Monday, August 3, 2020

新型コロナをめぐる雑感2

ひとまず生存報告をば.
沖縄では緊急事態宣言が出て,弊学も閉鎖中です.私は今のところ無事ですが,県経済の見通しが悪すぎて胸が痛いです.
感染人数はまだ絶対数では少ないですが,医療機関や保健所はすでにキャパオーバーという感じのようです.



沖縄を襲っているCovid-19のうち,5月頃までのを第一波,7月以降のを第二波として,第二波はそれ以前と性質が異なっている.特に次の三点が気になっている.
  1. Rtが高い.
    • 東洋経済のダッシュボードによると,直近(8月1日時点)でRt=4.1.
    • 4連休・GoToの影響は出るならこれから.これまでの分は,東京などで働けなくなった水商売の人たちが沖縄に持ち込んだ側面が強い模様.
  2. 市中感染している模様.
  3. 若年層の感染が多い.
    • 沖縄のstopcovid19からデータを取得し,年齢の内訳をプロットした.
    • 図の上側("wave02") は下側("wave01")と比べて,00--30代の感染が大幅に増えている.
沖縄の感染者の年齢構成.7月27日分まで.

感染者が若くなったことには,いくつかの説明が考えられる (実態を知らないのでただの思いつき):
  1. 第二波では「夜の町」の中でも若年が集うエリア・店舗でクラスターが発生した.
  2. 第二波では高齢者の防疫対策が進んだ.
  3. 第二波では,第一波で経済苦に陥り,感染リスクを取って働かざるを得なくなった若年が増えた. 
  4. 第二波では,重症化しにくい若年ほど行動変容するインセンティブが弱かった.
  5. 第一波では若年の感染ほど捕捉できていなかった.あるいは第二波では若年を中心に検査している.
若年に広がっているのは沖縄だけでなく全国でもそうなので,米軍からの(パリピ経由での)伝播,対面が避けられない仕事に就く若年低技能労働者が多い,などのように,沖縄固有の要因で説明するのは難しいと思われる.

10代以下の感染は多いが10代の感染はまだ少ないまま,であるのは興味深い.10代の子供がいるシングルマザーは「夜の町」で働けない…というわけではないと思うが.

なお,性別の構成は第一・第二波でほとんど変わらない(男性が多い).

そもそも,人と人との接触ってどうしてもスケールフリーでべきになりそうなものなので,足下の数字の解釈はかなり難しいと感じている.





 あと,第一波と違って,第二波はもういい加減耐えられない企業が急増するのではないだろうか.
観光立県の沖縄では,県内で感染抑制するだけでなく,内地・東アジア・基地内でも感染抑制に成功しない限り,Covid-19に対しては脆弱なままだ.
経済的打撃は目先だけのことでなく,中長期的にも悪化していると思われる.リスクを均すような保険も成立しなさそう….そろそろ廃業ラッシュが来そう.

感染爆発・医療崩壊は(たまにしか)しないけど終息もせずだらだら長期化する,というパスに乗っているような気がする.

ただ,これはこれで持続可能かというと微妙で,遠からず大きな変化(というか不満の爆発)があるような…?




先日ゼミ生と雑談中に,(1) 大学に着いてから手洗い・手指消毒したか,(2) COCOAインストールしたか,(3) 日々検温してるか,聞いてみたところ,ほぼ全員が全部ノーという悲惨な状況であった.そもそもCOCOAは知ってすらいない人が多い.


マスク手洗いなど行動変容でRtをもっと下げ,最悪強めの処置をすれば2ヶ月ぐらいで落ち着きを見せるだろうと思ってはいるが,県は2週間ぽっちでなんとかなると思っているようであった..

政治家は,集団免疫は目指さないとコミットするなど,将来の政策不確実性を減らすようにコミュニケーションしてほしい…



ところで,沖縄の貧困をダシにした,あやしげなオンラインサロン商法みたいな本がベストセラーになっているらしい.読んでないけど.

ちなみに若手のスターBalboniらの最近のペーパー"Why Do People Stay Poor?"は似たような問いに取り組んでいる.
彼女らは(1) obsやunobsによってpoor,(2) poorだからpoor (古典的な貧困の罠),という2つの仮説について,よく設計されたRCTで後者の可能性を検討し,たしかにそうした可能性がある(資産PPP表示USD504が境目)ことを示している.
「心の問題」のようなunobsの一つで貧困を説明できるとするのは無理があるんじゃないすかね.
学問のフロンティアは何周も先を行っている.

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