Wednesday, April 15, 2015

経済政策I, 第2回, 2015


講義内容
  • 実証 vs. 規範
    • 区別して論じることが大切.
    • 経済学ではどちらのアプローチも深く掘り下げられているものの,後者のややこしい議論はいったん脇に置いて前者の分析を進めるタイプの研究者が多いように感じる.(ただし前者がより重要だという先験的な根拠はない.)
  • 自然主義的誤謬
    • 事実そのものから規範的な結論を導くことはできない.論証をするときにはその形式にも注意が必要.
  • 効率性 vs. 公平性
    • 価値観が対立することはよくある.経済学だけではこの対立に決着を付けることができない.本当に大切な決断をするときには,他の何かも必要になる.
連絡
  • 来週あたり教室変更があるかもしれません.
  • 5月1日は休講にします.
  • 次回はレジュメ2に突入すると思います.
  • 履修登録は今週末で締め切りになります.履修するかどうかは慎重に検討してください.

コメントより
  • 「自然主義的誤謬は自分でもよくやる」「よく見かける」「たまにいる」「気をつけたい」
    • 意図的にこうした間違いを犯す人もいますので騙されないように.
  • 「イエスかノーかで答えられないものを細かく考えさせられる授業.深い思慮を身につけたいし,講義はとてもタメになる」「自分自身の価値観を養うことが大切だと思った」「理由付けにはきちんと論理的な考え方を反映するようにしたい」
    • 個人的には,答えを焦らず慎重に考えを深めるようにしています.しかしそのせいで,判断が遅れ後悔する瞬間もありました.イエス・ノーがよくわからない不透明な状況でも果断に決められるようになりたいとも思っています.
  • 「経済学はより効率的に考えるものだと思っていたので驚き」
    • とてもnuancedな問題です.効率性を重視するのは確かですし,効率性を捨ててまで他の何かを優先するというときにはよほど深刻な事情が要求されます.一方,効率性だけが大切ではない,ということ自体にはおそらくほとんどの経済学者が合意すると思います.
      • 効率性だけを追い求めても,実践的な政策課題を解決できるチャンスは極めて少なくまた難しいものです.(たとえばStiglitz and Rosengard 2015. 最近新しくなったんですねこの本.)
  • 「遊びが学問に活かされることもあると思うと楽しくなった」
    • 学問は暇を持て余した神々の遊びという側面も.
  • 「1日は講義がよかった」
    • 申し訳ないです.
  • 「マーシャルかっこいい」「いい話だー」
    • ですね.
  • 「駅の話めちゃくちゃ楽しかった」「けっこう面白かった」「少し楽しい」
    • 簡単な例ですが,学問の限界点が垣間見える地平まで連れて行ったつもりです.楽しんでもらえて幸いです.
  • 「AとBの周りの事情も見て判断したい.だが他の考え方・見方も参考にしたい」
    • よい考えだと思います.政策を議論するときには,客観的な判断材料を増やし,様々な角度から検討したいものですし,自分以外の考え方にも謙虚に耳を傾けたいものです.
  • 「金持ちの近くに建てればよいと思っていた」
    • どうりで我が家は交通の便が悪かったのか…
新学期は慌ただしいですねぇ.

参考文献
  • Joseph E. Stiglitz and Jay K. Rosengard (2015) Economics of the Public Sector. WW Norton & Co. (藪下史郎訳『スティグリッツ公共経済学』東洋経済新報社)

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