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Tuesday, May 12, 2026

JUE

都市・地域経済学のトップジャーナルであるJUEに論文を掲載していただきました.

Rainald Borck, Jun Oshiro, Yasuhiro Sato,

Property tax competition: A quantitative assessment,

Journal of Urban Economics,

Volume 153, 2026, 103861, 

ISSN 0094-1190,

https://doi.org/10.1016/j.jue.2026.103861.

(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S009411902600032X)

Abstract: We investigate which of four alternative taxation regimes often used in the public finance literature best approximates actual property taxation in Japan and Germany. To that end, we develop a model of property taxation and characterize equilibria under four alternative regimes: the Benthamite, rent-seeking, land-rent maximization, and tax harmonization regimes. We characterize possible sources of fiscal externalities in each regime. We then quantify the effects of switching from the observed tax system to each of the four regimes in Japan and Germany. We find that the Benthamite or rent-seeking regime best approximates the Japanese system, whereas the tax harmonization regime does so for Germany. We also quantify the welfare effects of switching to the different regimes.

Keywords: Property taxes; Tax competition; Efficiency


Wednesday, April 2, 2025

有人国境離島法に基づく離島振興政策の効果検証

 琉球大学島嶼地域科学研究所の査読誌,Okinawan Journal of Island Studiesで特集号のゲスト・エディタを務めました.その縁で私も1つ書くことになり,実証論文を上梓しました.

Jun Oshiro (2025) "Assessing Development Policies for Inhabited Remote Islands on Borders" Okinawa Journal of Island Studies, 6, 51--79.

エディタの一人といっても,ブラインドの査読を経ての掲載です.

レプリケーション・ファイルは私のサイトにアップしています (元データは除く).


論文の大雑把なまとめ

ざっくりまとめると,有人国境離島法に基づく経済振興策に効果があったか見ました.結果,いい効果があるとは言えない,でした (効果ありと言えるだけの積極的な証拠が現時点ではない).という論文です.以下はその大雑把なまとめ.


背景など

同法は国土保全・安全保障を目的に2017年からスタートしています.

対象となる離島のうち,一部の島は「特定有人国境離島」として経済振興策が採られることとなりました.島により濃淡ありますが,交通費補助や漁業・観光振興などです.

有人国境離島の中で、振興策の有無という2群を比較しました(DID).

有人国境離島 (比較群, 黒字) と特定有人国境離島 (処置群, 赤字) の地理的配置は以下の通りです.

内閣府の資料より.

処置が地理的に固まっている (伊豆諸島を除き,指定地域内に処置群・比較群が混在することがない) のは懸念材料の一つです.あいにく本稿では島間のスピルオーバーには対処していません.

振興あり(SIB)となし(IB, 除く奄美小笠原沖縄)の人口を目で比べると,1島あたり人口のトレンドは平行に推移しているように見えます.処置後も大きく変わらず,この時点で政策効果があったとしても弱そうな予感がします.

Fig 1

目ではなく統計的に政策評価するにあたり,課題はいくつかあります.処置 (特定有人国境離島かどうか) 割付ルールが未公開,島のデータが乏しい,NもTも小さく検出力は限定的,などです.

今回はBorusyak, Jaravel, and Spiess (2024, REStud) のimputationアプローチでDIDして善処しようとしてます (限界はあり).いまどきのDIDはいろいろありますが,処置タイミングは全国一律であり,他のアプローチでもだいたい似た推定結果になりそうでした.

データは日本離島センターの『離島統計年鑑』 (2009--2022年) を利用しました.


結果など

素朴なTWFEによるDIDだと,政策効果は有意に負でした.といっても,厳しい状況の島だから処置がなされるという逆因果が疑われます.

そこで,指定地域レベルの線形トレンドをコントロールし,動学処置効果も許したDIDがメインの特定化です.おおむね有意ではないですが,ネガティブな影響にすら見えることがあります.

ウエイトなしで人口 (対数) への影響を見たのが以下のイベント・スタディ図です.

Fig 2a
事前トレンドも怪しくいまいち解釈が難しいところですが,怪しさについては人口が一定以下の島が影響していることがわかりました.たとえば2015年時点で人口20人以上かどうかで分けると以下の通りです (20人以上が左,20人未満が右).人口が多い場合は事前トレンドは悪くないように見えます.
この図は論文中にありません.

20人以下の島への効果が怪しげな雰囲気を生み出しており,20人以上いる島については比較的効果は小さい (それどころか2019, 2020年は負で有意) ようです.同様の傾向はサンプルを分ける閾値を10人以上, 5人以上などに変えても見られます.
そういうわけで,一定以上の人口規模の島については,国境離島の経済振興政策は人口に対してポジティブな効果を持ったとは言えない,というのが本稿の主要な結論になります.

では人口数十名以下の小さい離島には効果があるのかというと,私はそうとも言えないと思っています.こうした島は,処置前に急速に人口流出しており,処置する頃にはもう動けない人だけ数人残っているような状況のようです.人口下限がバインドするタイミングと処置タイミングがたまたま一致すると,処置が (いわば手遅れなのに) あたかも猛烈にいい効果をもたらした (人口減少を食い止めた) かのように見えてしまうせいだと思われます (下図のイメージ).


観光客数(対数)をアウトカムにした場合も,有意ではないけどネガティブな雰囲気がします.

Fig 3

研究潮流としては,国境離島を舞台にしたplace-based policyの政策評価,という位置づけになると思います.同時に,日本の安全保障政策を考える一つのヒントとなりえる貢献だと考えられます.


本研究は,なぜ・どういった理屈でこれといっていい効果が見えないのか,どうしたらもっと改善できるのか,といったことまでは明らかにできていません.論文中ではいくつかの可能性について議論を足しています.たとえば,PBPがいい効果を持つには,地元行政の政策遂行能力も重要だと思われますが,地方の離島だとそうしたキャパシティが不足している可能性があります.

なお,経済振興策は効果ないから早く止める・縮小すべき,ということまでは言っていません.もし政府が国境離島の振興・無人化阻止にコミットしきれていないことが問題であれば,政府はもっと経済振興策を拡充すべきだという議論をすることは可能だと思います.(私は拡充すべきとも言っていませんのであしからず.) ともあれ,離島の無人化を防ぐコストは現在投じられているコスト・エフォートよりも高い可能性があるとは考えられます.


論文には書いてませんが,消滅しそうな離島を維持する費用 (政策の経費だけでなく) がどれほどかというのは丁寧に検討する必要があると思いました (最適停止問題など).

消滅寸前の僻地に人を非ゼロにとどめる費用はこの研究では明らかにできていません (安全保障上の便益はいっそう定量化困難と思われますが).


