Wednesday, July 29, 2015

経済政策I, 第14回, 2015

試験おつかれさまでした.

今回仕掛けたボーナスゲームは,残念ながら81人受験した中で,高得点にチェックをつけた人が回答者の20%を上回る30人いました.したがって,全員のボーナス点はゼロです.残念!これぞ共有地の悲劇.
(普通の囚人のジレンマゲームと少し違い,成績が十分よくてボーナスなしでもSの可能性が高い人は,低得点にチェックしてもよいと思いました. )


とはいえ,ボーナスなしでも平均点は十分高く,ちゃんと勉強すれば難しくないと思います.60点未満の人はそれなりの理由があるのでは.
  • 平均75.1, 中央値76.5, 標準偏差16.4. 満点は6名いた.

ボーナスゲームで高得点にチェックをつけた人がどういう人なのか,簡単なlogitとprobitを回してみた.結果,
  1. GPAが低い人は高得点を選びやすい,
  2. 欠席が少ない人は高得点を選びやすい,
  3. 期末自体のスコアや性別ダミーは無関係,
ということがわかった(一連の診断は行っていない.観察できない個人特性も無視.).
GPAが低い人ほど平均的にはフリーライダーになりやすいというのはなんとなく直感的である.しかし出席数が多い人ほど非協力的な戦略を選びやすいのはなぜかよくわからない(なお,出席数は期末のスコアにも有意に効かない).

ともあれ,約6割の人が協力的な戦略を選んだことに驚き.本学の学生は実に牧歌的だという印象を受けた.次年度は初回講義で同じことをやり,比較群を作ってはどうかなぁ.

Tuesday, July 28, 2015

国際経済学I,第14回, 2015

テストお疲れさまでした.補講も台風の中にも関わらずたくさんの方に出席いただきありがとうございました.

難易度はおおよそ例年通りかやや易化というところでしたが,苦戦した人が多かったようです.あまり手応えがないテストだったのではないでしょうか.その中でも満点は1名いました.
素点の分布は以下の通りです.
  • 平均が67.4点,中央値が69点,標準偏差が17.4.
  • 適当に重回帰したときに,出席回数が例年と違って有意にならなかった.女子ダミーは例年通り有意ではない.

中間試験はもう少しよかったので,適当に平均して授業参加点を足せば3/4強程度の人は合格ラインを越えるのではないでしょうか.


できが悪かったところに一部コメント:
  • 関税を課すと,消費者価格だけでなく生産者価格も上昇する.消費者が11000円払って買うときは,国内生産者も11000円で売れるはず.レジュメにも同様の箇所があり簡単な問題だと思っていたが,ほとんどの人が間違えていた.
  • 関税の余剰分析は,レジュメ・練習問題を理解していればむずかしくないはず.特にトリッキーな設問ではない.
  • 機会費用の計算は,試験直前にやったのにも関わらずできが悪かった.割り算でつまづいている人多すぎ.
  • 輸出する品目は,比較優位があるものになる.

採点というルーチン・ワークをやっていると,このまま自分の創造性が枯渇しまうのではないか,というような強迫観念に囚われてしまう.あまり時間はかけたくないものだ(マジメにやってますが).

Thursday, July 23, 2015

経済政策I, 第13回, 2015


講義内容
  • 展開形ゲームの均衡を求める
    • タイミング的に後ろのノードから考えよう.
  • 時間不整合性
    • 事前と事後とで話が食い違ってしまうことがある.そこにつけいる隙が生まれる.

コメントより
  • 「人のインセンティブは,逆方向に働きがちだと思った」
    • 自分の思い通りになるとは限らないとは思います.
  • 「どうせ誰かがやるからいいだろう,といった考えを持つ人がいるが,そんな人をつくらないような策を考えるようにしたい」
    • 問題のすべてを属人的な要因に押しつけず,フリーライダーが生じるような制度的土壌があるのか,あったならばどうすればよいのか,を考えるようにするとよいと思います.
  • 「今を生きるより今を楽しむほうがキリギリスらしい(笑)」
    • お,おう.
  • 「講義で飛ばしたところも面白そうだったので学びたいですが…自分で読んでみます」
    • 読んでみてわかりにくいところは教えてください.
  • 「複数の均衡を求めることは難しい」
    • そうですね.でも,展開形ゲームの部分では均衡は一つしかないケースしか扱っていませんが….
  • 「半年間お疲れさまでした!」
    • こちらこそ!
  • 「期末に向けてしっかり勉強します!!」「いい点が取れるようにがんばりたい」
    • がんばって!!
  • 「理解できた」
    • おう.

