Friday, June 27, 2014

国際経済学I, 第11回, 2014

いよいよ夏本番ですね.

講義内容
  • 比較優位
    • 「得意」なものに専念しよう.「得意」なものとは,失うモノが少ないものだ.
    • イケメン・美女はお得,という話はHamermesh and Biddle (1994)以来膨大な研究の蓄積がある.自信になったりトークが上達したり,という話はMobius and Rosenblat (2006).
次回:
  • レジュメ4も用意してください.講義はあと3回で,7/25は期末テストです.

コメントより
  • 「図ではどう特化なのかよくわからない」
    • すみません.特化という概念を,何か特定の仕事に集中すること,ぐらいの意味で理解していただければOKです.
  • 「特化は無駄だと思ってたけどむしろ違った」
    • 無駄になることもあります.たとえば特化する分野がマニアックすぎて他人と意思疎通できなくなると,使いづらい人材となります.結局はケースバイケースですね.
  • 「輸出が多いのが理想」
    • はたしてそうでしょうか? 経常バランスについては後期の講義で簡単に学びます.
  • 「アダム・スミス以来の歴史を感じる」
    • 貿易は経済学の古くて新しい重要な論点ですね.
  • 「関税のグラフがわかりやすくなった.けどまだややこしい」
    • ひとつひとつ分解して考えていきましょう.
  • 「情報処理士の資格を取りたいのでこの授業をがんばりたい」
    • そのロジックはよくわかりませんが,どちらもがんばってください.
  • 「美人・イケメンは差別」「受付に多いですよね」
    • イケメン税導入を提唱する政党があれば投票します.

参考文献:
  • Daniel S. Hamermesh and Jeff E. Biddle (1994) Beauty and the Labor Market, American Economic Review 84, 1174--1194.
  • Markus M. Mobius and Tanya S. Rosenblat (2006) Why Beauty Matters, American Economic Review 96, 222--235.

Wednesday, June 25, 2014

経済政策I, 第11回, 2014

講義内容
  • 温暖化対策
    • どちらのエラーがより深刻なのかは,ケースバイケースで考える必要がある.
    • 講義中には法の世界で冤罪抑止を重視する理由はよくわからないと言ったものの,無実の人を(時には権力が)陥れようとすることがいかに危ういかを歴史から学んだのかもしれない…と思った.
  • 逆選択
    • 良いタイプと悪いタイプが混じっているときには,悪い方が増えて良い方が減っていくように動きそうだ.
    • 良いものを作れば売れる,と思っていると大間違い.でも,その間違いにみんなが気づいてしまうと,社会的に非効率な結果が待っているかもしれない.
次回
  • レジュメ4に入る予定です.印刷するなどして用意をお願いします.
  • 後期何しようか考え中.シラバス(昨年度とほぼ同一)よりももう少し前提知識を要しない楽しい講義にするにはどうすればいいんでしょうかねぇ.

コメントより
  • 「環境問題にも応用できるとは驚いた」
    • 統計学から得られる知見は様々な場面で有益だと思います.確率に抵抗がなければ勉強してみましょう.
  • 「温暖化の話難しい」
    • ぐだぐだですみません.
  • 「逆選択はいろんな場面で起こりそう」
    • 実生活でもしばしば巻き込まれます.損しないように振る舞いましょう.
  • 「クーラー寒い」
    • すみません.現在の教室だと室温はこちらで微調整しかねるので,窓を開ける・席を移動する・アウターを用意するなどして自衛していただければと.

