Saturday, May 2, 2015

『沖縄の業界地図』 forthcoming!

前年度のゼミで作ったチャーミングな書籍が上梓されます.発売日は5月4日です.
cover

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旋風起こすぜ.


以下,本書のアピールポイントを率直にまとめ,敷衍します.

新規性について
  • タイトル通り,書店の就活やビジネスのコーナーを毎年賑わす「業界地図」のローカル版です.全国版は東洋経済新報社,日本経済新聞社,成美堂出版などが出すものがいくつかありますが,特定地域に特化したものだと関西版(日本経済新聞社)があるのみのようです.ローカル版といっても全国版を縮小劣化させたものではなく,むしろアカデミア特有の目配りと遊び心に溢れた,読み応えのある書籍になっています.
  • 沖縄の企業を紹介した書籍はいくつかありますが,多くの産業を網羅し一望できるようなものはほとんどありません.貴重な例外として,琉球新報社編集局政経部『沖縄の企業と人脈』1999年,があります.新聞社が作るだけあって貴重で魅力的なインタビューが豊富ですが,県内有力企業とそのグループに取材対象が偏っており,また内容的にはoutdatedになりつつあります.東洋経済の『会社四季報 未上場会社版』はより最新の情報にアクセスできますが,沖縄県の企業は数えるほどしか収録されていませんし,業界の全貌や企業間の関係は見えてきません.
  • その昔沖縄国際大学の新城俊雄ゼミでは,企業にインタビューに行き,その経営戦略を分析した卒論集のようなものをインフォーマルながら刊行していたようです.テーマは似通っていますが,沖国本では学術研究としての色合いが強いのに対し,我々は一般のビジネスパーソンや学生が手軽に手に取れるカジュアルな雑誌を志向しています.実際に県内の書店やコンビニ(ファミマとローソン)でも手に取れます.また,沖国本では特定企業管理職の経営哲学やマーケティング戦略というミクロな事例に中心的な関心がありますが,我々の新刊には企業間の戦略的な相互依存関係や産業全体を見渡すマクロな分析など,幅広い視点からの議論がふんだんに盛り込まれている点で違いがあります.統計データを多く盛り込み,定量的に業界の全体像をイメージするための手がかりが多数仕込まれている点も白眉でしょう.我々は大学時代の思い出作りをしているのではなく,リスクを背負ってmarketableな商品を生み出し実際に販売するという真剣勝負をしています.
  • そのほか沖縄企業のmanagement practicesを紹介した事例研究モノや,企業人のインタビューや列伝,社史,などはいくつかありますし参考にしました.しかしながら私が調べた範囲では,800を超える企業を収録したものはかつてありませんでした

重要性について
  • 沖縄を本拠地とする企業のほとんどは中小企業です.内地企業の支店を除けば,上場企業は数えるほどしかいません.そのため,ローカル企業についての情報にアクセスするのは容易ではありません.新聞記事や噂話で断片的に耳目に触れる程度です.
  • それでいて,人的ネットワークを重んじる風土もあってか,沖縄でビジネスをする上で企業間の関係についての情報を蓄えておくことは決定的に重要だとされています.県内でも有力企業の「系列」があり,市場での取引関係と密接に結びついています.当事者でなければ知り得ない情報に大きく依存した,不透明な市場環境という側面があります.
  • 地元で就職活動を行う学生は,信頼できかつ幅広い情報源を欠いている状況です.人生を決定的に左右する場であるにも関わらず,CMを流しているごく少数のBtoC企業しか知らず,極めて少ない選択肢にしか気づかない状態で就職活動をしなければならない学生は少なくありません.情報を生産することで,学生が地元でよりよい生活を営む可能性をどんなに広げられるでしょう.同時に,企業にとっても自社の精神やその結実を若い人材に広く認知させることからどんなに便益を享受することができるでしょう.
  • つまり,情報の価値は計り知れないほど大きいにも関わらず,埋もれてしまっている状況でした.埋もれた情報を掘り起こして可視化し,気軽に手に取れるようにしたことが本書最大の売りです.地元の企業だけでなく就職を意識した学生や潜在的な沖縄市場への参入者,そして最終消費者としての沖縄県民にとって,よりよい沖縄ライフを満喫できる手がかりを提供します.

エクスキューズ
  • ゼミ活動の一環としてのプロジェクトであるため,内容に甘いところもいくつか残されています.私の力不足のためとしてあらかじめ陳謝せねばならないところがあります.
    • 速報性: おおよそ2014年度,特に14年12月頃までの情報に基づいています.発売にいたるまでの間にも情報が次々とアップデートされてしまいました.どうしても,新聞などと比べれば速報性は劣ります.
    • 正確性: 基本的に新聞や公式ウェブサイトなどで確認できる,信頼性の高い情報のみに基づいています.言うまでもなく,あくまでもacademic integrityを遵守することが最優先事項です.しかしながら,我々は財務データなど一次情報にアクセスできる立場でもなく,本書には不正確な情報が紛れ込んでいるかもしれません.そもそも中小企業についての情報の信憑性は大企業に比べればどうしても劣りますし,情報量も極めて限定されてしまいます.
    • 網羅性: なるべく多くの業界をカバーすることを目指しましたが,時間や人的リソースの限界から,有力企業であるにも関わらず十分に調べられなかった企業は数多く残されています.また,取材に協力していただきながら,出版に耐えうる記事にしきれなかった企業もあります.
      • 私は生まれも育ちも沖縄ですが,象牙の塔一丁目一番地在住であり,地元ビジネスのことはまるで知りません.監督する側の基礎知識・人脈の不足は否めません.
  • これらは次年度以降の課題としたいと思います.ゼミ生のインタビューにご協力いただける企業は随時募集しています
  • 本書は私の本務校から資金的援助を頂戴しています.しかし言うまでもなく,本書は大学を代表するものではなく,あくまでも私たちが責任を持って世に問うものです.

教育の一環として
  • イノベーションの重要性はすでに人口に膾炙して久しいわけで,自らもイノベーションを起こさなければ示しが付きません.革新的アイディアを形にするという,我々の生きる経済にとって根源的に大切な活動を実際に経験するチャンスを提供した一年間だったと自負しています.
    • 今回はvariety expansionをしたので,今年度のゼミはquality ladderでいきたいと思います.
    • 研究面でのイノベーションをしてから物を言え,という意見はしかと受け止めます…言われなくてもやっとるわと言いたいところですがなかなか論文にまとめられずにいてつらい状況であります.もうしばらく見守ってください.
  • 私の本務校が,貴重な4年間を犠牲にしてまで卒業する価値のある大学であると胸を張って言えるようにしたいという思いもあります.

この冬~春にかけてこの本の編集作業ばかりに時間を取られていました.研究できないストレスの余り,体重がとんでもなく減ってしまいました.健康診断で「やせすぎ要観察」と言われる私がダイエットしても….
しかし命を削った分だけ面白い本ができたと確信していますのでぜひご購入を検討してください.(今後は改めて自分の研究にいそしみます.)

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