国際経済学I,第13回, 2015

前述の通り,台風で休講になりましたが, 期末テストのスケジュールはシラバス通り次回実施します.

講義内容
  • 比較優位と貿易
    • 労働は限りある資源.これを無駄なく活用するためには,なるべく「得意」な産業で働いてもらうとよさそう.
    • 各国は比較優位のある財を輸出することになる.
    • 貿易は分業を通じて両国を豊かにする.ゼロサムゲームではなく,みんながwin-winになるチャンスがある. 
  • 要素価格均等化定理
    • 労働移動ができなくても,財が移動できるなら賃金が均等化してしまう.貿易を通じて我々の労働環境も外界とリンクしている.
      • テクニカルには,生産技術が同一で要素集約度逆転がなく,財市場と生産要素市場の数が一致…など現実に当てはめにくい前提条件が多い定理である(証明の骨子はレジュメの通り).
  • 多国籍企業
    • FDIは年々増加している.この波に乗っかりたい.

コメントより
  • 「沖縄は最低賃金だが,もし自由貿易が行われ輸出が増えれば最低賃金も上がるか?」
    • 最低賃金は財市場の需給バランスだけで決められているわけではないのでなんとも言えません.
    • 自由貿易をすれば賃金が上がるか,という質問は,学問的に答える価値のあるよい問いかけだと思います.一般論としてはなんとも言えません.最低賃金すれすれの労働者たちの賃金が短期的には厳しいものになる可能性も十分あると思います.
  • 「沖縄では社員が少なくアルバイトが多いので最低賃金が少なくないのかと思った」
    • 現象としては,賃金が低い非正規雇用の割合が高いのは正しいと思います.ただ,その真の原因が何なのかはもっと深く考える必要があるでしょう.
  • 「沖縄は他府県と比べて賃金が安いので,この賃金格差はなくならないのかなと思った」
    • 他府県並みの生産性があればよいのですけどね.
  • 「自由貿易で貧困国とも賃金格差がない世界になったらいいと思った」
    • たとえ貿易とは関係なくとも,より多くの人が貧困から抜け出せることができればすばらしいと思います.
  • 「労働移動ができて裁定取引可能な一国内においても,賃金格差が生じていると思った.これも理論上のことか?」
    • 講義で紹介した話の背後で想定しているような素朴な理論だと,賃金格差は生じません.なので,理論が依って立つ前提条件のどこか(労働移動が完全に自由,など)に,現実の近似として不適切なものが紛れ込んでいると考えられそうです.現実と照らし合わせながら仮定を疑う,という批判精神はとても大切だと思いますので,鋭い質問だと思いました.賃金格差がなぜ生じているのかを理解することはとても大切なテーマでもあります.
    • 労働移動が自由な状況でも(観察される)賃金に地域間格差がある状況を表現する経済理論はいくつも捻り出すことができます.
      • 「理論」という言葉の意味するところが,研究者とみなさんとで若干食い違いがあるかもしれません.経済学において「理論」は唯一無二のものではなく,もう少し広い意味で用いています.(経済理論は,何らかの整合的な論理体系をもって現実を抽象化しその本質を明らかにするもの,という程度の意味合いに私は捉えています.)
  • 「比較優位は大事なことだと思った.自分に絶対優位があったとしても,その中でも苦手なものがあるはずで,相手が得意でなくても任せた方が生産性が高まるはず.これは日常や仕事にも使えそう.」 「比較優位を持った企業・国がそれを生産した方が効率もいいし経済も良くなると思った」
    • すべてを自前でやらなくてもよいしやらないほうがよいかもしれない,という話を頭のどこかに入れておいてください.
  • 「グラフを見ながら説明があってもなかなか難しく,正直あまり理解できなかった」
    • どこが飲み込めなかったのかもう少し具体的に教えていただければ.
    • 講義後半は少し急ぎ足だったので,説明不足なところはあったかと思います.テストでは講義中に重点的に説明した部分を中心に出題しますので,枝葉の部分の理解にあまり時間を割かなくてもかまいません(もちろんすべてを完璧にするのが望ましいですけど)
  • 「特に難しいところもなかったので期末でいい点とれるようにしたい」「しっかり復習して備えたい」
    • がんばってください,期待してます.
  • 「半年間ありがとうございました!」
    • こちらこそ! いつもコメントありがとうございました.