国交省や内閣府の担当部署にインタビューにでも行けばよかったのでしょうけど,乳幼児複数の面倒を見ている中で出張は困難でした.そのうち機会があれば知らない島や行政にアクセスしてみたいと思います.

    
Reference
Borusyak, Kirill, Xavier Jaravel, and Jann Spiess. "Revisiting event-study designs: robust and efficient estimation." Review of Economic Studies 91.6 (2024): 3253-3285.

Wednesday, January 31, 2024

ReplacePartの中身, Mathematica

 Mathematicaで以前からこれが遅くなる原因ではないか…と思っていた部分を検証したのでメモ.

概要

Mathematicaの代入

expr /. {replace1 -> value1, replace2 -> value2, ...}

は,代入されるもの・代入するものが多いと遅くなる (vectorizationできるならすべき).

これの類推で,expr (ここでは行列) の一部を書き換える関数ReplacePart

    ReplacePart[expr, {{i1,j1} -> value1, {i2,j2} -> value2, ...}]

Tableを用いて

    ReplacePart[expr, Table[position[[i]] -> value[[i]], {i, Length@position}]]

のように書くのは遅くなる原因なのだろうか (7年ぐらい前に書いたコードはこれ).

MapThreadを使うとベクトルをベクトル表記のまま同じことができる:

    ReplacePart[expr, MapThread[Rule, {position, value}]]

ので,Tableを使う場合とMapThreadを使う場合で差が出るか見てみた.

結果

MapThreadのほうが1割ぐらい速かった.実行環境はやや古いiMacのMathematica14.0.0.

コード

以下コード.

pattern01[nrow_, ncol_, nreplace_, nDo_] := 

 Module[{timebegin, mat, replacePosition, newValue},

  (* record computational time *)

  timebegin = SessionTime[] ;

  (*"set seed"*)

  ParallelEvaluate[SeedRandom[1]] (* enable to be replicated *);

  Do[

   (* a matrix that I want replace with newValue *)

   mat = RandomReal[1, {nrow, ncol}];

   (* positions of mat to be replaced. 

   the number of replace is at most nreplace. *)

   replacePosition = 

    DeleteDuplicates@

     Transpose@{RandomInteger[{1, nrow}, nreplace], 

       RandomInteger[{1, ncol}, nreplace]};

   (* new values (taking Exp is optional) *)

   newValue = Exp@RandomReal[1, Length@replacePosition];(* 

   replacepart with Table *)

   mat = 

    ReplacePart[mat, 

     Table[replacePosition[[i]] -> newValue[[i]], {i, 

       Length@replacePosition}] ];,

   nDo] (* end of Do *);

   Print[ToString@(SessionTime[] - timebegin) <> " sec"];

  Return@DateString[]

  ]


pattern02[nrow_, ncol_, nreplace_, nDo_] := 

 Module[{timebegin, mat, replacePosition, newValue},

  (* record computational time *)

  timebegin = SessionTime[] ;

  (*"set seed"*)

  ParallelEvaluate[SeedRandom[1]] (* enable to be replicated *);

  Do[

   (* a matrix that I want replace with newValue *)

   mat = RandomReal[1, {nrow, ncol}];

   (* positions of mat to be replaced. 

   the number of replace is at most nreplace. *)

   replacePosition = 

    DeleteDuplicates@

     Transpose@{RandomInteger[{1, nrow}, nreplace], 

       RandomInteger[{1, ncol}, nreplace]};

   (* new values (taking Exp is optional) *)

   newValue = Exp@RandomReal[1, Length@replacePosition];(* 

   replacepart with MapThread *)

   mat = 

    ReplacePart[mat, MapThread[Rule, {replacePosition, newValue}] ];,

   nDo] (* end of Do *);

   Print[ToString@(SessionTime[] - timebegin) <> " sec"];

  Return@DateString[]

  ]

 

"Parallel Karnels" (* 使ってないけど *)

LaunchKernels[];

"run (execution requires about 20min)"

 (* 16384x128行列のうち最大1024箇所を書き換える,を65536回実行 *) 

pattern01[2^14, 2^7, 2^10, 2^16] 

(* 1420 sec *)

pattern02[2^14, 2^7, 2^10, 2^16] 

(* 1318 sec *)


その他

Parallelize@ReplacePartのようにして並列化はできなさそう.

Friday, November 25, 2022

沖縄経済史本の改訂版が出ます

『沖縄経済と業界発展』が売れ行き好調につき,第2版が若干の改訂を加えて出版されることになりました.ありがとうございます.

過去のブログ記事: 『沖縄経済と業界発展 ー歴史と展望ー』

ISBNが新しくなり,

978-4-906-68919-4

となっています.


私の担当箇所の差分は以下のようにマイナーなものです:

  • 初版で書いた部分は一切変更していません.
    • 加筆修正したい気持ちはありますが,それは別の機会にしたいと思います.
  • 2版では,初版では抜けていた,復帰後の議論を追記しています (60--62ページ).
    • これといって学術的新規性のある内容ではありません.
私の担当箇所以外でも,ところどころ追記やデータの更新が行われています.
もし初版を持っていないのであれば,改訂版をお買い求めいただければと思います.
12月には県内書店に,もう少し経つととAmazon.co.jpなどでも購入できるようになろうかと思います (電子では出ないと思われます).



Friday, March 19, 2021

『沖縄経済と業界発展 ー歴史と展望ー』

 沖縄の経済・経営史をまとめた本の1章を担当しました.どうぞご笑覧ください.

1950倶楽部編, 大城肇・與那原建・山内昌斗・大城淳 (2021) 『沖縄経済と業界発展ー歴史と展望ー』光文堂コミュニケーションズ

さっそく新聞でも紹介いただきました.

沖縄タイムス「県経済の歴史 「一冊」に凝縮 1950倶楽部 20日から発売」 2021年3月16日

琉球新報「沖縄の新社会人と就活生に必携の1冊 「1950倶楽部」が新刊を発行」2021年3月18日

 

概要

経済学者2名と経営学者2名が沖縄の過去を振り返る内容です.沖縄の企業がどこから生まれてどこへ行くのか,歴史的な展望を描きます.高校生や大学生向けの,非テクニカルな文章です.新聞2紙による歴史コラムも各所にあります.

この本は1950年創業の企業が集まった「1950倶楽部」の70周年記念として企画されました.ちなみに書籍の売上は全額寄付されるようで,私に印税は入りません.

 

執筆の経緯

弊学で担当している講義「沖縄経済論」の内容をどこかにアウトプットしておきたいと思っていたところに,執筆のお誘いをいただきました.

