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Monday, August 8, 2016

社会経済統計学I, 講評, 2016

レポートの提出ありがとうございました.様々なテーマで創意工夫を凝らしているようで面白く拝読しました.中にはいい卒論につながりそうなものもありました.
メールで簡単なコメントを返信しておきましたのでご覧ください.

[重要] ファイルをうまく送信できておらず,レポートを確認できない人が2人います
成績登録期限までに返信に気づいてください….

レポートの内容面以外で,改善すべき気になるところを思いつくままに書き留めておきます.(というより愚痴を言って採点のストレス解消をします.)
  • 課題に応えていない.
    • 標本をExcelでいじってみよう,という趣旨の課題ですが,データもへったくれもない確率日記みたいなレポートが散見されました.こうした的外れなものは採点・評価しようがなくたいていは不可ないし可になっています.
    • 仮説を持て,とわざわざ指定しているのに,仮説がどこにも見当たらない人も多かったです.要求されていることから逃げては低い評価しか得られません.
  • 参考文献.
    • 参考文献は,先行研究を整理して自身のオリジナリティを明確にする上で不可欠なものです.また,研究成果の再現可能性を担保する意味でも重要です.ところが,参考文献自体がまったくない人や,URLだけ書くなど引用の作法が怪しい人がほとんどでした.引用の仕方はググれと言いましたが.
  • 孫引き.
    • 何らかのウェブサイトから取ってきたグラフを使っている人も多くいました.そのウェブサイト自身がどこからデータを取ってきたのかを見て,オリジナルの統計に直接アクセスするようにしてください.
    • テーマによって一次情報が二次情報よりも優れているとは限りませんが,より情報源に近い方から当たるのが望ましいと思います.
      • こうした情報の階層構造を理解していない学生がいる予感もするので,どこかでちゃんと情報ソースについて講義時間を割かねばならない気がしました.
  • 適切なグラフを選べていない.
    • クロスセクションのデータを折れ線グラフにして相関を読み取ろうとしている(しかも間違っている)ケースがけっこうありました.私も身に覚えがあるので大きな声ではいえませんが,散布図使いましょう.
  • 講義で学んだテクニックがまるで使われていない.
    • 記述統計もまとめろ,と念を押したのにほぼ全員が標準偏差すら書いてくれませんでした.半年かけて無駄な授業をした気さえします.
    • 一方で何人かは重回帰に取り組んでいろいろ考察を加えてくれました.よくがんばりました.
  • 時間を費やしていない.
    • 考えを巡らし試行錯誤する時間が不足しています.4月の最初の講義から課題を指定し,月1回程度リマインドし,分析には時間がかかることも周知し,締め切り1週間前ぐらいには出せるようにせよとも促しました.にもかかわらず,締め切り直前の数時間でしたやっつけ仕事のようなレポートが多く見られました.素人のにわか仕込みで通用するような生ぬるい授業はしていません.
    • 計画的に作業ができない人は学業でも仕事でも大成できないと思います.行動経済学の格好の研究対象というか…
  • 国語力が低い.
    • レポートは平均2ページ程度で,1ページしかないケースもけっこうありました.悲惨なものだとデータとグラフだけで文章さえありませんでした.とことん説明不足です.学術的なコミュニケーション能力が粗雑すぎます.
      • 私が普段読む学術論文は10~30ページが普通で,100ページ超えも珍しくありません.長いほど偉いわけではありませんが,問いや仮説の説明,その意義,先行研究のまとめ,用いるデータの説明,枠組みの説明,結果の説明と解釈,まとめ,など必要な項目を一通り書くだけで数ページはすぐ埋まるのではないでしょうか.
    • エコノメよりも先に国語を勉強した方がいいと思います.
  • 講義タイトルを間違えている.
    • 「社会経済統計学I」という長いタイトルではありますが,ここをあえて間違う不届き者がたくさんいました.曖昧なところを逐一調べる,という手間を惜しみすぎです.わからない言葉に出会ったら辞書をひく,という習慣さえない人なのだろう,と見下されてしまうことにもなるのでは.
今回悪質なコピペレポートが2件ありました.本人にメールで警告した上で不可としました.うんざりです.

個人的には今回初めてレポートによる成績評価を行いました.ソフトウェアを自分の手で動かす機会がないと統計学はまるで身につかないと思うからです(言うまでもなく講義に出席するだけで身につくわけがありません).ただ,レポートを書くという作業自体が学生には重荷のようでもありました.私が思うアカデミック・ライティングの常識がまったく通用せず,頭痛がしました.

