1月に東洋経済のダッシュボード(のGitHubリポジトリ)が更新停止したようなので,自分で沖縄の実効再生産数を計算するようにしている.といっても逆計算もMCMCもせず,事実上週次の変化率を見ているにすぎないのだが.
特にオチはないが,足下での感染状況を記録しておく.
1. 感染者数が減っても宣言を続行していた
沖縄県の新規感染者数とその7日移動平均. 3月9日分まで. |
2度の緊急事態宣言(赤いところ)を比較すると,2度目は感染者数が低い状態でも宣言をしばらく解除せずにいたことがわかる(実際2月28日まで3週間延長した).
延長の理由は医療提供体制の逼迫が挙げられていたが,春の観光シーズンが来る前に感染ゼロを目指していたような予感はする.
2. Rtは宣言延長中にリバウンド
しかし,緊急事態宣言の延長期間中には実効再生産数はリバウンドを始め,いまや1を再び超えるようになっている.
沖縄県の実効再生産数 (報告日ベースの簡易版).3月9日分まで. |
3. 移動は宣言中の2月から増加トレンドへ
Appleの移動傾向レポートで沖縄のモビリティを確認すると,2月に入った頃から交通モードを問わず上昇傾向にある.
沖縄県の移動傾向指数.20年1月13=100. |
県と那覇市とで大きな差はないがついでなので那覇市の分もプロットする.
那覇市の移動傾向指数.20年1月13=100. |
2月上旬に緊急事態宣言が延長される方向であることが報道されていたが,だいたいその頃から県民は徐々に緊急事態宣言に従わなくなったのかもしれない.2週間ほど遅れて実効再生産数のリバウンドがやってきて,解除した今足下で微増が続いている,と理解できそうである.
緊急事態宣言を再延長するらしい東京では,沖縄と同じく2月上旬頃に上昇したものの,2月後半から3月まで横ばい,という印象.
特別区の移動傾向指数.20年1月13=100. |
東京に比べて沖縄は宣言を遵守しない傾向があるのだろうか? (単に規範意識が低いと言いたいわけではないのであしからず)
4. 出口戦略
藤井・仲田が指摘していてなるほどと思ったが,緊急事態宣言の解除は,金融政策の出口戦略と似た要素を持っていると思った.
金融政策と少し違うのは,宣言に強い拘束力がなく長期間持続可能でないことや,政策反応関数がよくわからないこと(や首長たちが期待形成を意識したコミュニケーション政策に長けていないこと)だろうか.
新型コロナウイルス感染症の場合,エージェントは近い将来すら見通しが立たない,という不確実性の高い状況である.緊急事態宣言の実施期間も感染動向も予見しにくい.簡単ではないにせよ,ショックの打撃を和らげるために,こうした不確実性を払拭できるよう努力できないだろうか.
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