私は歴史能力検定1級日本史を持っている程度には歴史好きなのですが (高校生の頃は経済史の研究者になるつもりでした),経済史の研究者としてトレーニングしてきたわけではなく,アマチュアです.それでも,講義を通じていろいろ調べて考えたことは,英文査読誌でなくとも何らかの形にしておいたほうがよいだろうということで,恥を忍んで執筆することにしました.

当初は本の後ろの方にこっそり1章おまけで載せるようなつもりで引き受けましたが,いつの間にか第1章になってしまいました.


私の担当箇所

私は,個々の企業の歴史には触れず,よりマクロ的な視点から沖縄経済の歩みをたどっています. (本書自体は,個々の企業史をまとめた第2章が一番のウリです.)

淡々と歴史的事実を並べるというより,現代の経済学者 (の駆け出し) がどういった視点でものを見ているのかを伝えるような文章にしています.たとえば,逆因果や欠落変数バイアスをネチネチと潰していくところや,比較対象に目配りすること,インセンティブや人的資本に注目して説明しようとするところなどです.

当初は講義ノートと論文の間ぐらいの堅い,大部な原稿でしたが,編集を経てアカデミックな作法や厳密さを控えめにし,一般向けに寄せていきました.参考文献や脚註や専門用語をがっつり削ってあるため,読者によっては歯がゆいかもしれません.他方,余談もほぼすべて削ったので,本を読み慣れていない人にはまだ堅苦しいかもしれません.

経済学の理論を解説して沖縄での事例を紹介する,といった大学の講義っぽい構成 (たとえば横山『日本史で学ぶ経済学』みたいな) にしたかったのですが,時間と私の能力の都合で,だらだらとした編年体風の構成になってしまいました.次回作で構成を改善したいと思いますが30年後ぐらいになるかもしれません.

執筆していたのは去年の春頃で,感染症のせいで図書館も古書店もなかなか利用できず,いろいろ不自由しました.目を通したいものが増えるばかりで,積むことすらできていない積ん読が進みました.

 

私の章の内容

(1) 戦後のRGDPを見ると成長率のパスは驚くほど本土と似ている.この観察から,今貧しい最大の理由は,初期値の違い,ラフに言い換えれば歴史の違い,と言える.

(2) 琉球王国の中継貿易の様子を記述する.当時の貿易は沖縄県民を広く潤し育てるようなinclusiveなものではなかったのではという問題提起をする.

(3) 薩摩侵入後は,財政赤字に苦しむ,マルサスの罠に陥る,と散々である.士族 (血縁重視) と農民 (地縁重視) で,日本風なものと中国風なものとが混在するようになる.

(4) 明治維新後は,旧慣温存により日本式の近代化が遅れる.旧慣の善し悪しは論争があり,初期値の違いの一因と考えられるが,他方で平和的に制度移行をするための必要経費という側面もあったと考えられる.

(5) 戦後はアメリカの傘下で,基地依存輸入経済として復興を果たす.B円や米ドルを使った固定相場制を経験する.アメリカはシーツ善政のように,日中よりも沖縄を発展させる努力を払ったように見える部分もある.しかし復帰後・冷戦終結後も米軍基地の多くは残ったままで,政治的な軋轢を生んでいる.

なお,元ネタになった講義の資料は公開しています.

 

 既存の沖縄の歴史研究は他の日本経済史と似て,マルクス主義ならではの議論・問題意識が多く見られます.植民地は黒字か赤字か (西里・安良城論争) なんてボルシェヴィキかよ…みたいな.マル経だからだめだというわけではありませんが,私のような近代経済学の人が歴史を整理し直すのも新鮮で有用かと思います.

個人的には(1)がもっとも重要な指摘だと思っていて,initial valueをコントロールするのとしないのとで大きく違う,fixed effectの中身はそう簡単にわからない (外生的な変動に注目する必要),といった統計的事実を理解しないと,やすやすと偏見と短慮にまみれた感想文レベルの俺様沖縄経済論に陥ってしまうだろうと思います.沖縄の貧困は○の問題…みたいな血液型占いレベルの俗論が流行るぐらいですし.

ページ数と私の能力の都合で近現代が手薄になっていますが,そこは今後の課題にしたいと思います.とくに,米軍基地については私の定見のなさ・ノンポリさが目立つ気がします.すみません (私の文章を早合点した人に,基地賛成だの反対だの,政治的ななにかに利用されることは本意ではありません).その他論じたりない部分も多く残っていますがご容赦ください.

 

参考文献

岩波新書ほどではないですが,参考文献はかなり削りました.すべてではないですが,削ったもののうち影響されたものをここに載せておきます.