Thursday, July 16, 2015

15年度前期の読書記録

そろそろ夏休み.学生は休み中に本たくさん読んでください.

自分も本は継続的に読まないといけない.研究業務がメインなので新書すら通読するのはかなりキツイけど,最近読んだ本の一部を簡単にまとめる.
  • 久保拓弥『データ解析のための統計モデリング入門: 一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC』岩波書店
    • GLM入門.もう,きゃーすてき抱いてー,って感じの心地よいスマートさ.私は本書レベルの,中上級統計の知識や実戦経験がすっぽり抜けているので,読書の限界便益がとても高かった.本書に倣ってRを動かせばすぐ使えるようになる.
      • GLMは経済学界隈ではあまり見ない気がする(もちろん離散選択は死ぬほどあるが).Wooldridgeにはちょこっと載っている(追記: 山程載ってました)けど,GreeneやDavidson-MacKinnon, Baltagi, Hsiaoなどには載っていない.私も論文で使えるかというと…
      • ちなみに,MathematicaでもGeneralizedLinearModelFitでGLMはすぐ実装できる(誰得).
  • ガブリエル・ズックマン (2015) 『失われた国家の富』NTT出版
    • タックス・ヘイブンをめぐるラディカルな啓蒙的政策提言本.最近話題のギリシャは徴税のコンプライアンスが低すぎることも背景にあると思うので,こうした議論は貴重.私にとっては論調が過激で,暗殺されないか心配になってしまう.
    • 節税・脱税を踏まえた上での租税システムのよりディテールな設計については,Joel Slemrodの本を別途参照するとよいだろう.
    • Zucman (2013 QJE)はグローバル・インバランスやLucas Paradoxの議論をこれまでと違った角度から説明していてそのインパクトは無視できない.
  • Mark Taylor (ed.) (2010) Purchasing Power Parity and Real Exchange Rates, Routledge.
    • 購買力平価の実証をめぐる論文集.国際金融の門外漢的には,冒頭の展望論文がとてもためになった.
  • 森田果 (2014) 『実証分析入門: データから「因果関係」を読み解く作法』日本評論社
    • 先輩に勧められたものの,ぱらぱらめくった限り入門的すぎて新情報もないのであまりちゃんと読んでいない.しかし,ごつい数式をほとんど使わずに最近よく使われる手法を手短かつ直感的に解説しているあたり,とても深いレベルで本質をつかんでいる人にしか書けない本だと思う.数式は苦手だけどRubin的因果推論のエッセンスを知りたいという人にお勧めか.
    • 最近手に入れたImbens and Rubinも「An Introduction」を名乗っているけど,個人的にはこちらのほうがもう少し時間をかけて読む価値がありそう.
  • 吉村富美子 (2013) 『英文ライティングと引用の作法: 盗用と言われないための英文指導』研究社
    • コピペはダメ絶対,とはSTAP細胞事件を思い出すまでもなくこの業界に生きる人にとっては当たり前のことである.しかし,第一言語でない言語,典型的には我々にとっての英語,で論文を書く人にとって,自分の言葉だけで書くことは困難だ.こうした状況で他人の言い回しをトレースした文章を杓子定規に盗用だ,アカデミックなモラルに反している,と認定することは性急かもしれない.絶望的な表現力不足の中で論文を書こうとすれば,先行研究の表現を借用したり,文章をパッチワークにしたりするのは不可抗力な部分があるからだ.たしかに私もコーパスやグースカを使い倒しながら英語論文を書いており,冷汗三斗な問題である.
    • 本書は,語学を学習するプロセスとしての模倣と,学術的道徳に反する盗用との微妙な対立を整理しながら,いかに学生を指導すれば良いかをまとめている.学生を指導する立場になって日も浅く,またゴミ同然の英語力で論文を書く自分にとってはとてもためになった.
      • 第二言語に限らず,国語能力が不十分な学生がコピペさながらのレポートを出してくる問題にも応用できそう.
  • 吉村弘 (1999) 『最適都市規模と市町村合併』 東洋経済新報社
    • つまらない.俗に言う「データに語らせる」ってのは散布図に近似曲線を当てはめることではないと思う.
  • 大竹文雄 (2015) 『経済学のセンスを磨く』日本経済新聞出版社
    • 面白い最新の学術論文を肴にゆるやかな経済学トークをするシリーズ(?)の続きで,一般向けコラムの再録が主.一般向けとはいえ高度な手法もこっそり登場しており,読む側にとってはおいしいポイントがいくつもある.
    • 本書の約1/4は消費税制についての論点整理だ,日本では大竹先生のこれまでの論文が影響力ある参照点になっている気がするし私もおおむね似たスタンスであるが,もう少しモダンな最適課税論の成果を汲んだ議論があればよりよいと思った.
  • 大阪圭吉 (1937) 『坑鬼』 改造社
    • 昭和ミステリーの名作.この時代の資本主義像は邪悪だなあ.現代のブラック企業に置き換えると笑えないブラック・ジョークになりそう.

