Gini係数を求めた際には,住宅市場の混雑があるのではと推測していた.そこで住宅の"価格"が本当に上昇しているかどうかもう少し踏み込んで見てみよう,というエントリー.
まず公示地価の時系列データを眺めると,(名目)地価は低下し続けている模様が見て取れる.
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住宅地の価格水準の推移, 沖縄(黒)と全国(青), 2010年=100. 出典: 沖縄県「地価調査・地価公示」 |
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商業地の価格水準の推移, 沖縄(黒)と全国(青), 2010年=100. 出典: 沖縄県「地価調査・地価公示」 |
ただし地価は将来の情報もふんだんに含んでいるので,これだけを見て即座に地代やその流列が低下しているとは言えない.(そもそも地価は,土地のファンダメンタルな需給以上に,株式との裁定が効いてくる印象がある.)
次にCPIを見てみた.
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出典: 沖縄県「消費者物価指数年報」 |
CPIで見る住居価格の推移はどこか奇妙である.
- 人口が増加している那覇市(青系統の線)ではゼロ年代には価格低下傾向にある.
- 沖縄県全体(オレンジ系統の線)では上昇傾向.
- なぜかリーマン・ショック後に上昇傾向に転じている.
- 帰属家賃を除こうが除くまいが大差はない.
那覇市では需要が増えているのに価格が低下していて,さらに,県では需要が減りそうなタイミングで価格が上昇しているわけで,なかなか奇妙である.
そこで,住宅価格をCPI総合で割って,相対価格に直してみた.
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出典: 沖縄県「消費者物価指数年報」 |
すると,那覇市も沖縄県も同じような挙動をしてしていることが見て取れるようになった.2000年前後は那覇市のCPIが県よりも割高なのである.
- 相対価格で見ると,長い目で見れば右上がりのトレンドが読み取れる.住宅は他の財・サービスに比べて割高になっているのである.
- しかし「都市部に集積」という仮説と整合的であるとは即断できない.
- 那覇市だけなら「集積 → 住宅需要up → 住宅価格up」と自然な流れが見て取れる(後件肯定の誤謬に注意は必要).
- ところが「都市部への集積」は「沖縄県全体での住宅需要増加」を必ずしも意味しない.
- 都市化以外で,右上がりのトレンドを説明する要因が何かを考える必要が出てきたというわけだ.また,住宅需要以外のファクターに及んでいる都市化の影響について考慮する必要もある.(めんどくせー)
- 2007-2008年頃に,リーマン・ショックの影響が見て取れるようになった.「不況 → 住宅需要down → 住宅価格down」が生じたというところだろうか.景気回復に伴って住宅価格も上昇傾向にある.
- 2008年以降の上昇は,消費税増税を織り込んだ効果もあるかもしれない.
- 「不況 → 公共事業増・低金利 → 住宅供給増 → 住宅価格down」という経路もありえるがもう少し吟味が必要.
- 都道府県レベルで建築資材などの資本財価格を見るにはどうしたらいいんだろうか.
- ただ住宅の需給以前に,CPI総合のほうで大きな動き(2%程度)があって,そこの原因を掘り下げて考える方が自然かもしれない.
memo:
- 世帯構成の動きも気になるけど,国勢調査って解読するだけでも1ヶ月分ぐらいの労力を使う気がするので手が出ない…
- 非定常時系列データの分析(しかも耐久財の)までは手が回らない…けどn<20の年次データで検定や予測ってハリボテ感あるよね.
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