Saturday, June 21, 2014

国際経済学I, 第10回, 2014

講義内容
  • インターンシップに参加すると報われる,という論文の簡単な解説記事(英文).よりフルタイムの仕事に就きやすくなるとのこと.
  • 関税
    • 関税には消費者と生産者の行動を歪めてしまう効果がある.
  • 貿易協定
    • GATT/WTOの多角的交渉から,個別にRTAを結ぶ流れになりつつある.
コメントより
  • 「国際価格が元々高ければ,関税による社会的余剰の減少は少なくなる?」
    • どれだけ社会的余剰が変化するかは,(1) 需要曲線と供給曲線の形状, (2) 国際価格の水準, (3) 関税率, の3つに依存します.
    • 講義で見ているような,傾き一定の需要曲線・供給曲線の場合,社会的余剰が減少する分は国際価格の水準と無関係に決まる気がします.作図して確かめてみましょう.
    • したがって,需要と供給が直線ではなくより一般的な形状をしている場合,社会余剰の変化が大きくなることもあれば小さくなることもありそうですね.
  • 「国際価格って目安だよね? どのようにして決まるの? 先進国の平均?」
    • 分析したい品目や国によります.たとえば衣類品の国際価格を知りたい場合,中国やバングラデシュやスリランカを無視できないかもしれませんね.
    • モデルで出てくる国際価格はあくまでも仮想的な存在で,現実にどうやってそれに対応する価格指数を作ったらよいのかに正解はありませんし思いの外簡単ではありません.現実には輸送に費用がかかりますし,商品は差別化されています.
  • 「関税で,なぜ,誰に,たくさん売れるのか? 」
    • 一物一価の法則が成り立っている(自由貿易)とすれば,国内市場で売買される価格は,いくらで輸入できるか,によって決まります.関税によって輸入できる価格が上がり,国内市場で売買する際の相場が上がります.
    • 供給曲線に注目すると,価格が上がると企業は生産を増やすことがわかります.高くなった分採算が取りやすくなるのです.
    • このモデルの設定では,消費するのは国内消費者しかいません.ので国内消費者に売る分が増えます.現実には商社のような輸入業者を経由して国内消費者の手元に届きます.外国に輸出することはありません.
    • ご質問のポイントは,生産を増やすのはいいけど,それがそのまま売れるようになる理由がよくわからない,ということでしょうか? たしかにそこは痒いところだと思います.
      • 関税を課して新たな均衡に至るまでのプロセスはやや不透明なところもあります(静学的なモデルなので)
      • 仮に生産が均衡水準まで増えていない状態にあった場合,生産者は輸入できる価格よりもちょっとだけ安く販売することで,財を売りさばきかつ利潤を増やすことができます(コスト的に,そうした安売りを行うことが可能な状況です). 国内企業がより高い利潤を求めてこうした安売りをすれば,輸入品を追い出し国内企業の市場シェアを均衡の水準まで高めることが可能です.
      • ここで考える均衡では,供給曲線上で生産・販売がちゃんと行われるものとしています.また,関税を課しても供給曲線自体はまったく動かない,と暗黙に仮定しています.
  • 「そもそもなぜ関税ってできたんですか?」 
    • 歴史をさかのぼってみれば,古代からあったようです.経済学的な議論は,少なくともアダム・スミスの時代から活発になされてきました.
    • 現代だと,所得税や消費税でまともに税収を確保できない発展途上国などで,貴重な財源として用いられているなどの理由もあります.先進国からの輸入で国内の成長産業が破壊されてしまわないように,などという理由もあるようです.
  • 「関税を課した方が社会がよくなると思っていたけど,図にして見えるようになったら社会全体で損失があるのだと知った.現実はこんな単純ではないと思うが政府はもっと経済学を学んだ方がいいと思う」 
    • 目に見えなかったモノが見えるようになると,数理モデルを学んだ甲斐がありますね.
    • たしかに講義で学ぶ単純なモデルでは抜け落ちている要素がたくさんあります.性急な自由貿易推進に疑問を呈する有名経済学者もいます.たとえばスティグリッツ・チャールトン『フェアトレード』など(チャリティ的コーヒーの話ではありません).
    • まともな学術的知見が政策に反映されればいいのにと思うことはあります.
  • 「関税で消費者だけ損をすると,どうなるの?」
    • 消費者の幸せを願い価格メカニズムに重きを置く経済学者が自由化を叫ぶことになります.
  • 「RTAで残された国は不利だと感じた」
    • そう政府が認識していれば,RTAが一つできたら連鎖的に別のRTAが結ばれていくかもしれませんね.たとえばBaldwin and Jaimovich (2012).
  • 「WTOはみんなで会議するんだ」
    • 加盟国だけでなく,非加盟国や様々な国際機関も集まります.「WTO round meeting」などというキーワードで画像検索してみると視覚的イメージが掴めるかもしれません.
  • 「グラフから損失分が分かってすごくおもしろい」 「この講義はためになるしやりがいがある」
    • ありがとうございます.
  • 「グラフがごちゃごちゃして難しかった」
    • たしかにかなりややこしくなってきましたね.たいていの国際貿易の教科書に載っている話ですので,適当な参考図書で補完してください.レジュメに沿って焦らず順序よく考えていけば理解できるはずです.

