Monday, June 24, 2013

経済学入門I, 第10回

講義内容:
  • 金融市場モデル:
    • S=I,すなわち経済全体では貯蓄と投資は一致する.
      • 外国との取引を明示的に考える場合は,「経常収支=S - I」と修正する.
    • 貯蓄や投資が変化する要因を考えると,利子率の動向が見えてくる.
      • 貯蓄,投資,利子というものは将来時点のことを考慮しなければならない,本質的にダイナミックなものである.現在まだ起こっていないことであっても,現在の貯蓄・投資行動に影響が及び,利子率が変動しうる.
  • 経済成長はそんなにいいことなのか?
    • 格差を是正したり幸福度を高めたり,ということには必ずしも直結しない.しかしながら,成長しないことには,絶対的貧困のような社会問題に対応するための余力もない.
    • 「Occupy Wall Street」の流れに沿った統計データはAlvaredo et al. (2013)で確認できる.
      • マネーゲームをやって危機を引き起こしているだけのがめつい金融業者風情が我々の富の多くを持って行っているなんてけしからん,という議論はたしかに共感するところもある.しかし,金融業者が運用してせっせと増やそうとしているのは我々の貯金であり,彼らの仕事が我々の年金・社会保障を支えていることも確かである.
    • 不平等に関するエッセイはいろいろあるが,最近読んでいる中ではMilanovic (2011)がおもしろい(邦訳あり).不平等や格差は非常に根深い問題であり,様々な角度から理解する必要がある.
  • 生産関数の導入
    • インプットとアウトプットの関係を表すものが生産関数である.
    • 生産関数の接線の傾きは「限界生産性」を表す.講義中に説明したものは「平均生産性」であり,両者は通常一致しない.
 次週:
  • 定常状態を説明したい.

Reference:
  • Facundo Alvaredo, Anthony B. Atkinson, Thomas Piketty, and Emmanuel Saez (forthcoming) The Top 1 Percent in International and Historical Perspective, Journal of Economic Perspective.
  • Branko Milanovic (2011) The haves and the have-nots: a brief and idiosyncratic history of global inequality, New York: Basic Books. (村上彩訳『不平等について: 経済学と統計が語る26の話』みすず書房)

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