  • Galor, Oded, Omer Moav, and Dietrich Vollrath (2009) Inequality in landownership, the emergence of human-capital promoting institutions, and the great divergence. The Review of Economic Studies 76: 812 143̶179. 
    • 農民をエリートが搾取しているような社会では,エリートには人的資本を広く普及させるインセンティブが乏しい.これはわりと沖縄が明治維新後に工業化に遅れた理由としてしっくりくる説明な気がする.
  • 小野塚 知二 (2018) 『経済史 -- いまを知り,未来を生きるために』有斐閣
    • 評判がいいのでよく知らずに買ってみたらマル経でびっくりした.勉強不足で近経しか知らないので,マル経ベースの先行研究を読んでいく上で役立った.
  • 来間泰男 (2014) 『琉球王国の成⽴ 下: ⽇本の中世後期と琉球中世前期』⽇本経済評論社
    • 琉球王国は国というより商社,という発見はこの本で得た.
  • 高良倉吉ほか (2017) 『沖縄問題: リアリズムの視点から』中央公論新社
    • 本書執筆中に参照することはほぼなかったが,変な本が多い沖縄経済論壇では数少ないまともっぽい本 (ポジショントークは割り引く必要があるが).
    • 高良本は,「辺境性」がハンディ (自立経済構築の阻害要因) になっている,という地理ビューを持っている.
    • 私の場合,沖縄の地理的優位性についても言及してとリクエストがあり,最後に(ようやく自分の専門分野の)地理の話を付け加えた.私の考え方は,(1) Acemoglu-Robinsonみたいに,地理そのものは交絡がありすぎて経済成長への影響はわかりにくく,また一番大事な要因とは考えにくい,(2) 集積によるイノベーション促進は経済成長のエンジンになるはず(Kuznets, Bairochほかあまたの都市経済学) (だがFay-Opalなど成長なき都市化もあるかもしれない),(3) 重力モデルみたいに,貿易フローや賃金にも直接間接に影響する (文中では,Redding-Venablesを想定した説明をしている),といったものである.「地理的優位性」は市場ポテンシャルみたいに定量化できるとは思っているけど(実際計算したことはないものの),「辺境性」という固定効果でのお気持ち表明を試みているわけではない.
  •  武田晴人 (2019) 『日本経済史』有斐閣
    • 秩禄処分のくだりは,沖縄の旧士族層の解体周りの記述に役立った.
  • 真栄平房昭 (2003) 「琉球貿易の構造と流通ネットワーク」 豊⾒⼭和⾏ (編) (2003) 『⽇本の時代史18: 琉球・沖縄市の世界』吉川弘⽂館
    • 国際貿易にはエージェンシー問題がある,とアブナー・グライフやらの議論が先取りされていた.
  • 與那覇潤 (2011) 『中国化する⽇本: ⽇中「⽂明の衝突」⼀千年史』⽂藝春秋
    • 執筆当初は,この本のような中国化・日本化の視点で沖縄経済史を整理し直そうと考えていた.があまり真似しようとしても真似できず,中途半端なオマージュになってしまった.歴史系の先行研究は緻密な実証が主で,本書のような大きな話はなかなか語られてこず,適切な参考文献がなかった.
    • 私と同じような本を読んでいても,私よりずっと本質を読み取っていて,読解力の差を思い知らされる本.
  • 有間しのぶ 『その女、ジルバ』小学館
    • 校了後に読んだマンガ.執筆前に読めばよかったと思った.
    • 沖縄移民史については学術論文をいくつか読んだことがあったけど,移民についての知識と想像力がまだ足りておらず,しょーもない記述になってしまったのではと思わされた.
    • 以下ネタバレあり.このマンガは移民以外の部分も,学術的なバックグラウンドがあるようで (おそらく社会学) おもしろかった.主人公の同僚3人の描かれ方は印象的だ.3人とも会社・家族・近隣コミュニティといった中間集団からこぼれ落ちた存在であったが,1人は円満に結婚を決め (→家族),1人は地元に帰り (→近隣),伝統的なコミュニティに再び埋め込まれることになる.一方で残された主人公は(フォーマルな)会社とは決別し,非定型的な居場所と使命を見いだすことになる.社会学でいう後期近代?高齢化・未婚化・晩婚化が進む現代日本らしいテーマ.

 

謝辞

編集の意向で謝辞も本文から削りましたが,本章を執筆するにあたり,金城敬太氏に多くのコメント・示唆いただきました.ここに謝意を表します.講義でコメントや質問をいただいた学生たちにも感謝します.また,執筆の機会をいただき,上間優氏ら1950倶楽部のみなさまには深く感謝いたします.

もとより,私の文章は個人的見解であって,1950倶楽部各社とは無関係です.

Monday, August 10, 2020

Industrial Structure in Urban Accounting

国際学術雑誌への採録が決まりました.私の経歴の中では一番いい憧れのジャーナルなので喜ばしいです.なにかとお世話になった共著者にはここでも深く感謝を述べておきたいと思います.

Jun Oshiro and Yasuhiro Sato, Industrial Structure in Urban Accounting, Regional Science and Urban Economics.
https://doi.org/10.1016/j.regsciurbeco.2020.103576

そういえばレプリケーション用のファイルも送ったはずなんですけどElsevierのページに見当たらないです..

大学院生の頃に企画してからこうして載せるまでかれこれ約8年かかりました.大変.
サクラダファミリア化する前に行き場が決まってよかったです.

この間様々な人にコメントや励ましをいただきました.ありがとうございました.

8年といっても,最初の数年のうちにほとんど内容は固まり,残り数年はひたすら頑健性のチェックをやっていました.
得るものも多かったですけど,消耗の多い長旅だったように感じます.


Main points:
  • We try to sophisticate an urban accounting method in terms of (1) incorporating sectoral variation, (2) external validity (by using Japanese data), (3) internal validity (by correcting computational errors), and (4) understanding what causes the post-war population movement in Japan.
  • We find that `wedge' in local labor markets plays a major role in accounting for the spatial variation in regional population in Japan.
    • Labor wedge can be interpreted in several ways. Instead of interpreting what that represents, we stress which channel explains obs variation.
    • Changes in manufacturing sector seem important.
    • Regional variation in labor market distortion leads to concentration, rather than dispersion, of population.
  • It has an implication for policy making for designing urban system.

Sunday, June 28, 2020

戦前沖縄のGDPに関する富永推計について1

野暮用で調べ物をしている。
富永 (1995) で戦前の沖縄のGDPを推計していることに気づいた。しかしなにやらおかしな議論に感じたので、疑問点を備忘のため書き留めておきたい。
  • 富永斉 (1995) 『沖縄経済論』ひるぎ社
一部のチャプターは琉大の紀要に原典があるそうだが、電子で手に入らなかったこともあり未確認である。
あいにく細かく読んではおらず、以下はパラパラめくっての乱暴な感想。

1. 富永推計の概要

富永いわく、琉球処分後(1885年)の一人あたり県民所得は、全国の所得(データの都合で国民純生産を使っている)の75--80%程度だったとする。宮城 (2018a, b) などはこの推計に依拠して議論をしているし、高良 (2017) など歴史プロパーの文章でも引用されてる。

なぜ75--80%なのか。
  • 1930年代は全国比で35%程度である (と琉球政府が言っている)。
  • 実質成長率が年率1.3%程度である。
    • マルサスの罠で、人口成長率と実質成長率がほぼ同じ、実質一人あたりはゼロ成長、と考える。
  • 30年代から過去を外挿すると、1885年時点で75--80%程度の格差となる。 
    •  1885年時点で50%ぐらいの格差だと、産業革命期のイギリスを超える成長率になりおかしい。
といったところである。