参考文献
  • Richard Baldwin and Dany Jaimovich (2012) Are Free Trade Agreements contagious?, Journal of International Economics 88, 1--16.
  • Nils Saniter and Thomas Siedler (2014) Door Opener or Waste of Time? The Effects of Student Internships on Labor Market Outcomes. IZA Discussion Paper Series no. 8141.
  • Joseph E. Stiglitz and Andrew Charlton (2005) Fair Trade for All: How Trade Can Promote Development, Oxford University Press. (浦田秀次郎・高遠裕子訳『フェアトレード: 格差を生まない経済システム』日本経済新聞出版社, 2007)

Wednesday, June 18, 2014

経済政策I, 第10回, 2014

講義内容
  • 仮説検定
    • 真実を見抜きたいけど,間違うことがある.その間違い方には2種類ある.
    • 通常,片方のエラーを減らそうとするともう片方のエラーが深刻になる.両方のエラーを同時に減らすには,そもそもの判断材料をもっと充実させなければいけない.
次週
  • レジュメ3の残り(逆選択)をやります.
コメントより
  • 「2つのエラーの違いがまだよくわからない.どんな事実にどんな判断をしたらタイプIエラーなのか?」
    • 講義資料では話をなるべく単純化するために,どういうときにどちらのエラーに分類したらよいかわかりにくくなっています.惑わせてしまいすみません.
      • 本講義ではエラーが2種類ある,ということを理解していただくことがとりあえずの目標です.エラーの分類やその詳細が気になる場合は,統計学・計量経済学で仮説検定を学んでいただけるとよいと思います.以下で簡単に補足説明します.
    • 「サボったかどうか」を知りたい時には,「サボってない」という仮説を立てて,それが正しいかどうか検証して判断する,という手続きを取ります.「サボってない」という仮説が正しいのに,「サボった」と仮説を否定してしまうことをタイプIエラーと言います.
    • 出所は不明ですが,次の画像がわかりやすいと思います.
      • 左側(タイプIエラー)は「You're pregnant (妊娠してますな)」という誤診です.右側(タイプIIエラー)は「You're not pregnant (妊娠してません)」という誤診です.
      • ここでは「妊娠はしていない」という仮説を立て,それを確かめることで,「妊娠したかどうか」を判断しようとしています.
    • 「勉強をサボる」,「妊娠」,「生活保護の不正受給」,などのように,「何かが生じている」ことを知りたいとします.「本当は何かが生じている」のに「何も生じていない」と判断してしまう場合,タイプIエラーと考えます.
    • たとえば裁判で「犯罪を犯したかどうか」を検証する状況を考えましょう.
      • 「無罪だ」という仮説が正しいのにも関わらずそれを否定して「有罪だ」と判断してしまうとき,つまり冤罪が生じてしまうとき,タイプIエラーと考えます.
      • 一方,本当は「有罪」なのに,正しくない仮説「無題だ」を支持し,犯罪者を無罪放免してしまうことをタイプIIエラーと考えます.
    • 経済学の話に合わせると,たとえば「アベノミクスは景気回復に効果があった」かどうかに関心があるとします.こういうとき経済学者は,統計データを駆使して「アベノミクスでいいことは何も起こらなかった」という仮説を検証します.
      • 本当は仮説通りに「アベノミクスでいいことは何も起こらなかった」にも関わらず,「アベノミクスでいいことが起こった」と誤った判断をしてしまうことが,タイプIエラーです.
      • 本当は仮説と違って「アベノミクスでいいことが起こった」にも関わらず,「アベノミクスでいいことは何も起こらなかった」と誤った判断してしまうことが,タイプIIエラーです.
    • 個人的には,正しい仮説を捨ててしまう方をタイプIエラー,間違った仮説を支持してしまう(間違いを証明しきれない)方をタイプIIエラー,と覚えています.
  • 「中間試験の解説助かった」「解説を聞くと間違ってる気がした」「試験難しかった」 
    • 試験が終わっても覚えておいていただけるとうれしいです.

国際経済学I, 第9回, 2014

講義内容:
  • 日本の輸入事情
    • 輸入で打撃,という図式がそのまま当てはまる産業とそうでない産業がありそうだ.
    • 私のレジュメはAutor et al. (2013) の議論を参考にしているが,週末参加した学会で,同様の分析を日本でやったところ反対の結果が出たという報告を見た.どうしたものやら.
  • ロビー活動と関税
    • 民主主義社会では,政治が少数派の意見を無視するわけにはいかない.
次週:
  • 言い忘れてましたが,レジュメ3も用意してください.

