Wednesday, October 9, 2013

経済政策II, 第2回


講義内容:
  • マクロ経済学の歴史の概観
    • 70年代頃から,人間行動を真剣に捉えるようになってきた.人間行動を分析するために,ミクロ経済学的な手法が積極的に取り入れられていった.
    • 普通の学生はそれよりも古い時代の経済学を中心に学んでいる.たしかに,マクロ経済の動きを体系的に把握するだけならそれでも十分収穫がある.しかし,政策的な含意を得るまで踏み込んで考えるにはそれだけでは不十分だ.
    • 講義では,テクニカルな議論は省略しつつも,新しい時代の経済学が何を見いだしてきたのか,そのエッセンスを伝える予定.
  • 数学の準備
    • 記号は,物事を最もわかりやすく効率的に伝えるための道具である.慣れないうちは取っつきにくいが,慣れたら記号抜きに議論するほうが難しいと気づくはず.少しずつでいいので,xやyといった抽象的な表現に馴染んでほしい.
    • 経済学は,モデル (model) を基にして分析する.モデルは何らかの数式が綾なす数学的関係の集まりである.経済学は,現実をありのままに分析するのではない.現実にフィットするような簡素なモデルを作り,そのモデルをいじくり倒すことで現実への洞察を得る.
    • 一次関数のような単純なものであっても,使い方次第では我々が思っている以上に有用である.

来週:
  • レジュメ2の用意をお願いします.
    • マクロのグラフを概観する
  • 単位はともかく,試験は激ムズらしいです.なるべく勉強したくない人やGPAを気にする人は履修する際注意してください.

コメントより:
  • 本ブログでは,ありがたくも出席カードにいただいたコメントに対して,すべてではありませんが返答をします.コメントによっては講義中にも取り上げることもあります.ご了承ください.
  • 「数学・経済学難しすぎ!」
    • 私も勉強し始めた頃はまったくわけが分かりませんでした.難しいと感じるのは無理もありません.
    • 参考文献に挙げているようなテキストを紐解いてみる,教員に質問する,など,必要に応じて補完してください.
    • 具体的にどこがわからなかったとコメントいただければ,改めて可能な限り説明いたします.
    • 「イージーだが曖昧で底が浅い講義」ではなく「小難しいけど学ぶ価値のある講義」を展開する予定です.履修登録するかどうかは熟慮してください.
  • 「経済学を学ぶ上で,数学を知っておかないと途中からついていけなくなる」
    • 数学を使えるに越したことはありません.が,数学を極力回避したとしても,経済学の勘所を理解することは可能です(相応の努力は必要です).数学を使った議論は見た目こそいかついですが,そこには惑わされずに,結局のところ何が大切なポイントなのかを意識して学習してください.
    • 本講義では,グラフを読み書きする能力を要求します.ガリガリ計算するわけではありませんが,グラフとじっくり向き合ってその意味するところを深く考えるトレーニングは不可避です.グラフなんて一切見たくない,という場合は途中からついていけなくなる可能性が高いです.
      • 現時点でそうした能力に不安があっても,講義になんとかしてついてこればそうした能力を著しく伸ばすことができるはずです.
    • 数学的な知識が必要になったときは,その都度簡単にではありますが講義中ないしレジュメで解説します.本講義を履修するために必要なのは,数学的な前提知識よりも,経済学に対する熱意と具体的な努力です.
    • 経済学を学ぶために改めて数学を一からやり直す必要はありませんしそもそもそんな時間はありません.必要に応じて必要なところだけやり直せば十分です.
    • 経済学の醍醐味は,中学・高校で学ぶような数学さえ扱えれば山ほど味わうことができます.数学を学ぶ価値は甚大です.
  • 「経済学の授業は数学がメイン.計算問題を解く授業をしてみては?」
    • 数学をマスターするには練習が不可欠,ということを踏まえたうれしいコメントです.
    • 本講義とは別に,中学・高校で学ぶような数学をやり直す講義があるといいなとは日々感じます.そこで学んだものはすべての経済学系科目およびその後の人生で活きるからです.
    • しかし残念ながら,私の講義中にガッツリ数学をやる予定は当面ありません.市販の教科書にはたいてい練習問題がついていますので,物足りない場合はそれにトライしてください.そこでわからないところは個別に質問いただければ対応します.
    • 実は,数学の基礎をやさしく解説するような特別レジュメをこっそり準備中です.しかし私の生産性が低いゆえに,本年度中に日の目を見ることはなさそうです.乞うご期待…
  • 「ケインズ派の経済学は経済政策のガイドには使えない」
    • そんなことない,と主張する経済学者もいます.有名どころでは,ノーベル賞受賞者のPaul Krugmanのような歴史の残る天才もいます.このあたりは議論がねじれやすい微妙なところです.
    • いろいろな立場はありますが,いずれにせよ政策運営をする際に経済学者の40年以上にわたる知的営為をことごとく無視するのはナンセンスだと思います.
      • 巷間にはそうした不誠実な議論が満ちあふれています.注意してください.
  • 「経済学の歴史はあまり知らなかったのでおもしろかった」
    • ありがとうございます.これからも「合コンでは絶対使えないおもしろトーク」をできるよう修行します.

 私のある恩師の名言に「数学はビビったら負け」というのがあります.裏を返せば「数学はやったもん勝ち」だとも思います.最初から器用にこなせる人はいません.途中であれやこれや言い訳を見つけて退却していくのも結構ですが,落ち着いて挑めばなんてことないかもしれません.「やればできる」と自分に言い聞かせてトライし続けてほしいですし,私はみなさんは「やればできる」ポテンシャルを持っていると信じています.

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