Thursday, August 15, 2013

図書館報とその他推薦図書

 今月刊行された本学図書館報に寄稿しました.知的所有権の帰属がどうなっているのかよくわからないので本ブログに掲載はしませんが,アクセスできる方はぜひご覧ください.名文です.

 学生に勧める本というテーマで,川端康成『雪国』と伊波普猷『古琉球』を取り上げました.タイトルに出てくる「リズール」は,三島由紀夫の『文章読本』から拝借しています.

 寄稿の宣伝をするだけではなんなので,以下いくつか学生向けの本を挙げます.

 お金のない学生でも,青空文庫や図書館を利用すれば充実した読書経験を積むことができます.青空文庫では,ベタですが鴎外,漱石,太宰,芥川あたりを手当たり次第繙くとよいでしょう.最近個人的には木下杢太郎や北大路魯山人の雅な文章を真似したいと企んでいるところですが,語彙力と観察力の拙い学生にはお薦めできません.

 沖縄人なら,大城立裕『カクテル・パーティー』や又吉栄喜『豚の報い』といった全国区の沖縄文芸もたしなみとして読んでおきたいですね.最近のものだと,首里城復興にまつわる与那原恵『首里城への坂道: 鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像』もいいですね.

 沖縄を取り扱った文学はどうしても政治的にシリアスな色を帯びがちですが,そうした話から距離を置きたい人(特に女性)にはよしもとばなな『なんくるない』をお薦めします.

 最近は石垣島を舞台にした池上永一『バガージマヌパナス』を読んでいました.自分の心のすさみっぷりを思い知らされましたね(オージャーガンマーが出てくるたび,漫☆画太郎のばばあを想像してしまいました).手軽な沖縄文学を求めている若者にはちょうどよいでしょう.

 沖縄の詩歌だと山之口貘は外せません.先日近所のスーパーに彼の詩がディスプレイされていて,なかなかやるな,と思った次第です.

 ただ,沖縄文学は次の一冊に繋がりにくいという意味で発展性が乏しいと感じています.誰かに影響を与えた,誰かの影響を受けた,誰かを意識して書かれた,といった知の系譜が素人目にはよくわかりません.そのため,たとえば村上春樹からフォークナーへ,安部公房からカフカへ,中原中也から小林秀雄へ,ドストエフスキーからニーチェへ,中島らもからバロウズへ,などとつながりを辿る楽しみは味わえないかもしれません.地域性に拘泥せず,王道も抜かりなく攻めることをお勧めします.


 夏休みは単位や成績と関係なしに好きな本が読めるまたとない貴重な期間です.読書という知的な愉悦を満喫しましょう.

 (経済学を勉強したいという奇特な人は,安易な啓蒙書ではなく分厚い教科書を読んでください.)

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