コメントより
  • 「国内で生産のシフトは難しいの?」
    • 鋭いですね,外国に生産が移っていくことだけが調整過程ではありません.生産するための資源が別の産業にシフトするというのが伝統的貿易理論のポイントで,同じ産業内のより効率的な企業にシフトするというのが最近の貿易理論のポイントになります.
    • 講義で扱ったモデルは,あくまでも一つの産業だけに焦点を絞った分析です.国内での変化を記述するにはもう少し複雑な分析が必要になります.レジュメ3, 4ではその一端を垣間見る予定です.
  • 「貿易で国内企業が有利になることもあれば不利になることもある」
    • 利害関係が複雑なので,貿易の議論はこじれがちです.
  • 「生産者が消費者より必死になるところが興味深い」
    • いざ困ったときに消費者・政府が助けてくれるとは限りませんしね.
  • 「親族の農家はTPPに反対してた.小さい圧力だ」
    • あまり建設的には見えない活動に労力を注ぎ込むことは,ロビーが持つ社会的コストの一つです.
  • 「データを見て中国と仲良くしないと日本の将来は危ないと思った」
    • 関係が悪化した場合に生じる費用は年々大きくなっているでしょうね.
  • 「消費税と関税は別物?」
    • 別です.ただし,消費税や補助金といった国内政策を組み合わせることで,関税と同等の政策パッケージを作ることは理論上は可能です.詳しくは伊藤・大山 (1985).また,輸入に税を課す関税が,輸出に補助金を与える政策と同じ効果を持つ,という話もあります(ラーナーの対称性と呼ばれます).
    • 同じ商品がダブルで課税される場合,その経済学的な効果を整理するのはけっこう骨です.
  • 「TPPをやると免税店意味なくなる?」
    • 免税店で取り扱うアイテムが,TPP相手国で作られているとは限りません.
    • 免税店では関税だけでなく消費税も免除されたりします.たとえ関税がゼロになっても免税店自体は生き残るかもしれません.
  • 「テストは自信があったが平均も高いらしい」
    • よく勉強されている方が多く,感謝しております.
  • 「穴埋めの答えください」
    • 残念ながらお断り申し上げます.講義中に教員が発する情報をノートに記録することで脳が鍛えられるかもしれませんよ.それでもノートを取りたくない場合,誰かのノートを見せてもらってください.
  • 「今日の洋服」
    • 免税店で買いました.

参考文献
  • 伊藤元重・大山道広 (1985) 『国際貿易』 岩波書店.

Thursday, June 12, 2014

経済政策I, 第9回, 2014

中間試験お疲れさまでした.
  • 70人受験,平均68.84, 中央値69, 分散20.91.
  • 想定していたよりも点数が低かった.4割弱が不可になるのは厳しい.作問と講義にも問題があったかもしれない.
  • 得点分布は次の通り.分散も大きく,いびつだ.

histogram.
  • GPA以外に得点と強く関係していそうな変数はなさそう.女性ダミー(プラス)とゼミ生ダミー(マイナス!?)はどちらもそこそこ大きくてひやりとするのだが,有意ではない.GPAに吸い込まれている.

 間違いの多かった問題の略説: (追記: 役目を終えたので削除しました.)

国際経済学I, 第8回, 2014

中間試験お疲れさまでした.簡単に結果報告.
  • 140人受験,平均 77.91, 中央値81, 標準偏差16.01.
  • 74人はA以上の成績.去年に比べて易化した.
  • 60点に満たないのは24人.多くの人は期末で挽回可能だと思う.
  • 得点分布は以下の通り.
histogram.

kernel density (bandwidth=5.362316).

  • 簡単な重回帰をしたが,GPA以外に得点に有意に効く変数が見当たらなかった.たとえばゼミ生ダミーや,女性ダミーは有意でなかったので,他の講義と比して不公平な採点がなされたとはとりあえずは言えない.
    • ゼミ生ダミーはプラスに効いてもいいと思う…(実感ベースでは,がんばってくれた人が多かったように思います)
次回は,関税の話に入っていきます.

間違いが目立った問題の略説 (追記: 役目を終えたので削除しました.)

Friday, June 6, 2014

経済政策I, 第8回, 2014


講義内容:
  • 共有地の悲劇
    • 立食パーティーの食事はあっという間になくなるものだ.少数のテーブルを少人数で囲むときと違って,誰がどれだけ食べたか判然としないからかもしれない. 
    • 最近混雑著しい大学駐車場も,共有地の悲劇に陥っているのかもしれない.他人への思いやりや話し合いだけでは解決できそうにない問題だ.
  • 公共財の解決策
    • 徴税能力を持つ政府の出番.
    • 公共財の問題はそう簡単には解決できない.詳しい分析はメカニズム・デザインというミクロの応用分野を中心になされている.
    • 政治学者Elinor Ostromは,共有地のガバナンスを考えたことで2009年にノーベル賞を受賞した.最近騒動になった団体は話が別だが,政府に依らない自治自体は時に重要である.たとえば猪木 (2001).
      • (某団体の場合,社会全体の利益を追求する自治を行う意思と誘因と能力に深刻な疑問があり,「自治」とは名ばかりにすぎない気がする.もとより大学が学生の利益を最大化するとは限らないが.)
  • 非対称情報
    • どんなに理を尽くしても,判断を誤る可能性がある.しかも,誤り方には2種類ある.
来週
  • 中間試験を実施予定.
  • レジュメの後ろの方にある「まとめと補足」や脚注にあるマニアックな議論から重箱の隅をつつくような出題はしません.基本的に,講義の内容を理解したかどうかを問います.
    • 国語の試験ではないので文章の巧拙は問いません.また,数学の試験でもないので,利得表の読解を除き,何かしら計算が必要な問題は出題しません.
    • もちろん,講義内容を深く理解するには,一定の読解力と計算能力が必要です.