今日Handbook of Regional and Urban Economics vol. 5が届いた.2300ページ強あるけど分冊だから読みやすいぜ(棒読み).

NEGのピークだったvol. 4から10年強.テーマは昔の都市経済,特に住宅,に回帰し,手法は実証分析中心に大きく舵を切っている.研究者生命が絶たれないようにちゃんとキャッチアップしないと.

Wednesday, July 15, 2015

経済政策I, 第12回, 2015

おそらく8.5章あたりは時間の都合上講義ではカバーしきれないかもしれません.試験には講義でやったところまでを出題します.
8.5章では,O'Donoghue-Rabin式のセルフ・コントロール問題を取り扱っています.たとえ試験と関係なくても,レジュメ中に挙げた参考文献,特にムッライナタンやカーネマンなどを読むとよいでしょう.

講義内容
  • 展開形ゲームの見方
    • ゲームの木からストーリーを読み取れるようにしよう.
  • 後ろ向き帰納法
    • タイミング的に最後のゲームから解いていく.
    • 脅し文句がハッタリか本気かどうかは,インセンティブに注目して見抜くべし.

コメントより
  • 「最後の問題もう一度説明して」「さいごいみわからん」「均衡を出すまでは難しい」
    • 来週も似たゲームをやります.もう一度自分でも考えてみてください.
    • 最後の例のように具体的なストーリーが特にない場合でも,ゲームの木の構造から機械的に均衡を特定できるように,解く方法論を身につけてください.
  • 「後ろ向き帰納法を習っていて,楽しいというかワクワクした.どういうときに使えるか考えるのが楽しく感じる」
    • わくわくする講義でなによりです.たとえば詰め将棋で使えそうですね.
  • 「中学数学でやった樹形図に似ている」 
    • そうそう,樹形図です.
  • 「強盗がお金を取るにはどうすれば? 刺す方が利得が高くなるケースならそうなりそうだが.」
    • 拒否されたら必ず刺すとあらかじめコミットするとよい,というのが次週のポイントです.ただ,ご推察の通り,難しい問題になります.
  • 「間違った先読みをしていた.相手の立場になってみればナッシュ均衡が探せる」
    • 相手のインセンティブも考えるクセをつけましょう.
    • 現実には刺してくるタイプの人もいますので,ケース・バイ・ケースでちゃんと対処してくださいね.
  • 「シグナリングの解釈を少し誤解していた.ありがとうございます」
    • いえいえ.

Monday, July 13, 2015

国際経済学Iの補講のお知らせ

先週10日台風で休講になった分,7月25日(土曜)の2限に補講を行います.教室は通常と同じくH-102です.

シラバスでは24日(金曜)に期末試験を予定していましたが,試験日程は変更しません.当面のスケジュールは,
  • 17日: 通常通り講義
  • 24日: 期末試験
  • 25日: 補講
となります.

