Thursday, November 19, 2015

国際経済学II, 第6-7回, 2015

これまで生きてきて様々な災害や暴挙を見聞きしてきたが,今回はとりわけつらく感じた.音楽やスポーツや食事といった,文化的なものが標的となったせいもある.

理性的な対話が望めない狂信的異常集団,とはどうも思えない.彼らのインセンティブや置かれた環境を理解しないことには何とも語り得ないだろう.そこで慌てて池内恵 (2015) 『イスラーム国の衝撃』文藝春秋,を読んだ.たしかに彼らの計算高さを伺うことができる.(知っておきたかったファクトが一通り簡潔に整理されており,全体的に端正でとてもよい本だった.一般に,テレビやネットでお勉強するよりも,プロの本や論文をひとつ読んだ方がよいと思う.)



締め切りラッシュで忙しいため少し間が空いた.時間の使い方を少し間違えたら詰む予感がするほどピンチではあるが,中間試験前なのでいったん更新.

講義内容
  • 国際収支の実態
    • 経常収支の主な構成要素は貿易・サービス収支.ただ近年は所得収支も大きくなっている.
    • 原油の輸入動向は経常収支の動きに影響を強く持っている.
  • SNAと国際収支
    • 国際収支統計はSNAと整合的にデザインされている.
    • 経常収支の黒字・赤字は国際的なお金の貸し借りの問題であることがうかがえる.
  • 外国為替市場の基本
    • あまたの市場参加者が絶え間なく膨大な取引を繰り広げている.
    • 為替レートは外国通貨の(相対)価格,と考えると混乱しにくいはず.
    • フォーワード取引を使えば,為替変動リスクに対処できる.
    • 資産や負債を外貨建てで保有すると,為替変動リスクにさらされることになる.こうしたリスクは,資産・負債をマッチングさせることでリスクをバランスさせることで回避できる.

 コメントより
  • 「基軸通貨のメリット・デメリットは?」
    • よい質問でした.教室でお答えしたときは,(非ランダム)ネットワークの中心として基軸通貨が存在することとしないことの違いでもって説明しました.質問に答えたことにならなかった気もするので少し補足します.
    • 基軸通貨を持つ国にとってのメリットは,自国の通貨のままで国際取引が可能なことでしょう.為替変動リスクに直面せず済みます.貨幣の取引手段としての役割が強く発揮されます.
      • いわゆる通貨発行益も生じます.講義後にちらっと言った法外な特権(exorbitant privilege)について詳しくは,B. Eichengreen (2012) 『とてつもない特権: 君臨する基軸通貨ドルの不安』をご覧ください.
    • 参考書の橋本・小川・熊本『国際金融論をつかむ』の第7章にも詳細な議論がありますのでご参考に.
      • (私は専門でないので,P. Krugman (1995) "Currencies and Crises"に出てくる整理で理解が止まっています…)
  • 「ドルは基軸通貨で,英語も全国共通語とアメリカが中心に経済が動いていることがわかった」
    • たしかにそうなので英語で発信されている情報を理解できるよう勉強しましょう.
  • 「ヘッジファンドについてもっと知りたい」
    • オーソドックスな金融理論の勉強からしてみては.
  • 「日本にもヘッジファンドは存在するか?」
    • もちろん.ただ実態は私もよく知りません.
  • 「将来活用していけたらいいなと思った」 
    • 県内の企業に就職したとして,輸出入・為替と関わるチャンスはたくさんありますよ.
  • 「為替レートの意味がわかった」「計算は理解できた」
    • いいね!
  • 「為替レートはどのように決まるのか?」
    • それがわかれば苦労しません.が基本的な理論はレジュメ5で学びます.もっと詳しく,という場合は国際金融の教科書を読みましょう.
  • 「円高のときにいろいろ買ったことを爆買いの話で思い出した」
    • 円安になった今は,CDや洋書を買うのがためらわれます.
  • 「近いうちに台湾に行きますがどうですか?」 
    • 4, 5回行ったことがありますがおすすめです.都会も田舎も見所たくさん,コミュニケーションも取りやすく治安も良いです.日中台の国際関係史も勉強してからいきましょう.
  • 「テストでは高い点数をとれるように復習をしていきたい」「テストがんばります」
    • がんばってください.講義内容をマスターしていればなんとかなるような問題を作ります.

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