2. 違和感

しっくりこない理由を挙げておく。
  • 実質成長率1.3%は、1920--40年の5年おきのデータ (n=5)を時間トレンドのみのOLSから求めている。うーん。
    • 1920--30年代はソテツ地獄や昭和恐慌の時期である。この時期に沖縄が長期トレンド上にあると想定し、直線でエイヤっと外挿するのは厳しいのではないか。
      • n=5だと、一つ観測が増えるだけで大きく結果が変わるだろう。75--80%という予測の幅は、予測直線をどこから伸ばすのかという恣意性から出てきている。統計的な予測誤差ではない。75--80%±50%ぐらいのざっくりした見込みにすぎないのでは。
    • 30年代が潜在水準を下回る状態だとすると、1885年時点の格差はもっと縮まる、場合によっては沖縄のほうが豊か、というおかしな結論になってしまうのでは。
  • 産業革命期イギリスの成長率を2%と言っているが、その根拠と思われるDeane-Cole推計は、Crafts (1985) and Crafts and Harley (1992)でかなり下方修正された。これは西洋経済史で広く知られていることのような。
    • 「イギリスより低いはず」という理屈に乗っ取ると、やはり1885年時点で沖縄のほうが全国より豊か、という変な結論になり得るのでは。
  • 全国より成長率が低いはずだ、という仮定が結論にほぼ直結してる。そしてこの仮定に十分な正当化がされていない。
    • 全国は産業革命で伸びた、沖縄は産業革命がなく伸びない、ではちょっと雑すぎる気が。イギリスでさえたいして伸びていないのに。
  • GDPデフレーターを全国と同じものを用いている。沖縄と全国で財のバスケットが似通っていればそれでいいのかもしれないが、たぶんそうではないだろう。
    • 当時は非貿易財がめちゃくちゃ多いはずなので、Balassa-Samuelsonみたいな議論は不可避だと思われる。
    • そもそもデフレーターはインプリシットに決まるものということをあまり理解されていない気が。
  • マルサスの罠がバインドしている根拠ってどこにあるのだろう。
    • subsistence levelの生活になることを回避すべく、昔の人々は出産抑制策を講じて生活水準を高めていた、というのが速見融ら歴史人口学の知見ではなかろうか。江戸~明治頃の沖縄に似たような人口成長抑制デバイスがあったのかはわからないが。重たい人頭税で堕胎や嬰児埋殺などはあったようだが(大浜 1971)。
  • 廃藩置県直前の様子 (松田道之の記録など) からすると、75--80%というのはやはり過大評価な印象があるがどうなんでしょ。
  • 歴史的データがはらむ測定誤差の問題にあまり詳細な批判的検討がなされていないように見える。

Reference
  • Crafts, N.F.R., 1985. British Economic Growth During the Industrial Revolution. Oxford University Press, Oxford.
  • Crafts, N.F.R., Harley, C.K., 1992. Output growth and the British Industrial Revolution: a restatement of the Crafts–Harley view. The Economic History Review 45, 703–770.
  • 大浜信賢 (1971) 『八重山の人頭税』 三一書房
  • 宮城和宏 (2018a) 「沖縄経済の成長と生産性に関する実証分析」 in 宮城和宏・安藤由美 編『沖縄経済の構造: 現状・課題・挑戦』編集工房 東洋企画
  • 宮城和宏 (2018b) "沖縄経済の成長, 生産性と 「制度」 に関する一考察." 地域産業論叢 14: 1-31.
  • 高良倉吉 (編) (2017) 『沖縄問題: リアリズムの視点から』中央公論新社

Monday, January 27, 2020

資本減耗率の地域間格差と沖縄の経済成長


沖縄の成長がなぜいまいちか,は従来から様々な議論がある.本エントリは,資本減耗率がその一因ではないか,という話.(というかざっくばらんなアイディアメモ.)

私は以前から,沖縄は資本減耗率が他地域よりも高いのでは,という漠然とした予感を持っていた.台風は多く,湿気もひどい.町中の建物は那覇の都市部を除きボロボロだし,車は定期的に洗車しないと塩害でやられてしまう.沖縄は持ち家比率が低いが,所得・資産が少なく借入制約がキツいという理由もあろうが,メンテナンスのコストが高く耐用年数が短い,という事情もあるかもしれない.


Hsiang and Jina (2015 AER p&p)では,熱帯のサイクロン(台風含む)が資本減耗率に影響し,それが経済成長率に影響することを指摘している.

Hsiang & Jina 2015, Figure 1.
上図は論文の図1である.赤い部分ほどサイクロンの平均風速が高い地域になり,沖縄は赤い部分に含まれる.この図を見るとと,サイクロン・ドリブンで減耗率が高くなり,資本蓄積のスピードを遅らせそうな予感がしてくる.
雪国は雪国で資本減耗率が上がるというより資本稼働率が低くなりそうな気もするが,地理的条件が低成長に寄与する一つのチャンネルが何やら見えてくる.

地域レベルの資本ストックのデータを作るときには,減耗率の地域間格差は考慮されていない.たとえばRIETIのR-JIPデータベースだと,全国版と同じ(産業別)減耗率を仮定している模様(詳細未確認).
R-JIP 2017で,実質資本ストック/マンアワーをプロットすると,下図の通り.
都道府県別のK/L. 2012年,産業計.
全国が真ん中あたりにある黒棒で,沖縄は上から3番目のオレンジ色だ.
沖縄が全国3位の資本豊富地域とは考えにくいよね…

R-JIPを使って都道府県別に成長会計をやると,沖縄はTFP成長の寄与度が際だって低くなるらしい
あまりに極端なので計測エラーではないかと受け止めていたが,エラーの源泉は資本減耗を過小評価し資本ストック成長を過大評価しているため,と考えるとある程度しっくりくるかもしれない.

Reference
  • Hsiang, Solomon M., and Amir S. Jina. 2015. "Geography, Depreciation, and Growth." American Economic Review, 105 (5): 252-56.
  • 徳井丞次他 (2013) 「都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」RIETI Discussion Paper Series 13-J-037.

Monday, April 30, 2018

国勢調査における「不詳」と沖縄

最新の国勢調査で,人口移動に関するデータを眺めている.今回のエントリは,沖縄には「不詳」に分類されている輩が多すぎる,という話.

総務省国勢調査では5年前の居住地についての情報が集められている.ところが,5年前の居住地が「不詳」となっている人も少なくない.「不詳」の正体は何なのだろうか.

小池・山内 (2014) では, 2010年の国勢調査で「不詳」についてレポートしている.
  • 2005年以前と比べて「不詳」が急増している.
  • 地域,年齢,就業状態によって「不詳」の割合が異なる.
    • 大都市圏で高い.沖縄や高知も高い.
    • 若者は高い.
    • 分類不能の産業,分類不能の職業,で高い.
といったことが指摘されている.

以下2015年の国勢調査で不詳について見ていく.特に何を明らかにするわけでもなく,どこに不詳が集まっているかを眺めるだけ.

1. 都道府県レベル
47都道府県別に不詳割合を計算する.
現住地による5年前の常住地について,
総数(常住者) = 現住所 + 自県内 + 転入 + 5年前の常住市区町村「不詳」 + 移動状況「不詳」
という関係が成り立つ.ここでは右辺にある2つの「不詳」の合計が,左辺に占める割合を「不詳のシェア」と呼ぼう.なおサイズ的には,後者の移動状況自体が不詳な者が多い.
計算結果が以下の図である.

