Saturday, September 24, 2016

沖縄の経済, 準備編2: 子供の肥満

引き続きゆるふわデータエッセイ.講義で紹介するほどうまくまとまらなかったのでブログでネタ放出.

沖縄の男性は全国屈指のメタボ,と言われている.そのルーツは何だろうか.

文部科学省の学校保健統計調査を見れば,子供の身長・体重などについて都道府県別のデータが手に入る.沖縄と全国平均を比較してみよう.今回はそういうエントリ.

1. 沖縄には太った子供が多い
痩身傾向児の割合について年齢別にプロットしたのが以下のグラフである(H27年度).

9歳までは全国と大きな差はないが,10歳(小5)あたりから乖離が生じてくる.沖縄は貧しいのですべての年齢で痩せた子供が多いかとおもいきや,そうではないようだ.(標準偏差が不明であり有意な差かどうかは不明である).
なお男女別に見ても,多少のばらつきはあるものの,小学校高学年以降に差があるように見える.

肥満傾向児については以下のとおりである.
痩身傾向児と呼応しているようだ.9歳までは全国と大きな差はないが,10歳(小5)あたりから乖離が生じてくる.10歳以降に肥満が多くなるようだ.

以上のグラフからは,小学校高学年頃を境に沖縄県民は全国平均から乖離を始めることがわかる.太る方向にシフトするようだ.

2. 特定世代だけが太っているわけではない
痩身が少なく肥満が多い,のは世代効果とは言えなさそうだ.つまり,H27年度に10-15歳になる世代だけに固有の特徴とは言えない.
世代効果の有無を確認すべく,世代別に,全国との痩身・肥満出現率格差(= 沖縄の出現率 - 全国の出現率.上のグラフの赤線と青線の縦軸方向の差に対応.)を時系列で並べたものが次のグラフである.



スパゲティ状のグラフになっていてどれが誰かわからなくて恐縮だが,それぞれの折れ線はH27年度における年齢で見た世代を表している.
世代によってばらつきはあるものの,おおむねどの世代でも,痩身出現率は全国より低く(負の領域にありがち),肥満出現率は全国より高い(正の領域にありがち)ように見える.
(適当な信頼区間を作ったらほとんどの世代は全国と差がない,という結論になってしまうかもしれないが.)


3. 差が付くのは分布の裾野だけ
痩身・肥満の出現率に差があると言っても,サンプルサイズが小さくて外れ値が目立つだけかもしれない.
外れ値ではなく,体重の平均を見るとどうだろうか.以下のグラフは男女別に平均体重とその1σ区間をプロットしたものである.1σ区間に限って見ればどの年齢でも沖縄(赤)と全国(青)にほとんど違いはないと言える.

全国とはあくまでも分布の裾野の方で差が付いているようだ.沖縄の子供が平均的に太めの体格を持っているわけではない.

これらのデータからは示しようがないが,おそらく,遺伝的に太りやすいわけでもないだろう.社会的な要因で後天的に肥満児が生み出されている予感がする.
とりわけ,ごく一部の貧困世帯において,物質的にも精神的にもストレスの大きい生活が営まれているのかもしれない.およそ10歳頃から物心が付き,家庭や学校の酷さに気づき始めるのかもしれない.






あっという間に夏休みが終わってしまう.研究も講義準備もまるで進まない…


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