試験範囲は,中間試験の範囲以降から,17日にカバーするところまでとします.

Wednesday, July 8, 2015

経済政策I, 第11回, 2015

今春から立て替えていた科研費数十万円がようやく支払われたので我が家はデフォルトを免れました.

講義内容
  • 逆選択
    • 悪いタイプが生き残ってしまい,よいタイプを取引する市場が成立しなくなってしまう.売り手にとっても買い手にとっても望ましくない状況を改善するためには,工夫が必要で,ときには少なくないコストもかかる.
  • 統計的差別
    • 相手のことを観察できないときに生じる問題を緩和するべく,観察できる情報を利用することがある.結果として,根拠のない偏見とは違った形で,差別が生じる.
  • 練習問題2やレジュメ4もアップロード済みです.

コメントより
  • 「有償の保証でも逆選択対策になるのか? 有償の場合保証なしにしてしまうことがあったが,有償でも保証がないよりはマシなのかと思った」
    • 無償か有償か,というよりは安いか高いか,がより本質的だと思います.0円でなくても保証内容に比べ安ければ,品質を担保するものになるでしょう.
      • 保証プランがいくつかあってその中から選べる,という状況では,企業側がスクリーニングを仕掛けていると考えられそうです.これも非対称情報の下で生じ得る現象です.
    • その昔「ソニータイマー」なる都市伝説があったのを思い出しました.
  • 「データから危機を察知して未然に防ぐ力は大きい」
    • 保険数理や金融工学などはまさにそうした発想が根っこにあるのではないでしょうか.もちろん外挿はとても難しい問題で,限界はあるんですけどね.
  • 「データを使うことで効率よくなりそうだけど,エラーや統計的差別のような難しい問題も起こるのだと感じた」 
    • 確率は我々にとって身近でありながらとても理解しにくく間違って使ってしまいやすいものです.しっかり勉強するといいと思います.
    • 統計的差別は本当に難しい繊細な問題だと思います.あまり深く論じられずすみません.
  • 「シグナリングは他の講義でも習った.日常にも見つけられそう.」
    • シグナリングもひとつのコミュニケーション能力だと思います.(チープトークであってもコミュニケートできることはありますが.) 社会に出る前に鍛えましょう.
  • 「シグナリングは経験があったのですぐ理解できた.経済学は難しいイメージがあったが,実は生活に関係するのでとても面白い!」
    • 難しいのは確かだと思いますけど面白いですよ!
  • 「中間は手応えがなかったので期末はがんばりたい」 
    • がんばってください.私が作るテストは難しいようです.

Monday, July 6, 2015

国際経済学I,第11回, 2015

次週は台風が来る可能性がある.今手がけている論文×2がどちらも好調なので,休みだとかえって助かる….

欧州は政治的台風まっただ中のようだ.思うところはいろいろあるけど,ともあれしばらくはリスクオフ.

講義内容
  • 比較優位
    • 分業の本質は,絶対優位ではなく比較優位にある.

コメントより
  • 「分担しないケースで販売に使う時間が2人合わせて45分 → 残りの15分は料理の時間?」
    • 2人合わせて全部で120分あるので,75分料理していることになります.
  • 「所属の団体で「できない」と言う人のものも全部か抱えようとしていた.比較優位を無視していると言われ気づかされた.うまく分担すれば私の負担も減るのではないか」
    • できないなりにやれることを任せましょう.そして自分が得たメリットを相手に還元しましょう.
  • 「逆数とは?」
    • $x$の逆数は$1 \div x$,つまり$1/x$のことです.(ただし$x \neq 0$.) 分母と分子を「逆」にしたもの,ということ.たとえば2/3の逆数は3/2です.
  • 「機会費用を比べればよい」
    • そうです.
  • 「どんな人でも分業すれば無駄を少なく作業することができる」
    • 無駄を減らすのに貢献できるのですね.
  • 「比較優位を理解できた」
    • すばらしい.

Thursday, July 2, 2015

15年6月沖縄県主要指標

久しぶりにこのシリーズ.沖縄の景気動向を定期的にチェックしているので,その一端を紹介している次第である.

