Friday, April 17, 2015

国際経済学I,第2回, 2015

今期は講義と学内業務がずいぶん増えてしまい,フライング五月病になりそう…

講義内容
  • グローバル化が進む要因
    • WTOが質の高いレポート(英語)を毎年刊行しており,それを眺めるのもよい.特に13年のレポートは,何が貿易に影響を与えるのかを学術的な成果に基づきながら整理している.
  • 沖縄の国際経済史
    • 沖縄の交易史は安里ほか (2010) に詳しい.
    • 貿易は単に物を交換するだけではない.情報や知識もついてくる.
    • 中継貿易でうるおった時期もあったが,長続きはしなかった.競争に敗れた先祖の轍を踏まないようにしたい.
連絡
  • 5月1日は水曜日日程のためこの講義はありません.
コメントより
  • 「貿易するには言語が必要だと思うが,日中でよく貿易できたなと思う」 
    • 古来日本のインテリは漢文を勉強していましたよね.インテリでなくても,貿易商は幼い頃から実践経験を積んでいたのかもしれません.
  • 「昔は中国と仲良かったのに今はたいして仲よくないのが残念」
    • 残念ですね.
  • 「歴史は昔学んだことがあって,復習できてよかった」「再び勉強したい」「沖縄はすごい!!」「今も変わらないと思う」「沖縄の現状はなぜだろう.歴史を学ぶと様々な疑問が出てくる.来週が楽しみ」
    • 知的好奇心の赴くままに歴史を勉強して頂けるとうれしいです.私は歴史は好きです,研究対象としない限り.
  • 「自ら生産するより,地理を活かして国際関係を強めていくと,次第に発展していくのかなーと思った」 
    • 最近の国際物流ハブ構想のことでしょうか.
  • 「国際化は最近だと思ってた」「近代のイメージがあった」
    • もちろん現代のものとは比にならないほど原始的な取引だったかと思いますが,現代まで続くような影響が残ることもあるようです.
  • 「沖縄の伝統工芸品が外国の影響を受けていたとは」「完全沖縄発祥だと思っていた」「昔は貿易で支えられていたんだな」
    • 日常的に英文を読んでいるので,むしろ外国と知的に断絶している状況が想像できなくなりつつあります.外の世界のものも貪欲に取り入れていきましょう.
  • 「沖縄は他国・地域への地理的なアクセスがよいのでは.戦争のとき沖縄が攻められて今も基地があるのも,位置がよいからと聞いたことがある」
    • 現代の基地問題でも,沖縄の戦略的価値は大切な論点の一つのようですね.(私は専門外です.)
    • ポテンシャルは高いかもしれませんが,他にもっと優れた場所があってもおかしくないようにも思いました.
  • 「官製貿易というが,民製貿易もある?」
    • 現代だと基本的には民間企業同士の取引がほとんどではないでしょうか.ただ,政府の監視や法的ルールから外れた貿易は密輸になってしまいます.民間の市場取引を円滑に執り行うためには政府の関与が不可欠です.
  • 「日本の輸入品は食糧だと思うけど,輸出しているのは何?」「なぜ日本は貿易取引量が少ないの? 技術があるのに.」
    • 日本の輸出品は自動車などの重化学工業製品が主力です.詳しい構成は財務省「貿易統計」をご覧下さい.
    • 他国との比較は,たとえばOECD Science, Technology and Industry Scoreboardで確認できます.なぜ少ないのかについては,これといって確信のある説明や適切な文献が思いつきません.すみません.北米以外との間で制度的・文化的な壁が依然として大きいのかもしれません.
  • 「沖縄の輸出入のデータは衝撃」「ここまで差があるとは思っていなかった.資源や技術がないからかはわからないけど,世界に認められるものを作っていないと感じた」「沖縄は赤字を黒字に変える方法を考えた方が良い」「昔は成功していたらしいのでそこから何かを学んで発展していければいいと思った」
    • 経常収支は後期の講義で簡単に学ぶ予定です.が沖縄の場合経済的な要因というよりは政治的な所得移転の役割が大きい気がしていますので,後期学ぶ内容と沖縄の事例とは少し距離があるかもしれません.
    • ミクロレベルでは,輸出市場に参入するためにはそれなりに高い生産性が必要,というのが研究者の間でコンセンサスとして確立されつつあります.他よりも生産性を高める努力が必要なのは言うまでもありません.
  • 「コンテナすごい」
    • いえーい.
  • 「グローバル化を簡単に言うと外の世界とつながりやすいということ?」 
    • はい.突き詰めて考えていくとそれだけでは不明瞭で不完全ですが,明瞭かつ完全無欠な定義など存在しませんし,定義は分析したい対象に応じて柔軟に設定したほうが建設的ですので,当面はそういうざっくりとした理解でOKだと思います.
  • 「グローバル化するとテクノロジーが進歩しやすくなるけどリーマン・ショックみたいな被害も受けやすくなる」
    • 特に金融取引のグローバル化はしばしそういう側面を持つかもしれません.
  • 「リーマン・ショックはやばいと思ったけど大丈夫だったので,マスコミは騒ぎすぎだと思った」
    • 100年に1度は十分やばいと思います.
    • マスメディアではご都合主義的に自説を牽強付会するような人が少なくないのでしょう.
  • 「内容がうまく分からなかった.次回はしっかりわかるようにしたい」
    • どこがよく理解できなかったか,具体的な質問をしていただければ解説し直すことは可能です.

参考文献:

  • 安里進・高良倉吉・田名真之・豊見山和行・真栄平房昭 (2010) 『沖縄県の歴史 (第2版)』 山川出版社
  • World Trade Organization (2013) "World Trade Report 2013: Factors shaping the future of world trade," WTO Publications.


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