講義内容:
コメントより:
参考文献:
- 国民所得勘定
- 生産,分配,支出,という3つの視点で経済活動を捉える.
- 三面等価はマクロ経済学における最重要概念である.
- しかし,我々が対象とする,経済活動が国際的に入り組んだ状況では,「生産 = 所得」の部分で食い違いが起こる.
- 名目GDP(生産)と名目GDI(所得)が一致していても,実質GDPと実質GDIが一致するとは限らない.対外的な購買力(交易条件)に変化があると,貿易を通じて実質的な所得に差が出てくるからである.
- 詳しくはよりアドバンストな学習をする際に考えると良い.
- 実際の数字を概観
- 純輸出はけっこう小さい.が重要じゃないわけではない.
- 国際収支表
- 現代の国際マクロ経済の動きを掴むには,お金の流れを体系的に把握することが不可欠.国際収支の仕組みを理解するのはその前提条件として大切.
- 基準が2008年に改訂された.講義ではニューバージョンを解説.
- 国際収支表をより深く理解する必要がある場合,古いバージョンに基づいた解説ではあるが,日本銀行国際収支統計研究会 (2000) が最も手元に置いておきたい一冊になる.
- vintage化した知識をアップデートするのはなかなか大変.自分も年を取った…と慨嘆したいところだが,そもそも自分こそ新しい知識を生み出し周りに勉強させる側であって愚痴を言っている場合ではない.
- 学祭で休講になります.
- レジュメ4も用意しておくとよいでしょう.
コメントより:
- 「沖縄のGDPなどはどこで調べれば?」
- 「沖縄県統計資料WEBサイト」で県が諸々の公式統計をまとめています.ここから「県民経済計算」などをたどっていけば,講義中にちょくちょく紹介するような数字が得られます.
- 総務省などの中央省庁が公表しているデータ(たいていの統計はe-Statにまとめられています)でも,「都道府県別」というくくりでまとめられていることがあります.
- 民間企業や独法(出版社やシンクタンクなど)も都道府県別でデータを作成・公表していることがあります(無料とは限りません).
- 「沖縄の貿易赤字は止められないのか? 世界でどうにかした案はないか?」
- 「貿易赤字は悪,貿易黒字は善」とは限りません.
- たとえば,たしかに貿易黒字だけど,安く買いたたかれているだけ,といった状況もありえます.
- 貿易赤字を食い止めることを優先するとかえって別の歪みが生じることもあります.
- 貿易は自国の商品を一方的に売りつけるものではなく,互いに「交換する」ものです.貿易黒字は我々をより豊かに,より幸せにする手段であっても,目指すべき目的となるとは限りません.
- 貿易赤字から黒字へと転換した具体例を実際に示しておきます.次のグラフはデンマークのデータです:
- 経常収支がおおまかに貿易の黒字・赤字を捉えるフローの指標です.
- 90年を境に,経常赤字(貿易赤字)から経常黒字(貿易黒字)へと転換しています.
- 対外純資産は,貿易で積み上げてきた資産・負債を捉えるストックの指標です.
- 80年代後半頃から上昇し始め, 最近では純債務国から純資産国へと転換している様子が見て取れます.
- 同様に,ノルウェイとカナダのデータも示しておきます.
- これらの国で具体的にどういう転換が起こったのかは私は詳しく存じません.これをヒントにしてご自身で調べてみてください.
- 地域レベルのデータでも探せばいろいろ出てくると思います.が寡聞にしていい例は思いつきません.
- 沖縄の移出・輸出を増やしたい,と復帰以来各所で議論されていますが,現実は甘くないようです.
- 沖縄の主要な輸出産業は,観光関連産業になります(サービスを輸出).他に沖縄が輸出できるのは,泡盛や一部の農産品など,自然を活かした商品が多そうです.しかしこれらは規模の経済が働きにくく,また外国で経済成長が進んでも需要がなかなか増えない(需要の所得弾力性が低い)タイプの商品かもしれません.
- 一方で,人知を凝らし洗練された商品はなかなか見当たらない気がします.
- 輸出を増やすには,売れる物を作り,遠方にいる顧客のハートを掴み,生産・流通プロセスの無駄を省かねばなりません.これらは究極的には,自然環境や政府ではなく我々自身が深慮と機転をもって生み出していくものだと思います.
- 開発経済学の分野で類似の議論が積み重ねられています.「輸入代替政策」などのキーワードを頼りに調べてみるとよいでしょう.
- Todaro and Smith (2011)という有名な教科書には「輸入代替で工業化,という戦略がたいてい失敗したのはみんなが認めるところ」といった記述があります.安易に輸出促進を目指してもなかなかうまくいかないようです.
デンマークの対外ポジション (単位: %). 出典: Lane and Milesi-Ferreti (2007) |
ノルウェイの対外ポジション (単位: %). 出典: 同上. |
カナダの対外ポジション (単位: %). 出典: 同上. |
参考文献:
- Todaro, Michael P., and Stephen C. Smith (2011) ``Economic Development (11th ed.)" Prentice Hall. (OCDI開発経済研究会訳『トダロとスミスの開発経済学』ピアソン桐原)
- 日本銀行国際収支統計研究会 (2000) 『入門国際収支: 統計の見方・使い方と実践的活用法』 東洋経済新報社
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