Wednesday, June 18, 2014

国際経済学I, 第9回, 2014

講義内容:
  • 日本の輸入事情
    • 輸入で打撃,という図式がそのまま当てはまる産業とそうでない産業がありそうだ.
    • 私のレジュメはAutor et al. (2013) の議論を参考にしているが,週末参加した学会で,同様の分析を日本でやったところ反対の結果が出たという報告を見た.どうしたものやら.
  • ロビー活動と関税
    • 民主主義社会では,政治が少数派の意見を無視するわけにはいかない.
次週:
  • 言い忘れてましたが,レジュメ3も用意してください.

コメントより
  • 「国内で生産のシフトは難しいの?」
    • 鋭いですね,外国に生産が移っていくことだけが調整過程ではありません.生産するための資源が別の産業にシフトするというのが伝統的貿易理論のポイントで,同じ産業内のより効率的な企業にシフトするというのが最近の貿易理論のポイントになります.
    • 講義で扱ったモデルは,あくまでも一つの産業だけに焦点を絞った分析です.国内での変化を記述するにはもう少し複雑な分析が必要になります.レジュメ3, 4ではその一端を垣間見る予定です.
  • 「貿易で国内企業が有利になることもあれば不利になることもある」
    • 利害関係が複雑なので,貿易の議論はこじれがちです.
  • 「生産者が消費者より必死になるところが興味深い」
    • いざ困ったときに消費者・政府が助けてくれるとは限りませんしね.
  • 「親族の農家はTPPに反対してた.小さい圧力だ」
    • あまり建設的には見えない活動に労力を注ぎ込むことは,ロビーが持つ社会的コストの一つです.
  • 「データを見て中国と仲良くしないと日本の将来は危ないと思った」
    • 関係が悪化した場合に生じる費用は年々大きくなっているでしょうね.
  • 「消費税と関税は別物?」
    • 別です.ただし,消費税や補助金といった国内政策を組み合わせることで,関税と同等の政策パッケージを作ることは理論上は可能です.詳しくは伊藤・大山 (1985).また,輸入に税を課す関税が,輸出に補助金を与える政策と同じ効果を持つ,という話もあります(ラーナーの対称性と呼ばれます).
    • 同じ商品がダブルで課税される場合,その経済学的な効果を整理するのはけっこう骨です.
  • 「TPPをやると免税店意味なくなる?」
    • 免税店で取り扱うアイテムが,TPP相手国で作られているとは限りません.
    • 免税店では関税だけでなく消費税も免除されたりします.たとえ関税がゼロになっても免税店自体は生き残るかもしれません.
  • 「テストは自信があったが平均も高いらしい」
    • よく勉強されている方が多く,感謝しております.
  • 「穴埋めの答えください」
    • 残念ながらお断り申し上げます.講義中に教員が発する情報をノートに記録することで脳が鍛えられるかもしれませんよ.それでもノートを取りたくない場合,誰かのノートを見せてもらってください.
  • 「今日の洋服」
    • 免税店で買いました.

参考文献
  • 伊藤元重・大山道広 (1985) 『国際貿易』 岩波書店.

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