前回ポスト: 15年2月沖縄県主要指標

およそ14年度は増税の影響もあり沖縄は景気拡大にブレーキがかかった時期であったと思う.15年度に入って,12-13年度頃のような成長が再び見られるかが今年度気になるところだ.

日銀那覇支店の県内金融経済概況では,4月から消費増税をめぐる記述が一掃された(コアCPIのところには記述がある).労働市場も引き続き逼迫しているようである.先月あった弊学のオープンキャンパスも盛況であった.株高・円安で,スラックはかなり減ってきた.トレンドにベットするようなタイプが抱きそうな見通しはよさそうだ.

以下では,生産,物価,労働,の指標をざっくり眺める.

 鉱工業生産(4月分)は年度末に停滞していた.4月に出荷・在庫が悪化しており,当面は軟調になりそうだ.(ただ,政府支出が増えるなど拡大し続ける材料はある.)
沖縄の鉱工業生産, 2010年=100. 薄灰色が原数値, 黒が季節調整値, 青がトレンド, 赤が全国. 出典: 沖縄県「鉱工業指数」, 経済産業省「鉱工業指数」.
  • なんとなくボラティリティが高まっているようにも見えるけれど,GARCHでは微妙だった.
消費者物価(5月分)は消費増税が一巡し,0%前後で推移し続けている.0.5%あたりに達していてもおかしくないと思っていたけれど,そうはいかなかった.
那覇市のCPI(灰色), コアCPI(赤), コアコアCPI(青)の前年同期比(単位: %). 点線は原数値, 実線は消費税を除いた値. 出典: 沖縄県 「消費者物価指数」

沖縄県のCPI(灰色), コアCPI(赤), コアコアCPI(青)の前年同期比(単位: %). 点線は原数値, 実線は消費税を除いた値. 出典: 沖縄県 「消費者物価指数」
労働力調査(5月分)は,15年度に入る頃からややポジティブ.
沖縄県の完全失業率, 男性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
沖縄県の完全失業率, 女性 (単位: %). 赤がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
  • 15年2月に女性の失業率が急上昇しているが一時的なものであったようだ.飲食・宿泊・サービスあたりから若い層が抜けていったように見える.ただ,毎勤ではこうした変化はすぐに観察できないので,たまたまであろう.
沖縄県の労働参加率, 男性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
沖縄県の労働参加率, 女性 (単位: %). 赤がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
  • 労働参加率はおおむね従来通りだが,15年度に入ってから女性の参加率が急上昇している.非労働力人口から労働力人口に転換している模様.
少しずつデータが集まってきたので,労働力率については25-54歳だけに絞った系列も図示してみた.
prime working age (25-54歳)の労働参加率, 男性(青), 女性 (赤), (単位: %). 出典: 沖縄県「労働力調査」.

  • 全国と比べると,男性は水準が低く,女性は水準が高い.
  • 男性はわずかに低下トレンドにある.上の全年齢のグラフで低下トレンドであったのは,高齢化の影響だけではないかもしれない.
    • 14年以降全年齢では上昇しているのに,prime ageではそうでもない.老年が退職を遅らせているのだろうか?
毎月勤労統計調査(4月分)から賃金率を求めた.例によって, 名目賃金率 = きまって支給する給与 / 総実労働時間. (一般労働者) と定義している.今回は沖縄県のコアCPIでデフレートした実質の賃金率も合わせてプロットしてある(大差はない).

沖縄の賃金率, 前年同期比(単位: %). 男性は青, 女性は赤. 規模5人以上. 出典: 沖縄県「毎月勤労統計調査」.
  • 女性の賃金が目立って上昇している.女性労働供給が増えている中で,これはすごい.

直近の日銀那覇支店の県内金融経済概況では,現金給与総額(3月)が前年を下回ったという新たな記述が足されており,真意が気になったので毎勤のデータをプロットしてみた.
沖縄の名目現金給与総額, 前年同期比(単位: %). それぞれ男女計, 一般労働者, パートタイム労働者. 規模5人以上. 出典: 沖縄県「毎月勤労統計調査」.
  • 男女計やフルタイムの労働者に注目すると,3月の前年同期比は0に近いとはいえプラスである.最近はむしろ下げ止まりぎみだ.どういうことだろう?
    • 家計調査の可処分所得だとガッツリ減っているのだけれど.
  • パートタイマーについては,13年夏頃をピークに減少していた状況がまだ続いている.
    • 14年度における変化率は幾何平均して-3.8%であった.
ライカム(4月開業)以後の動きが観察できるのは,来月以降になる.