  • 沖縄は東京大阪に次ぐ全国3位の13.7%である. なお,全国平均は8.8%である.
都会だとオートロックで調査員が入れないマンションがたくさんあり詳細不明,という人がたくさんいてもなんとなく納得できる.しかし沖縄はそうした事情だけでは説明できない何かがありそうな気がする.

2. 市町村レベル
市町村レベルのデータでも同様に不詳シェアを計算する.市町村の場合,現住地による5年前の常住地について,
総数(常住者) = 現住所 + 自市区町村内 + 自市内他区 + 県内他市区町村 + 他県 + 国外 + 5年前の常住市区町村「不詳」 + 移動状況「不詳」
= 5年前の常住地による人口総数 + 転入 - 転出 + 5年前の常住市区町村「不詳」 + 移動状況「不詳」 ,
が成り立つ.ここでも,不詳2つの和が左辺の常住者総数に占める割合を不詳シェアとして計算した.

全国の市区町村でヒストグラムを作ると以下の通り.


薄くて見えにくいやつが沖縄県内41市町村の分布.全国と極端に変わった気配はないようにも見えるが,全国よりもシェアが高い地域が多いようにも見える.

沖縄県内の各市町村について見る(下図)と,都市部に不詳が集中していることがわかる.
  • トップは那覇市でなく沖縄市であった.実に4人に1人(24.7%)が不詳
  • 島嶼部はおおむね低い傾向にあるが,竹富町がけっこう高い.
本島にあっても,「誰誰さんは○○家の××」 みたいな話がよく出てくるような小さい町村は不詳が少ない傾向にある.
図2 県内市町村別の不詳のシェア.

図3 不詳シェアの地図(やっつけ)

3. 外国人?
不詳というと,外国人が多いせいではないか,と疑う人がいるかもしれない.沖縄市,宜野湾市,北谷町など米軍基地が近そうな場所で不詳が多いように見えるのも気になる.

そこで,「推計人口」から2015年10月1日時点での総人口のうち,外国人が占めるシェアを計算し,不詳との相関を見た(下図).
図4 外国人が多くても不詳は増えないかも.
 外国人の割合が高い市町村であっても,不詳のシェアが大きくなるとは限らないようである.
不法入国がどれだけあるかは知りようがないものの,外国人が多いコミュニティでは国勢調査の精度が落ちる,とは少なくとも県内に限っては言えない

4. 人口の流動性?
小池・山内(2014)によると,人口移動の活発な地域ほど不詳割合が高くなることが知られているそうだ.東京大阪のような都市部で不詳が急増するのはそのせいかもしれない.沖縄ではどうだろうか.

次のように人口のモビリティの指標を定義する.
モビリティ =(転入 + 転出) / (常住者 - 不詳)
分子は純転入でなく,グロスの人口移動を捉えている.
作成したモビリティの指標と不詳シェアの相関を見たのが次の図.
図5 人口の流動性と不詳は関係なさそう.
小池・山内(2014)と違って,移住が活発な地域ほど不詳が増える傾向は見られない
むしろ負相関に見えるのは,沖縄の場合,不詳が少ない島嶼部でモビリティが高い傾向があるからである.しかし島嶼部を除いたサンプルで見ても,依然として人口移動のボリュームと不詳にはあまり関係がなさそうであった.

5. まとめ
沖縄は全国と比べて5年前の居住地が不詳の人たちが多いようである.不詳は県内都市部に広く分布しているようであるが,それ以上の特徴はすぐにはわからない.
不詳となる原因はいくつか考えられるが,外国人が多い地域,転入・転出が多く人の移動が流動的な地域,という説明だけでは不十分そうである.アンダーグラウンドに生きる人たちや,統計調査に非協力的な人たちが他府県よりも多めに存在しているのかもしれない.

なお,若年は不詳になりやすいこともあり,若年が多い地域は不詳シェアも高い.とはいえ,説明できる変動はそれほど大きくない.

結局謎のままだが,とりあえずこのへんで.

Reference
  • 小池司朗・山内昌和 (2014) 「2010年の国勢調査における「不詳」の発生状況: 5年前の居住地を中心に」人口問題研究 70-3(2014.9)pp.325~338

Wednesday, September 13, 2017

MICE誘致

国際学会で報告してきた.拙い英語ながら笑いも取れてよかった.
久しぶりのブログエントリは討論した論文をめぐっての単なる雑感.

今回,国際会議を誘致する決定要因は,という実証研究の討論を行った.私の専門とは離れるが,大型MICE施設を建設しMICE誘致をまさにしようとしている沖縄にとっては興味深い内容だ.
今沖縄では,東京などもそうだが,MICEの誘致のため大型予算が動こうとしているのである.(ただし直近では軌道修正を迫られているようである.)

県は年間100件以上の誘致を目標としているらしい.過半はコンサートなどのイベントのようだけど,これはかなり大きな数字だ.
今回討論した論文のデータによると,県の目標は欧州各国の首都に匹敵する件数の模様だ.沖縄は立地抜群で歴史も古く英語が使えて国際機関や一流研究大学も多い名だたる大都市…というわけじゃないと思うのだけど.

*参考: 7月の報道では,開業12年目で年間164件を開催するのが目標だとされている.
沖縄タイムス 「MICE、開業6年で黒字」沖縄県が再試算 件数・参加者の目標値修正



MICE研究の論点はとっくの昔にあらかた出尽くしている感じで,あとはデータを集めて実証というステージにある模様だった.なかなか参入しにくいテーマである.

Tuesday, February 28, 2017

Mathematica入門ガイド

研究真っ盛りの春休みなのだが,いかんせん今の研究,計算時間が長すぎる.
手持ちぶさたな時間を利用してプログラミングになじみの薄い経済学者向けにMathematicaのチュートリアルを作成し公開することにした.

  • Mathematica tutorial for young economic theorists: 応用経済理論屋のためのMathematica ガイド [view] [download]

今の研究で使っている様々なテクニックなんて少し時間が経てばすっかり忘れてしまうだろうからと,去年あたりから個人用備忘録として作成していた.今回公開するのはそれを初学者向けという体で加筆修正したものである.


コメントやアドバイスがあればお寄せください.

Wednesday, July 20, 2016

Solitary City

宣伝.単著論文がManchester School誌にacceptされオンラインに出ました.これで院生時代に手がけたものはすべて捌けたことになります.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/manc.12170/abstract

ちょうど4年前の今頃に,博論が論文2本だけだと寂しいのであと一つ,とスタートした研究でした.あまりにも練られておらず分析はすぐ行き詰まり,科研にも落ち続け,査読では○○ヶ月待たされ,苦い思い出でいっぱいです.この論文の報告・査読に付き合わされた方々には恐縮至極に存じています.

