Thursday, July 23, 2015

国際経済学I,第13回, 2015

前述の通り,台風で休講になりましたが, 期末テストのスケジュールはシラバス通り次回実施します.

講義内容
  • 比較優位と貿易
    • 労働は限りある資源.これを無駄なく活用するためには,なるべく「得意」な産業で働いてもらうとよさそう.
    • 各国は比較優位のある財を輸出することになる.
    • 貿易は分業を通じて両国を豊かにする.ゼロサムゲームではなく,みんながwin-winになるチャンスがある. 
  • 要素価格均等化定理
    • 労働移動ができなくても,財が移動できるなら賃金が均等化してしまう.貿易を通じて我々の労働環境も外界とリンクしている.
      • テクニカルには,生産技術が同一で要素集約度逆転がなく,財市場と生産要素市場の数が一致…など現実に当てはめにくい前提条件が多い定理である(証明の骨子はレジュメの通り).
  • 多国籍企業
    • FDIは年々増加している.この波に乗っかりたい.

コメントより
  • 「沖縄は最低賃金だが,もし自由貿易が行われ輸出が増えれば最低賃金も上がるか?」
    • 最低賃金は財市場の需給バランスだけで決められているわけではないのでなんとも言えません.
    • 自由貿易をすれば賃金が上がるか,という質問は,学問的に答える価値のあるよい問いかけだと思います.一般論としてはなんとも言えません.最低賃金すれすれの労働者たちの賃金が短期的には厳しいものになる可能性も十分あると思います.
  • 「沖縄では社員が少なくアルバイトが多いので最低賃金が少なくないのかと思った」
    • 現象としては,賃金が低い非正規雇用の割合が高いのは正しいと思います.ただ,その真の原因が何なのかはもっと深く考える必要があるでしょう.
  • 「沖縄は他府県と比べて賃金が安いので,この賃金格差はなくならないのかなと思った」
    • 他府県並みの生産性があればよいのですけどね.
  • 「自由貿易で貧困国とも賃金格差がない世界になったらいいと思った」
    • たとえ貿易とは関係なくとも,より多くの人が貧困から抜け出せることができればすばらしいと思います.
  • 「労働移動ができて裁定取引可能な一国内においても,賃金格差が生じていると思った.これも理論上のことか?」
    • 講義で紹介した話の背後で想定しているような素朴な理論だと,賃金格差は生じません.なので,理論が依って立つ前提条件のどこか(労働移動が完全に自由,など)に,現実の近似として不適切なものが紛れ込んでいると考えられそうです.現実と照らし合わせながら仮定を疑う,という批判精神はとても大切だと思いますので,鋭い質問だと思いました.賃金格差がなぜ生じているのかを理解することはとても大切なテーマでもあります.
    • 労働移動が自由な状況でも(観察される)賃金に地域間格差がある状況を表現する経済理論はいくつも捻り出すことができます.
      • 「理論」という言葉の意味するところが,研究者とみなさんとで若干食い違いがあるかもしれません.経済学において「理論」は唯一無二のものではなく,もう少し広い意味で用いています.(経済理論は,何らかの整合的な論理体系をもって現実を抽象化しその本質を明らかにするもの,という程度の意味合いに私は捉えています.)
  • 「比較優位は大事なことだと思った.自分に絶対優位があったとしても,その中でも苦手なものがあるはずで,相手が得意でなくても任せた方が生産性が高まるはず.これは日常や仕事にも使えそう.」 「比較優位を持った企業・国がそれを生産した方が効率もいいし経済も良くなると思った」
    • すべてを自前でやらなくてもよいしやらないほうがよいかもしれない,という話を頭のどこかに入れておいてください.
  • 「グラフを見ながら説明があってもなかなか難しく,正直あまり理解できなかった」
    • どこが飲み込めなかったのかもう少し具体的に教えていただければ.
    • 講義後半は少し急ぎ足だったので,説明不足なところはあったかと思います.テストでは講義中に重点的に説明した部分を中心に出題しますので,枝葉の部分の理解にあまり時間を割かなくてもかまいません(もちろんすべてを完璧にするのが望ましいですけど)
  • 「特に難しいところもなかったので期末でいい点とれるようにしたい」「しっかり復習して備えたい」
    • がんばってください,期待してます.
  • 「半年間ありがとうございました!」
    • こちらこそ! いつもコメントありがとうございました.

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