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Tuesday, May 12, 2026

Gabaix 1999 QJEのMathematica

 数学が難しくてあまりちゃんと読まれていないと思われるGabaixのランダム成長理論.成長率が都市規模に依存しない (Gibrat) とき,都市規模分布がZipfになるというメッセージはある程度知られていると思われるが,Mathematicaでシミュレーションしてみよう.


1. reflected GBM

都市規模S_{it}が幾何ブラウン運動に従う

$$dS_{it}/S_{it} = \mu dt + \sigma dB_{it},$$

が,外生的な下限S_{min}で反射するとする.下限がないと分布が拡散し続け,定常分布を持たなくなってしまう.

パラメーターを設定する.ここがいまいちだとZipf係数は-1とけっこう乖離する.

mu = 0.001(* 期待成長率. zipfになるのはmu=0 *) 

sigma =  Sqrt[0.1] (* SD. 少し大きめにして動きを激しくする. 下限にヒットして跳ね返す必要.実証はQJEの脚註17 *)

Smin = 1 (* 反射壁, 最小人口 *)

nCities = 1024 (* 都市数 *)

tMax = 4096 (* シミュレーション期間 *)

dt = 1 (* time step *)

ブラウン運動をMapで書く.

nextSize[s_List] := 

 Map[Max[Smin, #] &, 

  s*Exp[(mu - sigma^2/2) dt + sigma Sqrt[dt]*

      RandomVariate[NormalDistribution[0, 1], nCities]]]

あとは走らせるだけ.

initialSizes = ConstantArray[1.1, nCities] (* 初期の人口. Sminの近くに設定. *);

SeedRandom["gabaix"] (* mathematicaは文字列でも乱数のseedを設定できる *)

history = NestList[nextSize, initialSizes, tMax]; 

finalSizes = Last@history;

finalSizesNorm = finalSizes / Mean@finalSizes (* 基準化 *)

プロットは

sortedSizes = ReverseSort@finalSizesNorm;

ranks = Range@nCities;

 ListLogLogPlot[Transpose@{sortedSizes, ranks - 1/2}, 

  AxesLabel -> {"log Pop", "log Rank (-1/2)"}, 

  PlotLabel -> "Zipf Plot at T=" <> ToString@tMax, 

  PlotStyle -> PointSize[Medium]PlotFit -> "Linear"



無理矢理反射させているので,bottomで崖のようになっていることが確認できる.

2. heterogeneous cities

命題2は,muやsigmaが異なっていても,それぞれGibrat則を満たしていれば集計したときZipf則が成り立つ,というものである.ここではsigmaが大きい群と小さい群の2グループに分けてみよう.

(* 2グループ *)

nCities1 = 500; nCities2 = 500;

sigma1 = 1; sigma2 = 1;

mu1 = 0.05; mu2 = 0.20; 

(*シミュレーション関数 (幾何ブラウン運動+反映壁) *)

simulateZipf[nCities_, tMax_, sigma_, sMin_] := 

 Module[{mu = -sigma^2/2, nextSize, initialSizes},

  nextSize[s_List] := 

   Map[Max[sMin, #] &, 

    s*Exp[mu + sigma*RandomVariate[NormalDistribution[0, 1], nCities]]];

  initialSizes = ConstantArray[sMin, nCities];

  Last[NestList[nextSize, initialSizes, tMax]]]

SeedRandom["eeckhout"] (* seed *)

(*グループ1 *)

group1 = simulateZipf[nCities1, tMax, mu1, sigma1];

(*グループ2*)

group2 = simulateZipf[nCities2, tMax, mu2, sigma2];

(*合計(集計)*)

aggregate = Join[group1, group2]; 

あとはプロット

zipfData[list_] := Transpose[{Range[Length@list] - 1/2, ReverseSort@list}]