Wednesday, July 1, 2015

国際経済学I,第10回, 2015

更新を忘れていた….



講義内容
  • 小国開放経済における輸入関税
    • 需要が減り国内供給が増えて輸入が減り関税収入が発生する.このあたりの変化をひとつずつ整理して,どれもなるほどと納得してもらいたい.
    • 余剰の分析も,自分で一度整理して考えてほしい.
    • 税収は,長方形の面積($=$たて$\times$よこ)を使って考える.

コメントより
  • 「社会余剰が減るのに関税をかけるのは,生産者保護の他にも理由があるのか」
    • 前回の講義で軽く紹介しましたが,関税は輸入価格を引き下げて自国に有利にする効果(交易条件効果)も持ちます.その他,企業の立地を引きつける(関税回避型FDI)効果もありますし,外国との戦略的な関係の中で裏切られたとき相手に罰を与える目的で課されることもあります.
    • 政府は必ずしも自国の社会的余剰を最大化する存在ではありません.政治が絡むと,社会余剰を減らしてでも関税を課すことがありえます.
  • 「輸出する場合,輸出量はどこになるのか」 
    • 図解しました.なぜこうなるかは自分で考えてください.
  • 「死重損失がわかった」「グラフは理解できた」
    • 人の行動を不用意に変えると,目に見えない損失が生じます.
  • 「関税はあまりいらない感じがした」
    • 先週の講義でも紹介しましたが,ラッセル『寓話で学ぶ経済学: 自由貿易はなぜ必要か』あたりもご覧あれ.
  • 「グラフを書くとわかるが,納得できないところもある感じがする」「難しかった」
    • 極度に単純化されたモデルであり,現実に大切な部分を大幅に捨象しているのは確かです.それでもなお,モデルが抽出している,より本質的なことが何かを深く考えるとよいでしょう.

MathematicaRを行ったり来たりしていて混乱中Mathematicaはもう少しエコノメ系のパッケージ(とユーザーフレンドリーさ)が充実していると助かるのに.

経済政策I, 第10回, 2015

近々レジュメ4もアップします.講義の進度に合わせて講義計画を練り直し中です.

講義内容
  • 規範の形成
    • 協調して利害の対立を乗り越える装置として,社会規範やモラルができた,という考え方もできる.租税のようなフォーマルな制度だけが,社会の非合理性を解決する手段ではない.
  • 2種類のエラー
    • 白を黒と誤診することと,黒を白と誤診することは定性的に異なる.両方とも軽減しようと思えば,判断材料を増やす必要がある.

コメントより
  • 「タイプIエラーとタイプIIエラーがトレードオフの関係にある,というのは意外だった.考え方が変わると感じた.」
    • 開眼する瞬間が訪れる講義になったと思うとこちらとしてもうれしいです.
  • 「2つのエラーが五分五分になることはないか?」
    • とても特殊な状況ではあるかもしれませんが,五分五分にしなければいけない理由はありません.裁判の例だと,歴史的経緯も踏まえ,タイプIエラーを防ぐことのほうをより重視しているようでしたね.
  • 「どちらがどちらのエラーなのか間違えないようにしたい」「理解できるようにしたい」「わかった」
    • 仮説検定という手続きを学ばないと,どちらがどちらか区別するのは難しいと思います.この講義ではどちらか区別できなくてもOKで,区別があるということさえ理解していただければ結構です.
  • 「普通に生活しているうえでは考えたこともなかったが,考えてみると確かにそうなるという感じ」
    • 統計的意思決定理論を勉強しましょう! (私もしたい)
  • 「どちらのエラーもやってはいけない」
    • もちろん,両方のエラーを起こさないようにすることができればそれが望ましいです.がどこかで,どちらか片方を犠牲にしないともう片方のエラーを小さくすることができない,というトレードオフに直面することになるでしょう.
  • 「試験も終わったけどこれからもがんばる」
    • がんばりましょう.