コメントより
  • 「みんなが考えて使えたらいいのに」
    • 考えることはとても大切ですね.社会に数多存在する問題に気づき,その仕組みを理解し対処することがこの講義の大きな目標であります.
  • 「経済の話で宗教の話はしっくりこない」
    • 囚人のジレンマのような問題を解決するために,人々の信念や価値観を補正する何らかの仕掛けを社会は用意してきたかもしれません,という話でした.
    • やや突飛に感じるのは無理もありません.が経済学はスケールの大きな議論を展開することもできることを知ってほしかったのです.たとえば青木(2014).もちろん,経済学以外でもそうした議論はあります.19世紀の政治思想家トクヴィルがその一例ですね.
  • 「非対称情報は情報の非対称性と言わない?」
    • どちらでもかまいません.「非対称な情報」と一言ひらがなを加えると,堅苦しさが若干緩和されるかもしれません.
  • 「用語が多くてわからなかったけど話を聞いてたらわかってきた」 
    • 経済学の専門用語は軒並みわかりにくいと思います.言葉を覚える苦行がある程度は必要であることをご了承ください.
  • 「もう少し聞こえやすくマイクを使って」
    • マイク(というかトーク)は苦手なんです.すみません.
参考文献:
  • 青木昌彦 (2014) 『青木昌彦の経済学入門: 制度論の地平を拡げる』 筑摩書房
  • 猪木武徳 (2001) 『自由と秩序: 競争社会の二つの顔』中央公論新社

明日から採点ウィークに突入してしまう…教員のモラル・ハザードを防ぐ仕組みも必要ですねぇ.

Monday, June 2, 2014

14年5月沖縄県主要指標

前回のエントリ:  14年4月沖縄県主要指標

増税後のデータがようやく出た.季節やトレンドの処理をどうすればいいのか勉強したいと思いつつそんな余裕はなかった.来る日経学会までにモデルを一つ作って解きたいのでごく簡単に.

鉱工業生産(3月分)は増税を直前に控えて大幅増.
沖縄の鉱工業生産, 2010年=100. 薄灰色が原数値, 黒が季節調整値, 青がトレンド. 出典: 沖縄県「鉱工業指数」.
  • 生産は前年同期比で7.8%増加.出荷は-8.4%, 在庫は+6.1%. (すべて季調値)
  • 前月比だと生産が+25.7%, 出荷+15.2%, 在庫+1.5%, となる.この生産キャパシティはどこに眠っていたのだろう.
    • 毎勤では,3月に所定外労働時間が前月比では増えたように見える.しかし前年や前々年と比べると,平年並みだ.残業だけで駆け込み需要に対処したわけではなさそうだ.
    • トレンドが2012年頃からやや上向きになっているように見えなくもないが,労働力人口・就業者数がここ10年増加している中でこの程度か,と思う.
    • 労働は投入しているけど普段はidleしている,という状態なのだろうか.

消費者物価指数(4月分)は大幅増.日銀が予想していた通り増税で1.7%程度上乗せされた様子.
那覇市のCPI(灰色), コアCPI(赤), コアコアCPI(青)の前年同期比(単位: %), 原数値. 出典: 沖縄県 「消費者物価指数」

沖縄県のCPI(灰色), コアCPI(赤), コアコアCPI(青)の前年同期比(単位: %), 原数値. 出典: 沖縄県 「消費者物価指数」
  • 品目によってけっこうなバリエーションがあるようだ.


労働力調査(4月分, 詳細結果表が読めないのは私だけ?)は男女ともやや悪化へ.労働市場は当面微妙な空気が流れる気もするので,就活中の学生はこんなブログ読んでないで早めに就職先を決めてしまおう.
沖縄県の完全失業率, 男性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
沖縄県の完全失業率, 女性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」

沖縄県の労働参加率, 男性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
沖縄県の労働参加率, 女性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」

完全競争で他の条件が一定の下恒久消費増税すれば労働供給は減りそうなものだ.