ListLogLogPlot[{zipfData[group1], zipfData[group2], 

  zipfData[aggregate]}, 

 PlotLegends -> {"Group 1 (sigma=0.05)", "Group 2 (sigma=0.20)", 

   "Aggregated"}, AxesLabel -> {"log Rank", "log Pop"}, 

 PlotStyle -> {Automatic, Automatic, {Black, Thick}}, 

 PlotLabel -> "Aggregation of Heterogeneous Cities"]




3. Kesten Processes

Zipf法則自体はもっとシンプルなKesten過程でもいける (Appendix 1).

$$S_{t+1} = \gamma_{t+1} S_{t} + \epsilon_{t+1}.$$

パラメーターの設定

(*gamma は期待値が1に近いがわずかに下回るのが定常性を得る上で重要 *)

gammasigma = 0.1

gammamu = - gammasigma^2/1.25

epsilonConst = 0.01; (*加法的ショック(最小規模を支える)*)

nCities = 1024 (* 都市数 *)

tMax = 4096 (* シミュレーション期間 *)

gammaDist = LogNormalDistribution[gammamu, gammasigma];

Mean@gammaDist (* 期待値0.997004 *)

遷移を定義する:

kestenStep[s_List] := RandomVariate[gammaDist, nCities]*s + epsilonConst

シミュレーションの実行

initialSizes = ConstantArray[1.1, nCities];

SeedRandom["pareto"]

history = NestList[kestenStep, initialSizes, tMax];

finalSizes = Last@history;

finalSizesNorm = finalSizes / Mean@finalSizes;

同様にプロットすると,


毎期epsilonを加えてなめらかにbottomが形成されるので崖はなくなるし,収束も早めだが,上の例はconcaveっぽい感じで係数-1.066ぐらい (SE=.022なので-1は棄却).


Reference

Gabaix, Xavier. "Zipf's law for cities: an explanation." The Quarterly journal of Economics 114.3 (1999): 739-767.

Sunday, June 12, 2022

2022都市経済学講義メモ4

最近,Consumer Cityは「趣都」と訳すといいのでは,と思いついた.

それはともかく,講義メモの続き. 15回の講義で,用意したものすべてできなさそうな予感がしてきた. 

5. segregation and urban poor

日本だとあまり意識しないけど,segregation (特に人種) は都市の重要な問題である(が個人的には詳しくない).

5.1. agent-based Schelling

昔QuantEconを見ながらSchellingのsegregationを計算したことがあったので,それをさらっと紹介した.

ちょっとした差別意識があると,数世代後には大きな断絶ができることがある,という話.

人は集団への帰属意識を見出しやすいことや (Hargreaves Heap and Zizzo 2009だと,自分と違う集団を信頼しない),差別意識にもtipping pointがあることも紹介した.


5.2. urban poor 

貧困層が都市内で固まりスラムができる,といった問題も紹介.スラムの問題は社会学に学ぶことも多いと思われる (白波瀬 2017など).

Matt Kahnが最近書いていた本で紹介されていたけど,貧困地域は物価も高いそうだ.万引のリスクがあるから (+空間価格差別) とのこと.そういえば県内某貧困層向けスーパーは品質の割に高いよなーと思い当たるフシがあった.

ただし,モビリティ低い貧困層向けに独占力を行使する,というストーリーはDellaVigna and Gentzkow (2019) を思い起こすとなんとなく合わない気がする.

講義ではHeblich et al. (2021) を紹介した.汚染地域に貧困層が集まって,汚染が解消された後もそれが続くとのこと.


5.3. affordable housing

公営住宅やレント・コントロールなど,福祉政策としての住宅政策があることを紹介.ただし日本だと公営住宅は乏しく,家賃補助もほぼ普及していない.

価格を歪めるような政策はそもそも正当化が容易ではないことも,よくある効用最大化モデルで見ておいた.もちろん,現実が完全競争市場ではないこと,効率性がすべてではないことも注意すべきである.


