講義メモの続き.
4. 単一中心都市モデル (パート1)
理論をゴリゴリやりたくないと思いながらも,結局効用最大化問題を説明するはめになった.「空間均衡」がモデルの鍵になっている.教えるのはなかなか大変である (大変なのは学生であるが).
AMMの概観はGlaeserのレクチャー本がシンプルでいいと思うのだけど,結局Fujita 1989から大きく外れたことはできないなと思った.Bruecknerのように生産部門(建設)を入れるのも大事だとは思うけれど時間がもったいないので省略した.
土地市場の中で連続と離散が混在していておかしい,というBerliantの批判は,昔は方便なんだから細かいことは許してやってちょんまげ…ぐらいに軽く思っていたが,教える立場になるとなんだかむずがゆくなってきた.
あとは,土地と住宅の区別が曖昧なのも少しむずがゆい.
4.2. 単一中心都市モデルの実証 (手弁当)
本講義は経験主義も押していきたいので,距離が遠いと不動産価格が下がるはず,という理論的予測を,実際のデータで観察できるかどうか,データ分析の実践例も紹介した (マンションの取引データ(REINS)で簡単なヘドニックを回した).
マグロ解体ショーみたいなもんで,データをどう料理するか・結果をどう解釈するかの過程をダイジェストで見てもらうことに.
で,理論通りに距離と価格が負相関,というのは幸か不幸か見られなかった.
理論通りにいかない理由はいろいろ考えられるが,(1) 品質や所得や将来性や建設コストなどunobsをコントロールしきれていない (間取りや築年数はわかるが) (omitted var),(2) そもそも「CBD」ってどこやねん「距離」って何やねんという問題 (error in var),(3) 偏ったデータしか手元にない問題 (sample selection),といった観点から批判的に考える必要があると指摘した.
4.3. 単一中心都市モデル (パート2)
いくつかの拡張を紹介する.理論をいじるだけでなく,最近の重要な実証研究もちょくちょく紹介していく.
1. ロットサイズの選択を無視すると計算しやすく,比較静学がシンプルになる.
都市間移動を加味するかどうかによって比較静学が大きく変わる・直感に反することを示し,理論モデルを作り仮定を明示しながら議論を進める重要性を説く.
2. 所得が異質だと,金持ちが郊外に住む (住宅が正常財で通勤の時間的費用がそれほど高くなければ) ことがわかる.segregationについては次回のテーマ.
3. アメニティが不動産価格に与える影響を紹介 (資本化).
アメニティが不連続的に変わると価格もジャンプするはず."Consumer city"やボヘミアン・ゲイ指数のように,都市の盛衰は生産だけでなく消費にも大きく左右されるかもしれない.地理的な回帰不連続デザインやヘドニックのアイディアもこっそり紹介する.
4. 放射状交通という仮定を緩める.幹線道路があるとそこに都市が広がることがわかる.
Baum-Snow (2007 QJE) はまさにその実証を,計画路線をIVにして行っている.テキサスの図が論文のキラー・アイディア.
5. CBDが1つ,という仮定を緩める.
サブセンターがあるとHamiltonの過剰通勤パズルも部分的に解消できるかもしれない (Ng 2008 JUE).
CBDが内生的にできあがるFujita-OgawaやFujita-Krugman-Moriモデルで空間経済学が発展していったことをちらっと紹介.
6. CBDがCBDでなくなるとどうなるか,も紹介.つまりAhlfeldt et al. (2015 ECTA) を紹介した.右半分へのアクセスが途絶すると中心が「中心」でなくなるので,CBDが西側に寄っていく様が見て取れる (彼らも歴史がIV).
昔から単一中心都市モデルは調整過程がとてもむずがゆく思っているので住宅サーチモデルも紹介したいところだがtoo muchなので省略.
Reference
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