講義内容:
コメントより:
独り言:
- マクロの数字を読むための基礎知識:
- 名目と実質を区別しよう
- 通貨が異なる国の間で実質GDPなどを比較するには,物価だけでなく為替レートも調整する必要がある.物価と為替を調整するには,レジュメ5で学ぶ購買力平価の考え方を使うと便利だ.実際,世銀やOECDで世界各国のデータを探せば,PPP(購買力平価)で評価した指標を見つけることができる.
- 一人あたりで見ると,マクロの数字もイメージしやすくなる.
- 物価の違いを考慮したければ物価で割る,人口規模の違いを考慮したければ人口で割る.割り算は大切だ.
- 国民所得勘定
- 生産,分配,支出,という3つの視点で経済活動を捉える.(支出については次回)
- GDPは付加価値の総和.
- 新しく生み出した価値こそが我々の所得の源泉になっている.
- レジュメ3の用意もお願いします
- GDPの話の残り
- 国際収支統計を理解する
コメントより:
- 「GDPは日本の景気を知る大事なデータだと感じた」
- よりリアルタイムに景気を反映する統計データは他にもいくつかあります.内閣府がまとめている景気動向指数はその一つです.
- 「説明がわかりやすい」
- ありがとうございます.でもちょっと進行が遅い気もしています.
- 「都道府県によって賃金や物価に違いがあるのはなぜか?賃金や物価を均等化させることはできるのか?」
- とてもよい質問ありがとうございます.
- レジュメ5で触れる購買力平価の考え方ともつながります.
- この問いを突き詰めていくと立派な学術論文にもなり得ます.ご質問は「地域間格差を解消するにはどうすれば?」といったディープな問いとも直結しているでしょう.
- 要は取引費用が存在するということですが,私の専門分野でもあるのでもう少し長めに説明してみます.
- もし「どこでもドア」を誰もが気軽に使える状況であれば,賃金や物価の地域間格差はなくなるはずです.いわゆる裁定取引がやり尽くされるからです.
- つまり,物価に差がある限り,安い地域で仕入れて高い地域でそれを売れば,楽してぼろ儲けできます.高賃金地域にいる企業は,賃金の低い地域から労働者を連れて来れば人件費を大幅削減できるでしょう.
- しかし,このように楽してぼろ儲けできる状況は,あったとしても長続きしません.物価の安いところでは物価が上がり,物価の高いところでは物価が下がっていくことになり,格差はそのうち消滅していきます.
- 現実にはご指摘の通り物価に大きな差があります.これは「どこでもドア」が存在しないからです.つまり,物を運ぶ,人を移動させる,にはコストがかかるわけで,上述のような裁定取引を十分行うことができないのです.
- 輸送費用が高すぎて,運ぶことが現実的でない商品はたくさんあります.
- たとえば,六本木ヒルズを那覇市に運んでくることができないように,住宅や土地は動かせません.他にも,サービス業の多くは運べません.沖縄にいながらにして渋谷のヘアサロンで供給される美容サービスは利用できないのです.
- このように,貿易できない商品がある場合,地域間で物価の水準やその動きに差が出てきます.
- たとえば国際マクロにおいてはバラッサ・サムエルソン効果が有名です.
- 東京のような大都市で地価や賃金が高いのは,人や企業がわんさか集まり住んでいるからこそ生じるプラスアルファの何かがあるからです.
- 都市経済学では,このプラスアルファの何かを,集積の経済と呼びます.
- 物価や賃金の格差をなくす,というのはこの世に輸送費用(や情報の不完全性)がある限り無理でしょう.
- もしかしたら強引に政治的なコントロールをすればそうした無茶ができるかもしれませんが,法や統計が把握できない地下経済では政府の思い通りにならない取引が行われるかもしれません.
- 経済学者は輸送費用がまったくないという非現実的な世界をシミュレーションすることもできます.たとえばBehrens et al. (2011).
- 物価や名目賃金に地域格差があったとしても,人々が自由に住む場所を選べる場合,実際に住んでいるところが結局は本人にとって一番幸せ,という状況になります.
- 日本だと,戦後,特に70年代頃から実質的な幸せ度(効用)で見た地域間格差は縮まりつつあるそうです.(Nakajima and Tabuchi 2011)
- ただし,ある種の外部性や不完全性があれば,みんながみんな不幸な場所に住んでいる,という状況は理論上はあり得ます.
- Kristian Behrens, Giordano Mion, Yasusada Murata, and Jens Südekum (2011) Spatial Frictions, CEPR Discussion Paper #8572.
- Kentaro Nakajima and Takatoshi Tabuchi (2011) Estimating Interregional Utility Differentials, Journal of Regional Science 51, pp. 31--46.
独り言:
- レジュメ6以降何をしようか悩ましい.割り算と一次関数以上の高度な数学を封印した状態でどこまでいけるのか.コンシューマーゲームのやりこみにありそうな,初期レベルプレイのようなものを感じる.
- 初期レベルで学べる国際マクロってどのあたりが面白いんだろう…投機アタックか最適通貨圏かな.
- 当初はMetzler図をやろうと思っていたが,学生にアピールしにくい気がしている.
- もっと大胆に内容をカットしなければ.
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