5.4. CMTO

Chettyらの一連の研究では,internegerational mobilityに地域間変動がかなりあることが指摘されている (Opportunity Atlas).さらにChettyはいい場所に移住させてどうなるか評価しようとしているようだ(CMTO).

そういうわけで,MTO, CMTOを簡単に紹介しておいた.貧困や格差に経済学ではこう取り組むことができる,という一例である.

恵まれない人は,好きで希望のない場所に住んでいるわけじゃない.いい場所に住居を確保する能力 (ケイパビリティの一種?) が欠けていてそれを比較的低コストで埋められるなら,いい政策になると思われる.

とはいえ,Opportunity Atlasで推定されるmobilityは,次世代にも外挿できるのかが気になった.いい場所にはいい学校があったのかもしれないけれど,現代の子どもを移住させてもいい先生やいい校長はとっくの昔にいなくなっていていい設備は陳腐化しているかもしれない.(論文読んでないので未確認)


貧困層を富裕地に移動させるCMTOとは逆に,「中の上」ぐらいを貧困地域に移動させる例が,Cummingsら (2002)で報告されている.いわく,移住してきた人は住居の周りに「フェンス」を張って,周りとはほぼ交流しなかったそうだ.砂漠にオアシスはできたけど緑化はしなかったという感じ.social networkが形成されるインセンティブもよく考えないと,CMTOは思い通りに機能しないかもしれない.


Haltiwangerら(2020)のHOPE VIプロジェクトだと,移住によるいい効果は雇用機会改善 (空間ミスマッチ緩和?) によるようである.子供の育つ環境も大事だけど,親の経済的な安定性を高めることも重要な気がする.


Reference

Cummings, Jean L., Denise DiPasquale, and Matthew E. Kahn. "Measuring the consequences of promoting inner city homeownership." Journal of Housing Economics 11.4 (2002): 330-359.

DellaVigna, Stefano, and Matthew Gentzkow. "Uniform pricing in us retail chains." The Quarterly Journal of Economics 134.4 (2019): 2011-2084.

Haltiwanger, John C., et al. The Children of HOPE VI Demolitions: National Evidence on Labor Market Outcomes. No. w28157. National Bureau of Economic Research, 2020.

Hargreaves Heap, Shaun P., and Daniel John Zizzo. "The value of groups." American Economic Review 99.1 (2009): 295-323.

Heblich, Stephan, Alex Trew, and Yanos Zylberberg. "East-side story: Historical pollution and persistent neighborhood sorting." Journal of Political Economy 129.5 (2021): 1508-1552.

白波瀬 達也 (2007) 『貧困と地域 - あいりん地区から見る高齢化と孤立死』 中央公論新社


Monday, January 27, 2020

資本減耗率の地域間格差と沖縄の経済成長


沖縄の成長がなぜいまいちか,は従来から様々な議論がある.本エントリは,資本減耗率がその一因ではないか,という話.(というかざっくばらんなアイディアメモ.)

私は以前から,沖縄は資本減耗率が他地域よりも高いのでは,という漠然とした予感を持っていた.台風は多く,湿気もひどい.町中の建物は那覇の都市部を除きボロボロだし,車は定期的に洗車しないと塩害でやられてしまう.沖縄は持ち家比率が低いが,所得・資産が少なく借入制約がキツいという理由もあろうが,メンテナンスのコストが高く耐用年数が短い,という事情もあるかもしれない.


Hsiang and Jina (2015 AER p&p)では,熱帯のサイクロン(台風含む)が資本減耗率に影響し,それが経済成長率に影響することを指摘している.

Hsiang & Jina 2015, Figure 1.
上図は論文の図1である.赤い部分ほどサイクロンの平均風速が高い地域になり,沖縄は赤い部分に含まれる.この図を見るとと,サイクロン・ドリブンで減耗率が高くなり,資本蓄積のスピードを遅らせそうな予感がしてくる.
雪国は雪国で資本減耗率が上がるというより資本稼働率が低くなりそうな気もするが,地理的条件が低成長に寄与する一つのチャンネルが何やら見えてくる.

