Wednesday, June 23, 2021

沖縄でShecession?

講義で使おうかと思ったが結局没にしたネタを投稿する.

コロナ禍における労働市場の動きについて,去年ゼミで学生から「She-cession」なる表現を教えてもらった.女性の方が男性よりも苦しみがち,とのこと.休校で育児負担が重たくなった,女性の多いセクター・タスクほど自粛による打撃が大きかった,などの理由が考えられる. 

She-cessionは沖縄でも生じてるのだろうか.労働力調査と毎月勤労統計調査をさっと眺めてみた.

結論は,女性に負担が集中している様子は思ったよりも見えない,という話である.

1. 労働力調査では男女差はよくわからない

ひとまず労働力調査から.

大きなショックのせいで季節調整がややこしくなりそうなところだが,ひとまず今回は2004/1から2019/12のデータを使って季節調整を施し,2019年の調整と同じように2020/1以降の季節調整を行った.

就業者数を見ると,女性より男性の方がショック後に低下しているように感じる.特に20年4月頃.

沖縄の就業者数, 男女別. 季調値.

非労働力人口を見ると,男性は変動が大きくよくわからないが,少なくとも女性が急増したようには見えない.失職し非労働力人口に移行する動きは(大きいと思っていたものの)観察できないようである.

沖縄の非労働力人口, 男女別. 季調値.

完全失業率では,女性ではなく男性のほうが上昇しているようである.

沖縄の完全失業率, 男女別. 季調値. (図では2020/1=100に基準化していると書いているがこれは間違い.)


労働力調査を眺めていると,ジョブが破壊されたのは,男性の自営業という印象を受ける(図は省略).長引く自粛で零細な飲食店や土産物屋,レンタカー事業者などが店じまいした,というイメージだ.

一方,被用者なら,男女問わず,(私の印象では)思いの外,雇用は守られているのではないだろうか(時短などはあろうが).飲食店のシャッターと張り紙を見るととても悲しい気持ちになるし「沖縄経済厳しいな…」と感じることもあるが,みんながみんな飲食業で働いているわけではないのだ.シャッターのような目に見えやすい情報だけからマクロ的な動きを推測するのは難しいものである.

労働力調査は産業・年齢・職種などいろいろなブレイクダウンがわかるが,サンプルサイズが小さくノイズが大きいので,これ以上細かい何かは見えそうにない,という気もした.


2. 毎勤では男女差が見られなくもない

毎勤でも確認してみた.以下すべて2018/1--2021/3, 5人以上事業所のデータである.季節調整は行っていない.

なお,調査対象事業所の入れ替えのためか,年始などに大きなジャンプがしばしば見られる.どういった標本調査の設計か知らないが,額面通りに捉えないほうがよい気はする.

さっそく労働者数をプロット.男女で異なるトレンドをしていた.

沖縄の労働者数,男女別, 調査産業計 (本月末).

  • 労働者数で見ると,男性は増加トレンドにある一方,女性は2020年以降減少トレンドにある.一見すると"Shecession"のようである.
セクター別に見ると,異質性があるようだ.次の図は,女性の労働者数が多いセクターを適当に選んで労働者数をプロットしたものだ.
沖縄の女性の労働者数, 産業別 (本月末).

  • 女性の中でも,増加トレンドにあるように見える産業 (D 建設業) もあれば,横ばいの産業 (O 学習支援業) もある.
  • 打撃が大きそうな宿泊業(M75, 図右下)では,コロナ禍前まで増加し,コロナ禍で減少に転じた様子が見て取れる.
  • 一方,宿泊・飲食サービスというより広いくくりでみた場合(M, 2列目右)は逆に,コロナ前が底で,コロナ期に増加へ向かっている.
  • 小売業 (I-2 4列目真ん中) は,コロナ禍前は横ばい,コロナ禍で急減したのち回復中,という様子.
  • 意外と減っていたのは金融・保険業(J, 2列目真ん中)である.
  • セクター間の労働移動でショックを吸収している動きもありそう.だがこのデータではシリアスな分析はできない気がする.
  • 女性雇用の約3割を占める医療・福祉 (P 3列目右) は,コロナ禍前は減少,コロナ期に増加,という動きになっている.産業計 (TL 左上) でコロナ期に減っている分は,医療・福祉以外での減少が積み重なったものになろう.
こうしたセクター間の異質性は,男性と女性で異なる.
次の図は男性についてセクター別にプロットしたものだ.
沖縄の男性の労働者数, 産業別 (本月末).

  • 女性と違って,金融・保険業 (J) や小売業 (I2),サービス業(他に分類されないもの) (R) は増加傾向に見える.
  • 女性と違って,建設業 (D) はコロナ禍前は減少ぎみだったが,コロナ期には増加しているように見える.他で失職した男性が流れてくるような,という一種のセーフティネット産業になっているかもしれない.
なお,労働時間やマンアワーを見ると,男女差はあまり見えなくなる.
沖縄のマンアワー, 男女別, 調査産業計.
  • どこかで変なことが起こっているような…? あまり額面通りに受け取れない.


次の図はパートタイム労働者比率である.男女ともコロナ期に低下している.男女問わず,非正規雇用が不況の調整弁になっていたように見える.
沖縄のパートタイム労働者比率, 男女別. 調査産業計.


3. まとめ的な話

丁寧な統計的分析を行ったわけではないが,目で追える範囲では,She-cessionの顕著な証拠はなく,あるともないとも判断できない.データによって異なり,労働力調査だとなし,毎勤だとありそう,という感じ.
Shecessionというよりは,男性の自営業や,男女問わず非正規雇用が悲惨な目に遭っているように感じる.
また,女性といっても,産業によって動向は様々である.

結局わかんない,という結論ならこの記事はなんだったんだ…と思われるかもしれないが,冒頭に書いたようにこれは「没ネタ」なのである (すみません).
今回わかったのは(前から知ってたが),県が集めているデータではたいしたことはわからないということである.

もちろん,就業者数が思いの外男性以上に減ってないからといって,女性が楽だ,といったことを言いたいわけではないので注意してほしい.同じ離職でも,セーフティネットからこぼれ落ちてがちなシングルマザーは男性よりも苦境に陥りやすい,といったことは考えられる.

コロナ禍で離職ショックが起こったら,それに続き労使の交渉力が変わり,賃金にも影響しそうな予感はする.が面倒なので賃金については今回はスルーで.


かれこれ1年半コロナ禍を耐え生き延びた飲食店は,かえって地元の常連客の信頼が厚い,おいしい優良店というシグナルになるような気がしている(金策だけうまいゾンビ企業かもしれないが).ワクチン接種が進むまでもう少しがんばってほしい.

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