学術論文はおろか論文に準ずるレポートもろくに読んだことがなければ,そもそもレポートを書きようがないのは仕方がない気もします.大学でレポートを書いてもろくにフィードバックはほとんどもらえず,どこがおかしくどうすれば改善できるのかもよくわからないのが普通です.たとえやる気があってもどうしていいかわからなければストレスが大きくうまく取り組めないのかもしれません.普通の大学生活を漫然と過ごしているだけではロジカルに書かれた小文を精読する機会がなさすぎるのではないでしょうか.夏休みを利用して,新書ぐらいは何冊か読んでいただきたいものです.

本来は大学がアカデミック・ライティングを教える機会を別に用意していればいいのでしょうが,そもそもまともな水準の学術論文を書いて(銃声)

Thursday, July 28, 2016

社会経済統計学I, 15, 2016

面倒くさくなって途中で更新が止まりましたが,今週でこの講義は終わりです.参加してくださったみなさんありがとうございました.あとはレポートをお待ちしています.

やったこと:
  • 統計学・計量経済学の入門レベルの内容を学んだ.
    • 記述統計 … データはばらつきが大事.ばらつきの程度を捉える標準偏差,2変数間のばらつき方の関連性を捉える相関係数,などの概念は押さえておきたい.ヒストグラムを使って分布の全体像を眺めることも大事.
    • 確率論 … 確率分布・確率密度関数の読み取り方を押さえておきたい.代表的な分布として正規分布だけでなく,二項分布やポワソン分布も応用例とともに紹介した.
    • 漸近理論 … 大数の法則と中心極限定理.ランダム・サンプリングしたものをたくさん集めることが大事.
    • 仮説検定 … 仮説は観察されるデータと整合的かどうか判断する.p値を(あらかじめ定めておいた)有意水準と比較すると簡単.平均値の差の検定はExcelでできる.
    • 回帰分析 … 重回帰での推定・検定を修行してもらいたい.Excelだと手間はかかるが一応できる.
  • その他,いくつか経済学の論文も題材に取り上げた.Sen, Heckman, Kahnemanなどノーベル賞受賞者の他,Piketty, Levitt, Fryer, といったより若いスターたちの研究も紹介した.
  • この講義をやり抜けば,入門レベルの計量経済学の教科書なら自力で読み通せるようになり,学術的な議論も読める範囲が広がるのではないか.
できなかったこと:
  • シラバスに書いた計画のうち,回帰診断,DID,データビジュアライゼーション,は無理だった.データの見せ方については補足スライドをアップしたものの,送られてくるレポートを見る限りあまり伝わっていないようである….その他所々省略したところもあった(条件付き期待値,タイプ2エラー,など).
  • Excelによる実装例も紹介するよう努めたが,パソ室での実習もしたかった.
  • 他の講義(統計学入門など)とどれだけ差別化できたかよくわからない.
  • 正直なところ大半の学生には難しすぎる内容であった.もっと履修人数を絞りたかった.

 レポートについて
  • 講義中に注意した通り,剽窃・盗用に注意してください.アカデミアでは重罪です. 他人の分析と自分の分析を区別し,自分自身の手と頭で成し遂げたことは何か意識してください.
  • じっくり考え地道に試行錯誤した形跡が認められれば評価します.分析自体が拙くとも,トライしたことを評価します.一方,講義中寝てばかりいたような人が2, 3時間で仕上げたようなクオリティのものは不可にします.また,レポートの趣旨を誤解してまったく別の課題に取り組んだ場合も不可にします.もちろん悪質なコピペレポートには単位を認定しません.
  • 特別な事情(忌引きや入院など)がない限り締め切りを1分でも過ぎたら読まずに不可とします.事情で提出が遅れそうであればその旨連絡してください.
  • ファイルの送信ミスや,件名や本文がない無礼なメールが散見されます.メールの使い方やエチケットぐらい調べてください.
今週末は出張のため反応が遅れるかもしれませんがご了承ください.きめ細かいサポートも無理です.

Thursday, April 21, 2016

社会経済統計学I, 1-2, 2016

新年度何かと慌ただしいですが,とりあえず更新.


今期から新しくこの講義を担当することになりました.私は統計の専門家ではありませんが,一定以上のスキルは持っているかと思いますのでご安心ください.前任者が何をやっていたかわかりませんが,私なりに大切だと思うことを教えます.