地域レベルの資本ストックのデータを作るときには,減耗率の地域間格差は考慮されていない.たとえばRIETIのR-JIPデータベースだと,全国版と同じ(産業別)減耗率を仮定している模様(詳細未確認).
R-JIP 2017で,実質資本ストック/マンアワーをプロットすると,下図の通り.
都道府県別のK/L. 2012年,産業計.
全国が真ん中あたりにある黒棒で,沖縄は上から3番目のオレンジ色だ.
沖縄が全国3位の資本豊富地域とは考えにくいよね…

R-JIPを使って都道府県別に成長会計をやると,沖縄はTFP成長の寄与度が際だって低くなるらしい
あまりに極端なので計測エラーではないかと受け止めていたが,エラーの源泉は資本減耗を過小評価し資本ストック成長を過大評価しているため,と考えるとある程度しっくりくるかもしれない.

Reference
  • Hsiang, Solomon M., and Amir S. Jina. 2015. "Geography, Depreciation, and Growth." American Economic Review, 105 (5): 252-56.
  • 徳井丞次他 (2013) 「都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」RIETI Discussion Paper Series 13-J-037.

Monday, April 30, 2018

国勢調査における「不詳」と沖縄

最新の国勢調査で,人口移動に関するデータを眺めている.今回のエントリは,沖縄には「不詳」に分類されている輩が多すぎる,という話.

総務省国勢調査では5年前の居住地についての情報が集められている.ところが,5年前の居住地が「不詳」となっている人も少なくない.「不詳」の正体は何なのだろうか.

小池・山内 (2014) では, 2010年の国勢調査で「不詳」についてレポートしている.
  • 2005年以前と比べて「不詳」が急増している.
  • 地域,年齢,就業状態によって「不詳」の割合が異なる.
    • 大都市圏で高い.沖縄や高知も高い.
    • 若者は高い.
    • 分類不能の産業,分類不能の職業,で高い.
といったことが指摘されている.

以下2015年の国勢調査で不詳について見ていく.特に何を明らかにするわけでもなく,どこに不詳が集まっているかを眺めるだけ.

1. 都道府県レベル
47都道府県別に不詳割合を計算する.
現住地による5年前の常住地について,
総数(常住者) = 現住所 + 自県内 + 転入 + 5年前の常住市区町村「不詳」 + 移動状況「不詳」
という関係が成り立つ.ここでは右辺にある2つの「不詳」の合計が,左辺に占める割合を「不詳のシェア」と呼ぼう.なおサイズ的には,後者の移動状況自体が不詳な者が多い.
計算結果が以下の図である.

  • 沖縄は東京大阪に次ぐ全国3位の13.7%である. なお,全国平均は8.8%である.
都会だとオートロックで調査員が入れないマンションがたくさんあり詳細不明,という人がたくさんいてもなんとなく納得できる.しかし沖縄はそうした事情だけでは説明できない何かがありそうな気がする.

2. 市町村レベル
市町村レベルのデータでも同様に不詳シェアを計算する.市町村の場合,現住地による5年前の常住地について,
総数(常住者) = 現住所 + 自市区町村内 + 自市内他区 + 県内他市区町村 + 他県 + 国外 + 5年前の常住市区町村「不詳」 + 移動状況「不詳」
= 5年前の常住地による人口総数 + 転入 - 転出 + 5年前の常住市区町村「不詳」 + 移動状況「不詳」 ,
が成り立つ.ここでも,不詳2つの和が左辺の常住者総数に占める割合を不詳シェアとして計算した.

全国の市区町村でヒストグラムを作ると以下の通り.


薄くて見えにくいやつが沖縄県内41市町村の分布.全国と極端に変わった気配はないようにも見えるが,全国よりもシェアが高い地域が多いようにも見える.