それでもこのプロジェクトからは多くのことを学ぶことができました.最終的に公刊することができとりあえずは安心です.


肩の荷が下りたところで,これが私の遺作とならないよう引き続きがんばります.

(大学のウェブサイトでは私のcvが雑兵レベルのままでなのでそろそろ更新したいのですがどうしたものでしょうか…)

Tuesday, July 5, 2016

REW2016告知


さて,毎年恒例になりつつある沖縄ワークショップが7月9日に開催されます.遅くなりましたが一応告知.報告者以外の参加も歓迎しています.めんそーれ!
(非研究者が来てもあまり得られるものはありません.念のため.)
(直前ですがプログラムに近々変更があるかもしれません.)

こぢんまりとした前日祭も予定されていますので,前日入りされる方は私に一頃お声かけいただければ幸いです(できれば早めに).

沖縄は梅雨明けしてすっかり夏です.台風1号のためか週末の天気は悪そうですが,日焼け止めなど暑さ対策もお忘れなく.



Saturday, May 2, 2015

『沖縄の業界地図』 forthcoming!

前年度のゼミで作ったチャーミングな書籍が上梓されます.発売日は5月4日です.
cover

リンク
旋風起こすぜ.


以下,本書のアピールポイントを率直にまとめ,敷衍します.

新規性について
  • タイトル通り,書店の就活やビジネスのコーナーを毎年賑わす「業界地図」のローカル版です.全国版は東洋経済新報社,日本経済新聞社,成美堂出版などが出すものがいくつかありますが,特定地域に特化したものだと関西版(日本経済新聞社)があるのみのようです.ローカル版といっても全国版を縮小劣化させたものではなく,むしろアカデミア特有の目配りと遊び心に溢れた,読み応えのある書籍になっています.
  • 沖縄の企業を紹介した書籍はいくつかありますが,多くの産業を網羅し一望できるようなものはほとんどありません.貴重な例外として,琉球新報社編集局政経部『沖縄の企業と人脈』1999年,があります.新聞社が作るだけあって貴重で魅力的なインタビューが豊富ですが,県内有力企業とそのグループに取材対象が偏っており,また内容的にはoutdatedになりつつあります.東洋経済の『会社四季報 未上場会社版』はより最新の情報にアクセスできますが,沖縄県の企業は数えるほどしか収録されていませんし,業界の全貌や企業間の関係は見えてきません.
  • その昔沖縄国際大学の新城俊雄ゼミでは,企業にインタビューに行き,その経営戦略を分析した卒論集のようなものをインフォーマルながら刊行していたようです.テーマは似通っていますが,沖国本では学術研究としての色合いが強いのに対し,我々は一般のビジネスパーソンや学生が手軽に手に取れるカジュアルな雑誌を志向しています.実際に県内の書店やコンビニ(ファミマとローソン)でも手に取れます.また,沖国本では特定企業管理職の経営哲学やマーケティング戦略というミクロな事例に中心的な関心がありますが,我々の新刊には企業間の戦略的な相互依存関係や産業全体を見渡すマクロな分析など,幅広い視点からの議論がふんだんに盛り込まれている点で違いがあります.統計データを多く盛り込み,定量的に業界の全体像をイメージするための手がかりが多数仕込まれている点も白眉でしょう.我々は大学時代の思い出作りをしているのではなく,リスクを背負ってmarketableな商品を生み出し実際に販売するという真剣勝負をしています.
  • そのほか沖縄企業のmanagement practicesを紹介した事例研究モノや,企業人のインタビューや列伝,社史,などはいくつかありますし参考にしました.しかしながら私が調べた範囲では,800を超える企業を収録したものはかつてありませんでした

重要性について
  • 沖縄を本拠地とする企業のほとんどは中小企業です.内地企業の支店を除けば,上場企業は数えるほどしかいません.そのため,ローカル企業についての情報にアクセスするのは容易ではありません.新聞記事や噂話で断片的に耳目に触れる程度です.
  • それでいて,人的ネットワークを重んじる風土もあってか,沖縄でビジネスをする上で企業間の関係についての情報を蓄えておくことは決定的に重要だとされています.県内でも有力企業の「系列」があり,市場での取引関係と密接に結びついています.当事者でなければ知り得ない情報に大きく依存した,不透明な市場環境という側面があります.
  • 地元で就職活動を行う学生は,信頼できかつ幅広い情報源を欠いている状況です.人生を決定的に左右する場であるにも関わらず,CMを流しているごく少数のBtoC企業しか知らず,極めて少ない選択肢にしか気づかない状態で就職活動をしなければならない学生は少なくありません.情報を生産することで,学生が地元でよりよい生活を営む可能性をどんなに広げられるでしょう.同時に,企業にとっても自社の精神やその結実を若い人材に広く認知させることからどんなに便益を享受することができるでしょう.
  • つまり,情報の価値は計り知れないほど大きいにも関わらず,埋もれてしまっている状況でした.埋もれた情報を掘り起こして可視化し,気軽に手に取れるようにしたことが本書最大の売りです.地元の企業だけでなく就職を意識した学生や潜在的な沖縄市場への参入者,そして最終消費者としての沖縄県民にとって,よりよい沖縄ライフを満喫できる手がかりを提供します.

エクスキューズ
  • ゼミ活動の一環としてのプロジェクトであるため,内容に甘いところもいくつか残されています.私の力不足のためとしてあらかじめ陳謝せねばならないところがあります.
    • 速報性: おおよそ2014年度,特に14年12月頃までの情報に基づいています.発売にいたるまでの間にも情報が次々とアップデートされてしまいました.どうしても,新聞などと比べれば速報性は劣ります.
    • 正確性: 基本的に新聞や公式ウェブサイトなどで確認できる,信頼性の高い情報のみに基づいています.言うまでもなく,あくまでもacademic integrityを遵守することが最優先事項です.しかしながら,我々は財務データなど一次情報にアクセスできる立場でもなく,本書には不正確な情報が紛れ込んでいるかもしれません.そもそも中小企業についての情報の信憑性は大企業に比べればどうしても劣りますし,情報量も極めて限定されてしまいます.
    • 網羅性: なるべく多くの業界をカバーすることを目指しましたが,時間や人的リソースの限界から,有力企業であるにも関わらず十分に調べられなかった企業は数多く残されています.また,取材に協力していただきながら,出版に耐えうる記事にしきれなかった企業もあります.
      • 私は生まれも育ちも沖縄ですが,象牙の塔一丁目一番地在住であり,地元ビジネスのことはまるで知りません.監督する側の基礎知識・人脈の不足は否めません.
  • これらは次年度以降の課題としたいと思います.ゼミ生のインタビューにご協力いただける企業は随時募集しています
  • 本書は私の本務校から資金的援助を頂戴しています.しかし言うまでもなく,本書は大学を代表するものではなく,あくまでも私たちが責任を持って世に問うものです.