この講義はデータを使った議論について行けるようなリテラシーを身につけることが主眼です.また,統計学を使って経済問題に取り組む際に注意すべきポイントを学んでいきます.ちまたで流行のデータサイエンティストを養成するわけではありませんし,この講義を履修してもただちに就職に有利になるわけではありません.プログラムをどっさり書くような人でなくても有用な知見を伝授したいと思います.
高校までに学ぶ数学もふんだんに使いますので,履修する際は注意してください.講義では壺からボールを取り出したりします.MS Excelもある程度使う覚悟をしていてください.簡単ではありませんがこつこつ勉強しましょう.

講義では,記述統計,推測統計 ,といった統計学・エコノメのベーシックをざっくり学びます.単に数学的事実を確認するだけでなく,できるだけ経済学での応用例も紹介していきたいと思います.
ただし,講義でカバーできる範囲はそれほど多くありませんので,自分で別途教科書を読み進めることを強く勧めます.単位を取るためというより,自分の知性を磨くためにです.
ただし,学生に合ったレベルで面白くて信頼できるテキストはなかなかないので,背伸びして挑む必要があるかもしれません.

個人的には初めてパワポを使った講義をします.グラフはうまく板書できないし,板書だとペースが遅くなりがちだからです.しばらくこのスタイルを試します.

社会経済統計学IIは今年度不開講です.次年度開講するかどうかも未定です.さしあたり半期で完結する内容で講義計画を構想しています.(もし通年開講するなら,前期は理論中心,後期はExcelなどでの実践を中心にしたいと思います.)

現時点では,重回帰を卒論などで実戦投入できるようにすることを到達目標に据えています.ところがいざ教えるとなってようやく気づきましたが,OLSを理解するには高度な前提知識が必要です.急ぎ足ながらこうした知識を一つずつ乗り越えていく予定です.15回の講義でここまで行けるかあまり自信はありません.
もちろん単にExcelで近似線を引いたり,p値を見て最もらしいことを言ったりするだけならそれほど難しくはありません.しかしそうした表層的な理解は無意味どころかかえって有害にも思います.富士山の山頂にヘリコプターで行くよりも,8合目までで引き返したとしても自力で一歩ずつ登ろうとする経験の方が人生の糧になるのではないでしょうか.

教えることこそたくさんありますが,定義,定理,証明,を繰り返すような講義だと全滅するかと思いますので,適宜有名な論文を紹介して脱線したいと思います.さじ加減は実際講義を進めながら調整していきます.

講義内容
  • 概要
    • 数学を当たり前のように使うので注意.
    • ここ数十年で統計スキルへの需要は大きく変わっている.今のうちに学んでおくべき.
    • 成績はレポートの出来次第.
  • 統計学の仕事
    • スープの味見,に相当することを丁寧に考えていく.
  • missing women
    • 簡単な数字を用意するだけでも,説得力と含蓄がある議論ができる.
  • 数学の基本
    • 集合はベン図でイメージしよう.
    • Σはたし算.

本ブログでは,ありがたくも出席カードにいただいたコメントに対して,すべてではありませんが返答をします.コメントによっては講義中に取り上げることもあります.ご了承ください.教員の話を鵜呑みにせず批判的に聞くことは大切だと思います.どんどん疑問を持ちましょう.

コメントより
  • 「統計学は経済だけだと思っていたがいろいろな科目に使われていて驚き」
    • 使った者勝ちみたいなところもあります.
  • 「村上先生の統計学取っといてよかったーーーーーーー」
    • せやな.
  • 「とても難しいと思うが将来使えることだと思うので一生懸命ついて行けるよう努力したい」「数学は得意ではないがチャレンジしてみようと思う」
    • やる気に応えられるように私もがんばります.
  • 「データを使ったレポートや議論ができるようになりたい」「大切さがわかった」
    • 一生使える強みにできればいいですね.
  • 「久しぶりに数学やって楽しかった.丁寧に教えてくれてありがとう」
    • 楽しんで勉強していただければ私も嬉しいです.
  • 「とても数学が苦手なのでとても不安であるがついていきたい」
    • 現時点では7番目の講義資料までアップロードしています.軽く眺めてみて履修するかどうか決断されてはいかがでしょうか.講義内容の性格上,数学は避けて通れません.
    • どうにも乗り越えられない壁がある場合,図書館でなるべく簡単な数学の本を探して通読してみてください.
  • 「黒板ちょっと見づらい」「暗くて字が見えにくかった」
    • やはり.板書時は電気をつけるようにします.