少し前の日経新聞に労働分配率(i.e., $wL/Y$)の国際比較が載っていたのをきっかけに,沖縄の労働分配率(2001-2011年)を計算してみた.いわゆるKaldor factsとして労働分配率は時間を通じてまぁまぁstableであることが知られているものの,近年では先進各国で少しずつ変化が見られるようになってきている.
労働分配率の定義にはいろいろありえるが,ここでは野田・阿部(2010)に倣って以下の指標を計算した.
\begin{align}\mbox{index 1} &= \frac{\mbox{県内雇用者報酬}}{\mbox{県民所得}}, \\
\mbox{index 2} &= \frac{\mbox{県内雇用者報酬} / \mbox{雇用者数}}{\mbox{県民所得} / \mbox{就業者数}}, \\
\mbox{index 5} &= \frac{\mbox{県内雇用者報酬} / \mbox{雇用者数}}{\mbox{県内総生産} / \mbox{就業者数}}.
\end{align}
ただし,野田・阿部と異なり,県内総生産は要素費用で表示(雇用者報酬+営業余剰・混合所得+固定資本減耗)した名目値を用いている(市場価格を用いても大差はない.県民所得も要素価格表示で.すべて名目値.).
同じ要領で, 資本所得が所得に占める割合も計算した.つまり,(1)-(3)式の定義で雇用者報酬を営業余剰・混合所得に置き換えたものを再計算した.結果は以下の通り.
参考文献:
労働分配率の定義にはいろいろありえるが,ここでは野田・阿部(2010)に倣って以下の指標を計算した.
\begin{align}\mbox{index 1} &= \frac{\mbox{県内雇用者報酬}}{\mbox{県民所得}}, \\
\mbox{index 2} &= \frac{\mbox{県内雇用者報酬} / \mbox{雇用者数}}{\mbox{県民所得} / \mbox{就業者数}}, \\
\mbox{index 5} &= \frac{\mbox{県内雇用者報酬} / \mbox{雇用者数}}{\mbox{県内総生産} / \mbox{就業者数}}.
\end{align}
ただし,野田・阿部と異なり,県内総生産は要素費用で表示(雇用者報酬+営業余剰・混合所得+固定資本減耗)した名目値を用いている(市場価格を用いても大差はない.県民所得も要素価格表示で.すべて名目値.).
沖縄県(青実線)と日本(黒点線)の労働分配率の推移.横軸は年度.出典:沖縄県「県民経済計算」「労働力調査」,内閣府「国民経済計算(2005年基準)」,総務省「労働力調査」. |
- どの指標で見ても,沖縄県の労働分配率(実線)は全国(点線)より低いようだ.産業構造の違い,資本財調達コストの違い,スキル構成の違い,測定誤差,などいろいろ考えられる.
- どの指標で見ても,全国とおおむね似たような動きをしている.労働分配率が変化する理由は,およそ内地と同じであろう.
- ただし2004年度頃は全国よりも急速に労働分配率が低下していたようだ.この時期には理由はよくわからないが沖縄の雇用者報酬が大きく減っている.
同じ要領で, 資本所得が所得に占める割合も計算した.つまり,(1)-(3)式の定義で雇用者報酬を営業余剰・混合所得に置き換えたものを再計算した.結果は以下の通り.
沖縄県(赤実線)と日本(黒点線)の資本分配率の推移.横軸は年度.出典:沖縄県「県民経済計算」「労働力調査」,内閣府「国民経済計算(2005年基準)」,総務省「労働力調査」. |
- 当然ではあるが,労働分配率とは逆の動きをしている.固定資本減耗はless volatileだ.
- 2004年度前後を除くと,おおむね沖縄県と全国の動きは似ている.また,沖縄県のほうが資本のシェアは高そうに見える.(内地資本の市場支配力が高い?)
参考文献:
- 野田知彦・阿部正浩 (2010) 『労働分配率、賃金低下、非正規雇用増加の背景とその政策対応pp.3-46,pp.439-468』 in 樋口美雄編『バブル/デフレ期の日本経済と経済政策6 労働市場と所得分配』 慶應義塾大学出版会.
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