学術的にも大切なテーマです.
    • ある研究によれば,総コスト178.96ドルのうち中国での組み立てには6.5ドルしか費やしていないようです.(いくらなんでもこの数字は過小評価されているように思いますが.)
  • 「大学の講義もそのうち機械に取って代わられるのだろうか? 完全にそうならなくてもそういう傾向は見られるので気になる」
    • 私自身は受けたことがありませんが,世の中にはDVDを流してばっかりの講義もあるようで,そうした講義はすでに取って代わられているとも言えるかもしれませんね.自前ではヘボい講義しか提供できないような大学は将来潰れていくかもしれません(スター教員には一攫千金のチャンスとなるかもしれません).一方,生講義やゼミには機械ではなかなか出せない魅力があると思いますので,プロフェッショナルな教員の需要がゼロになることはないでしょう.我々教員も安穏としてはいられません.
      • (教育業務負担が減り研究業務に専念できるようになればいいのに…)
  • 「現実は厳しい」
    • 手助けしてくれる人もいますよ.
  • 「国際経済学を学ぶ意義があまり見えてこなかった」
    • 我々にとってグローバル化という現象は他人事ではなく,もう少ししっかり理解しておきましょう,というところでしょうか.説明に舌足らずなところがありました.
  • 「受けやすそうな授業だが,話の中身は?だらけ」
    • ミクロ経済学を別途勉強するともっと話が通じやすくなると思います.
  • 「卒業できるようがんばります」「正直経済は苦手だけどがんばります」「非常に有意義な時間を過ごし学ぶことが出来た」「納得」「びっくり」「半期よろしく」
    • いろいろとよろしくお願いします.

参考文献
Claudia Goldin, and Lawrence F. Katz (2010) The Race between Education and Technology. Belknap Press.

Sunday, July 27, 2014

国際経済学I, 第15回, 2014

試験と採点が終わった開放感がたまらない.研究を専らとする時間を大切にしたい.(8月下旬はワークショップも予定中.髪型的につらい季節だが耐えたい.) 皆さんごきげんよう.
  • 受験者137人, 平均74.9, 中央値75, 標準偏差22.28.
  • 素点の分布は以下の通り.90点以上が28人,80-89点が28人であった.期末試験を受けて60点に満たない人は25人.
  • GPAと出席数以外に,期末の成績に影響しそうな変数は見当たらない. 
    • 講義内容の理解や授業参加というより,基礎学力が強めに反映されたかもしれない.
  • 最終的な成績分布は以下の通り.中間試験が平易だった分,好成績に落ち着いた学生は多い.昨年度よりも穏当だ.ただし,理由なく6回以上欠席している人はどんなに試験の結果が良くても不可にした.
  • 最終的な成績も,GPAと出席数以外に有意な関係を持つ変数は見当たらない.
  • 追試や救済は行わない.
間違いの多かった問題の略説 (追記: 役目を終えたので削除しました.)

今回のテストに限らず,「お金が回るようになる」という古いケインジアン的修辞を使う学生がたまにいるのが気になる.曖昧模糊としていながらなんとなくわかったつもりになれる危険な表現だと思う.