教育の一環として
  • イノベーションの重要性はすでに人口に膾炙して久しいわけで,自らもイノベーションを起こさなければ示しが付きません.革新的アイディアを形にするという,我々の生きる経済にとって根源的に大切な活動を実際に経験するチャンスを提供した一年間だったと自負しています.
    • 今回はvariety expansionをしたので,今年度のゼミはquality ladderでいきたいと思います.
    • 研究面でのイノベーションをしてから物を言え,という意見はしかと受け止めます…言われなくてもやっとるわと言いたいところですがなかなか論文にまとめられずにいてつらい状況であります.もうしばらく見守ってください.
  • 私の本務校が,貴重な4年間を犠牲にしてまで卒業する価値のある大学であると胸を張って言えるようにしたいという思いもあります.

この冬~春にかけてこの本の編集作業ばかりに時間を取られていました.研究できないストレスの余り,体重がとんでもなく減ってしまいました.健康診断で「やせすぎ要観察」と言われる私がダイエットしても….
しかし命を削った分だけ面白い本ができたと確信していますのでぜひご購入を検討してください.(今後は改めて自分の研究にいそしみます.)

Wednesday, February 18, 2015

Capital mobility—resource Gains or Losses? How, When, and for Whom?

少し旧聞に属しますが,採録された論文がオンラインで読めるようになりました.数年漂流した論文ですが最終的にそこそこ良い雑誌に載ることになりよかったです.共著者をはじめ関係者には感謝でいっぱいです.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jpet.12145/abstract


天然資源の偏在を考慮した財政競争の論文です.執筆当初はレア・アースを意識していましたが最近ではシェール・ガスや原油が絡む文脈で理解するとよい気がします.ぜひ引用して下さい.

技術的にはquadratic production functionを導入することで不完全競争の入った一般均衡モデルを解析的に扱いやすくした点が売りの一つです.最近知りましたが,quadratic production function自体は,元をたどればかのDavid Ricardo (1817) Principles of Political Economy and Taxationが初出のようです(Humphrey 1997).

論文中でも様々な拡張を試していますが,もっと別のテーマに応用し新たな論文生産につなげたいです.

Reference
  • Tomas M. Humphrey (1997) Algebraic Production Functions and Their Uses Before Cobb-Douglas, Federal Reserve Bank of Richmond Economic Quarterly Volume 83/1 Winter 1997.

Tuesday, November 11, 2014

シンポジウムポスター

今年度の応用地域学会はァーッどろろろろろろろ…(ドラムロール)…じゃーん!
沖縄!

大会ウェブサイト
    https://sites.google.com/site/arsc2014naha/

地元ピープルなので,大会実行委員とプロコミの大任を担っております.
大会参加申し込みは今週末の,11月15日締め切りです.お忘れなきよう.
沖縄もそろそろ全裸だと肌寒い季節です.天気情報を見ながら準備してください.

シンポジウムのポスターも自給しています.最終版は地元の新聞にも掲載されるようですが,このブログではほとんど無害な没バージョンを公開します.せっかく作ったので.



Wednesday, April 23, 2014

ワークショップ第二弾

諸先生方の尽力により,国際経済学の研究会が本学で執り行われることになりました.詳細は私の個人ウェブサイトにアップしている通りです.そんじょそこらの学会より豪華です.なんだこのプレッシャーは.梅雨に入るか入らないかギリギリの日取りですが,晴れることを祈ります.

ワークショップ報告者・参加者は随時募集中です.

Tuesday, March 4, 2014

ワークショップ

沖縄は住み良いところだが,不満もある.そのひとつはセミナー・ワークショップへの参加が難しいことだ.高い水準の研究を継続するためには,アカデミアとの距離を縮めなければならない.

このたびおこがましくも,経済学の研究会を主催することにした.その名もRyukyu Economics Workshop (REW).
https://sites.google.com/site/junoshiro5urban/workshop

さっそく来週(10日月曜15時~),阪大から優秀な院生を2人招いている.オープンな研究会なので,関心があれば誰でも気軽に参加してほしい.

Note:
  • 現時点では私はファンドを持っていないため,報告者に旅費や謝金をお支払いすることができません.それでもよい,という報告者を歓迎します.分野は問いません.
    • 将来的には科研費か何かのサポートを得られるようにしたいです.今のところ阪大AMTWなどと同じくインディーズです. 
    • Ryukyuと暫定的に名乗っていますが,琉大とは関係ありません.その他いかなる学会,政治的団体とも無縁です.
  • 開催日時は不定期,応相談です.報告の合間にぜひ沖縄観光を堪能していってください.
    • 年度末のこの時期は花粉もなく予算消化の憂いもなく快適かと存じます.
  • 今年のARSCは沖縄で開かれる予定です.ARSCの前夜祭・後夜祭も可能ですね.関心のある方はぜひご連絡を.
すばらしい研究環境です.

Wednesday, August 7, 2013

論文が出版された…が

 Papers in Regional Scienceという査読付き英文学術雑誌の,私の論文が掲載された号が出版されました.ただし本学図書館からアクセスできるのは1年後になります.

 親切なことに要約の和訳も付けていただいているのですが,
本論文は,モバイル通信業者に対する関税競争が…
とのっけからスペクタクロなことをやらかしてくれています.いやいやいやいや.



 宣伝ついでに,現在夏期休業中(9/11~9/13の3日間)の再履修者向けゼミ(問題発見演習I)参加者を募集しています.必修ゼミを落としてしまい将来の不透明感にさいなまれている学生は万難を排して履修してください.あるいはもしそういう友人がいれば情報を伝えてください.

Monday, June 24, 2013

JEA

 研究報告のため富山へ行って参りました.お会いしたすべての方々,特に議論をして頂いた先生方,ありがとうございました.

 私のpreferenceは,研究, 教育, 雑務の順にlexicographicな順序付けをしています.今年度一番楽しいひとときでした.今後いっそう精進します.

 今回報告した研究はworking paperにもしていますが,公開バージョンと現行バージョンにはそれなりのギャップがあります.改訂をお待ちください(夏休み中には…).