沖縄県内の各市町村について見る(下図)と,都市部に不詳が集中していることがわかる.
  • トップは那覇市でなく沖縄市であった.実に4人に1人(24.7%)が不詳
  • 島嶼部はおおむね低い傾向にあるが,竹富町がけっこう高い.
本島にあっても,「誰誰さんは○○家の××」 みたいな話がよく出てくるような小さい町村は不詳が少ない傾向にある.
図2 県内市町村別の不詳のシェア.

図3 不詳シェアの地図(やっつけ)

3. 外国人?
不詳というと,外国人が多いせいではないか,と疑う人がいるかもしれない.沖縄市,宜野湾市,北谷町など米軍基地が近そうな場所で不詳が多いように見えるのも気になる.

そこで,「推計人口」から2015年10月1日時点での総人口のうち,外国人が占めるシェアを計算し,不詳との相関を見た(下図).
図4 外国人が多くても不詳は増えないかも.
 外国人の割合が高い市町村であっても,不詳のシェアが大きくなるとは限らないようである.
不法入国がどれだけあるかは知りようがないものの,外国人が多いコミュニティでは国勢調査の精度が落ちる,とは少なくとも県内に限っては言えない

4. 人口の流動性?
小池・山内(2014)によると,人口移動の活発な地域ほど不詳割合が高くなることが知られているそうだ.東京大阪のような都市部で不詳が急増するのはそのせいかもしれない.沖縄ではどうだろうか.

次のように人口のモビリティの指標を定義する.
モビリティ =(転入 + 転出) / (常住者 - 不詳)
分子は純転入でなく,グロスの人口移動を捉えている.
作成したモビリティの指標と不詳シェアの相関を見たのが次の図.
図5 人口の流動性と不詳は関係なさそう.
小池・山内(2014)と違って,移住が活発な地域ほど不詳が増える傾向は見られない
むしろ負相関に見えるのは,沖縄の場合,不詳が少ない島嶼部でモビリティが高い傾向があるからである.しかし島嶼部を除いたサンプルで見ても,依然として人口移動のボリュームと不詳にはあまり関係がなさそうであった.

5. まとめ
沖縄は全国と比べて5年前の居住地が不詳の人たちが多いようである.不詳は県内都市部に広く分布しているようであるが,それ以上の特徴はすぐにはわからない.
不詳となる原因はいくつか考えられるが,外国人が多い地域,転入・転出が多く人の移動が流動的な地域,という説明だけでは不十分そうである.アンダーグラウンドに生きる人たちや,統計調査に非協力的な人たちが他府県よりも多めに存在しているのかもしれない.

なお,若年は不詳になりやすいこともあり,若年が多い地域は不詳シェアも高い.とはいえ,説明できる変動はそれほど大きくない.

結局謎のままだが,とりあえずこのへんで.

Reference
  • 小池司朗・山内昌和 (2014) 「2010年の国勢調査における「不詳」の発生状況: 5年前の居住地を中心に」人口問題研究 70-3(2014.9)pp.325~338

Friday, August 7, 2015

地域開発論, 2015年

非常勤がだいたい一段落した.
  • 今年度縁あって自分の専門領域に近い講義内容を担当することとなった.一連のliteratureを体系的に眺め直した経験は,自分の研究にもよい影響をもたらしたはずだ.ただ,学習しにくい雑然とした講義だったかもしれない.自分が学生の立場なら履修しないかもしれないと思うと,出席も取っていないのに毎朝参加してくれた学生たちに頭が上がらない.
  • 琉大生のペーパーテスト能力を過信していた.素点だとほぼ全員良以下,ってのはさすがに鬼すぎた模様.平均90点ぐらいのつもりで作っていたのだけど誰も信じてくれなさそうだ.常勤の講義と違ってあまり学生のリアクションを確認せずにおいたが,コミュニケーションをサボると不幸が起こる.普段の受講態度がとても真面目で熱心に見えたこともあって油断した.
    • 非常勤は,学生の育成にコミットするインセンティブが常勤に比べて低い.intrinsicな動機(と高度な専門性)をもってしっかり授業をする非常勤の方はとても貴重だと思ったし,教員の人事・給与をめぐるインセンティブ設計って本質的に大事だとも思った.
      • 私はほとんどgift giving(≒余計なお世話)のつもりでやっていました.
  • 自動車通勤というものをはじめて経験した.new urban economicsモデルは正しい.
  • 一般に地域経済系の講義は,理論と実証をまともに修めてすらいないアマチュアが自分勝手な「学問」を教える場になりがちだ.そうしたいかがわしい講義と差別化することにこだわりすぎた気がする.もう少し淡々と講義できればよりよいと思った.

