講義内容
コメントより
- 比較優位続き
- 貿易がスタートすると,(比較優位の意味で)苦手な分野は縮小して,輸入に取って代わられる.他方で,苦手な分野に使われていた資源(労働)がより得意な分野に使われるようになる.
- 比較優位(生産技術)が,貿易の流れを規定する.
- 比較優位を無視した政策(性急な工業化など)は失敗する恐れもある.
- 何かをやると,その裏では何かをやることができなくなる.経済学の学習を通じて,そういう根源的なトレードオフを意識できるようになってほしい.
- 要素価格均等化定理
- 労働が移動できず裁定取引ができないように見えても,財が移動していれば,特定の状況下では賃金が均等化してしまうかもしれない.財市場と労働市場はリンクしているのだ.
- 賃金と一口に言っても現実には低い人から高い人まで様々で,データから検証しようと思うと一苦労する.
- 有名な定理だけに多くの検証がなされてきた.残念ながら必ずしも支持されていない(最近だとBerrnard, Redding, and Schott 2013)ものの,定理の背景にある枠組みは広く受け入れられている(盲目的に信じられている,という意ではない).
- レジュメ4の残りをやれる範囲でやります.再来週はそれを踏まえて期末試験を行います.
- 期末試験向けの練習問題をアップロードしました.好成績を収めたい方は挑んでみてはいかがでしょうか.
- 期末試験に何らかの理由で参加できない場合,事前にご相談ください.
- 来週の午後は講演会があるらしいのでご参加ください.
コメントより
- 「機会費用や比較優位は義務教育に取り入れるべき」
- 中等教育においてどういう経済学を教えるべきかはけっこう議論の分かれるところです. 個人的には,経済学を学ぶバックボーンとなる英数国をみっちりやるべきだと感じます.
- 「比較優位という単語は知っていたが,その意味を深く勉強できてよかった」
- この講義で最も理解してほしい概念が比較優位ですので,こちらもうれしいです.
- 「貿易をすることで社会はよりよい方向に進むんですね!」
- そうあるといいですね.
- 「貿易を縮小するとどうなるんですか?」
- 貿易がどういう理由で縮小したかにもよりますかね.データで検証するのも容易ではなさそうです.
- 「要素価格均等化定理が成立する理由が知りたい」
- レジュメの補注では詳細を説明しています.講義では時間の都合上,イメージをお伝えするにとどめるかもしれません.
- 「要素価格均等化は表で表すと分かるかも」
- 整理して理解していただくとよいですね.
- 「外国の食品安全を強化すべき」
- 衛生や環境の問題を国際貿易と絡めて考えるとなかなか厄介なことになります.巧妙な非関税障壁にもなりえますしね.安易に結論を出さずいろいろ調べてみては.
- 「計算は出さないでくださいーーーーーーー」
- 出します.
- 「割り算がたくさん出てきて大変でした」
- 講義のスピードに追いつけなくても良いので,焦らず落ち着いて考えて下さい.
- 「計算が出たからといって先生が謝るのはおかしいと思う.経済学だから,計算が出るのは当たり前だと思う.」
- 泣けるコメントありがとうございます.
- 数学が全くできない人は,単に個人の怠慢だけが原因ではないはずです.しかるがゆえに,小学生レベルの算数すら理解できないのは怠けてきたお前が悪いんでしょ,と突き放すのは忍びないと感じています.再三に渡る履修取り消し警告にもめげずに,数学は苦手ながらこの講義に何か大事なものを求めて履修している学生がいるかもしれない,と想像すると,受講生の学力に合わせて講義内容を適切に調整しきれない申し訳無さを感じます.
- 微分や凸最適化を学ぶ講義「経済数学」を開講して,もう少し深いレベルで体系的に専門科目を学ぶチャンスを用意したいですね.公務員試験の経済学に対応しやすくもなるでしょう.
- ただし本学部にとって経済学教育こそが特化すべき比較優位かどうかは検討の余地があります.
- 現実問題として本学で経済学をしっかり勉強するには,一定以上の学力とモチベーションを持つ有志の学生数名で集まり,教員を巻き込んで自主ゼミなどインフォーマルな勉強会を開くのが現時点では唯一の最適解ではないかと思います.
- 経済数学を学ぶ経路を増やすべく,図書館に経済数学本を地道にリクエストしているところです.
参考文献
- Andrew B. Bernard, Stephen J. Redding, and Peter K. Schott (2013) Testing for Factor Price Equality with Unobserved Differences in Factor Quality or Productivity, American Economic Journal: Microeconomics 5, 135--163.
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