このblogをチェックしている人がどれだけいるか不明だが,試験を少し解説しておく.

  • 基盤産業モデル

 このモデルには,「雇用増→人口増」と「人口増→雇用増」の2つの効果が入っている.これらは互いに増幅し合う.話は単純だが,この連鎖的メカニズムをちゃんと答えられた人は数人しかいなかった.

人口は
$N = \frac{a+b(c+L_A)}{1-bd}$
と解ける.$a$が増えたらどうなるの?という質問は,$\mathrm{d} N / \mathrm{d} a = 1/(1-bd) > 0$, を考えれば良い.微分をしなくても,分子を見れば$a$が増えれば$N$が増えるであろうことはすぐわかるはず.$L_B$についても同様.
$a$が増えた以上に人口が増える($\mathrm{d} N / \mathrm{d} a >1$)のは,人口増→雇用増→人口増→雇用増→…,と連鎖するからだ.
$L_B$は,求めた$N$を$L_B=c+dN$に代入すればよい.
(経済数学って必修だよね? 素朴な連立方程式すら解こうとしない人多すぎね?)

このモデルを適当に拡張すると,直感に反するような結果も出てくる.テストで出した拡張モデルでは,失業率が高まると人口が増えて雇用量は変化しない,という不思議な結果が得られる.当てずっぽうな解答では正解できないはず.
ただし,このモデル自体が変ではあるので,結果の現実的妥当性までは問わなかった.

高齢者の地方移住支援,というストーリーは実際に「日本版CCRC」の一環として動き出しつつあるらしい.(link: まち・ひと・しごと創生本部)


  • 都市システムモデル

基本的には,内点解の条件である, $U(L_U) = U_R$, を満たす点に着目しながら考えればよい.移住しても効用が高まらないのだから,誰も移住するインセンティブはなく,均衡と呼べる.
カタストロフィだけ異常に正答率が高かったのがなんだかツボ.

設問が少しぼんやりしていて申し訳なくも思うが,正確性を期すとかえって難解になってしまうもので,勘弁してほしい.


  • 全体的な雑感

「一を聞いて十を知る」という俚諺がある.10通り考えるかどうかはともかく,Aを一つ教わったら,それを一般化すればA'になり具体例としてA''になることも,BやCが演繹・類推できることも,DやEではないことも,Aの前提条件F, GのうちどれがAを本質的に支えているのかも,頭の中でひと通り検討するのが普通ではないのだろうか?
教わったことはトレースできるけどその応用も批判もできない,というのは寂しすぎるぜ.


はあーーー,台風ってなんで洗車した直後に来るんでしょう.

Tuesday, November 11, 2014

シンポジウムポスター

今年度の応用地域学会はァーッどろろろろろろろ…(ドラムロール)…じゃーん!
沖縄!

大会ウェブサイト
    https://sites.google.com/site/arsc2014naha/

地元ピープルなので,大会実行委員とプロコミの大任を担っております.
大会参加申し込みは今週末の,11月15日締め切りです.お忘れなきよう.
沖縄もそろそろ全裸だと肌寒い季節です.天気情報を見ながら準備してください.

シンポジウムのポスターも自給しています.最終版は地元の新聞にも掲載されるようですが,このブログではほとんど無害な没バージョンを公開します.せっかく作ったので.



Thursday, May 30, 2013

Herfindahl-Hirschman index in Okinawa

沖縄県市町村民所得(cf. 22年度沖縄県市町村民所得)では,市町村レベルで産業別NDPのデータが利用できる.このエントリではHerfindahl indexを計算し、結果を眺める.

セクター$s$のHHI ($= H^s$)の定義は,
\[H^s := \frac{1}{R} \sum_{r=1}^R \lambda_r \left( \frac{\lambda_r^s}{\lambda_r} \right)^2 ,\] ただし
  • $R$: # of regions (欠損値がなければ$R=41$市町村),
  • $s$: sectorのインデックス,
  • $r$: regionのインデックス,
  • $\lambda$: シェア.
    • $\lambda_r^s := \mathrm{NDP}_r^s / (\sum_r \mathrm{NDP}_r^s)$,
    • $\lambda_r := \sum_s \lambda_r^s$.
また,欠損値は面倒くさいので省いた.

$H^s$は$(0,1]$の値を取り,大きいほど特定の空間に経済活動が集中していることを意味する.解釈上の問題もいくつかはらんでいるのだが,手軽に計算できるので他の長大な計算の合間にとりあえずやってみたという次第である.

計算結果をまずは全産業で眺めてみよう:
出典: 沖縄県「市町村民所得」
  • 農林水産業や鉱業は,他の産業に比べてHHIが高い! 特に林業は名護と国頭でシェア6割を達成しているため,ずば抜けて高い値を取っている.
    • 収穫一定・完全競争部門のほうが集積している,とナイーブに解釈することはできないものの…first natureの強さを実感する.

次に農林水産業・鉱業を除いて作図し直した.
出典: 沖縄県「市町村民所得」
  • 製造業,情報通信業,生活インフラ,のHHIが高め.
    • 製造業は那覇市よりも西原,浦添,糸満,といった那覇都市雇用圏の郊外エリアに集中している.那覇都市雇用圏以外では,コザ,うるま,名護,の存在感があるが,これらは県を挙げて企業集積に資源を費やしているエリアでもある.
      • 西原は琉大も近いし那覇も近いし土地も安いしある程度社会インフラが充実している,というアドバンテージがあるのだろう.沖縄で最も製造業のNDPが高い行政区域となっている.
  • 金融や情報通信はやはり那覇市に集中している. HHIも相対的には高め.
  • 島嶼部では政府サービス生産者がNDPの主要部分を占めている.
    • たとえば渡名喜村のNDPの約50%は政府サービス生産者が生み出している.すごい.

那覇という中心地に高度なサービス業が立地し,その周りで製造業が営まれ,peripheral areasで一次産業,という沖縄県の空間構造がおぼろげながら見えてきたというわけだ.

H13年からデータがあるので,時系列でHHIの推移を眺めることもできるはずだがこのエントリはここまで.

(MathJaxを導入してみた.携帯など閲覧環境によっては数式が一部表示されないかもしれない.)

Thursday, May 16, 2013

土地の価格

 Gini係数を求めた際には,住宅市場の混雑があるのではと推測していた.そこで住宅の"価格"が本当に上昇しているかどうかもう少し踏み込んで見てみよう,というエントリー.

 まず公示地価の時系列データを眺めると,(名目)地価は低下し続けている模様が見て取れる.
住宅地の価格水準の推移, 沖縄(黒)と全国(青), 2010年=100. 出典: 沖縄県「地価調査・地価公示」
商業地の価格水準の推移, 沖縄(黒)と全国(青), 2010年=100. 出典: 沖縄県「地価調査・地価公示」

 ただし地価は将来の情報もふんだんに含んでいるので,これだけを見て即座に地代やその流列が低下しているとは言えない.(そもそも地価は,土地のファンダメンタルな需給以上に,株式との裁定が効いてくる印象がある.)



 次にCPIを見てみた.
出典: 沖縄県「消費者物価指数年報」

CPIで見る住居価格の推移はどこか奇妙である.
  • 人口が増加している那覇市(青系統の線)ではゼロ年代には価格低下傾向にある.
  • 沖縄県全体(オレンジ系統の線)では上昇傾向.
    • なぜかリーマン・ショック後に上昇傾向に転じている.
  • 帰属家賃を除こうが除くまいが大差はない.
 那覇市では需要が増えているのに価格が低下していて,さらに,県では需要が減りそうなタイミングで価格が上昇しているわけで,なかなか奇妙である.


 そこで,住宅価格をCPI総合で割って,相対価格に直してみた.
出典: 沖縄県「消費者物価指数年報」
すると,那覇市も沖縄県も同じような挙動をしてしていることが見て取れるようになった.2000年前後は那覇市のCPIが県よりも割高なのである.
  • 相対価格で見ると,長い目で見れば右上がりのトレンドが読み取れる.住宅は他の財・サービスに比べて割高になっているのである.
  • しかし「都市部に集積」という仮説と整合的であるとは即断できない.
    • 那覇市だけなら「集積 → 住宅需要up → 住宅価格up」と自然な流れが見て取れる(後件肯定の誤謬に注意は必要).
    • ところが「都市部への集積」は「沖縄県全体での住宅需要増加」を必ずしも意味しない.
    • 都市化以外で,右上がりのトレンドを説明する要因が何かを考える必要が出てきたというわけだ.また,住宅需要以外のファクターに及んでいる都市化の影響について考慮する必要もある.(めんどくせー)
  • 2007-2008年頃に,リーマン・ショックの影響が見て取れるようになった.「不況 → 住宅需要down → 住宅価格down」が生じたというところだろうか.景気回復に伴って住宅価格も上昇傾向にある.
    • 2008年以降の上昇は,消費税増税を織り込んだ効果もあるかもしれない.
    • 「不況 → 公共事業増・低金利 → 住宅供給増 → 住宅価格down」という経路もありえるがもう少し吟味が必要.
      • 都道府県レベルで建築資材などの資本財価格を見るにはどうしたらいいんだろうか.
    • ただ住宅の需給以前に,CPI総合のほうで大きな動き(2%程度)があって,そこの原因を掘り下げて考える方が自然かもしれない.

memo:
  • 世帯構成の動きも気になるけど,国勢調査って解読するだけでも1ヶ月分ぐらいの労力を使う気がするので手が出ない…
  • 非定常時系列データの分析(しかも耐久財の)までは手が回らない…けどn<20の年次データで検定や予測ってハリボテ感あるよね.

Saturday, May 11, 2013

Gini coefficient

沖縄の空間構造を把握する第一歩として,市町村レベル(41地域)の全人口についてGini indexを計算してみた.
出典: 沖縄県「市町村別推計人口」

 微妙な変化であるものの,10年近く上昇傾向にある.
  • 那覇およびその通勤圏で人口が増加している.
  • コザ,北谷,名護も増加傾向.
  • 北部や島嶼部は人口減少ぎみ.
都市化がじわじわ進んでいることが推察される.


残念ながら,都市化の進展はあまりよい帰結をもたらしていないかもしれない.
沖縄の県内総支出の内訳を見ると,集積の不経済にがっつり資源を浪費している予感がする.
出典: 沖縄県「県民経済計算」
  • 消費(右軸, GDP比)が低迷している一方で,住宅に対する支出がじわりと拡大している.
    • 交通・通信費は目立った増加こそしていないようだ.
      • 自動車用ガソリン価格は10年ほど上昇傾向にある.
    • 沖縄県は一人あたり実質GDPも長年停滞している.

集積のメリットを生かせないまま,住宅市場の混雑という集積のデメリットを被っているように思えるのである.(結論を下すにはもっと詳細な検討が必要である.)


いかんせん10年近く沖縄を離れていたので,知らないことばかりである.計量のプロではないが,沖縄の主要な統計指標を今後とも注視していく…予定.