Thursday, February 27, 2014

ゼミ旅行

海外旅行に行ってきた.目立ったトラブルもなく,学生の飲み込みも早く,幸いである.本当は帰国できる範囲内でもっと盛大に失敗してほしくもあるんだけどね.

4ヶ月前のゼミで,台湾元の為替レートを予測していた.
  • 10月4日時点での点推定: 1元 = 3.388円.
  • 出発前夜(2月22日)に見たレート: 1元 = 3.3857円.
賞金下さい.



以下,旅行前に読んだ書籍をいくつか紹介.

  • 渡辺豊沢・小道迷子 (2010) 『小道迷子の台湾ではじめよう、中国語』三修社

まんがで発音規則を学ぶ.初歩的な中国語をかじったことのある人が半日程度で台湾旅行の準備をするのにほどよかった.おかげで現地語のいくつかは聞き取れた.(ただし,どうせ勉強するなら英語を優先すべきであろう)


  • 渡辺利夫・朝元照雄 (eds.) (2010) 『台湾経済読本』 勁草書房
改めて台湾経済をざっくり掴むのに利用した本.個々のトピックには興味がある (R&Dに多く支出しているしR&D従事者も多い割には,論文の刊行も引用も少ない,など) けど,脇が甘い論考が多く,買うほどではないかな.


  •  亜洲奈みづほ (2012) 『現代台湾を知るための60章 (2nd ed.)』 明石書店
雑多な知識を集めるために読んだ.政治,経済,社会,文化を幅広くカバーしている.高いインテリジェンスを感じるよい文章.

Sunday, February 2, 2014

14年1月沖縄県主要指標

先月の記事: 13年12月沖縄県主要指標

鉱工業生産の基準年が改訂された(H17→H22).
  • 主な変更点:
    • H22基準は,投資財(金属製品など)のウェイトが6%ほど上がり,消費財のウェイトが4%ほど下がった.
    • 産業分類に変更あり.
      • 統合: 化学工業 + 石油製品工業 -> 化学・石油製品工業
      • 分割: プラスチック製品工業がその他の工業から独立
      • 木材・木製品工業が在庫のみ秘匿に.木材の在庫溜まりすぎと本blogでつっこんだせいではないとは思うけど.
どのぐらい変わったか目で確認しよう.原系列と,低めのlambda(=16)のHP filteringを示しておく.青線が古い方,赤線が新しい方である.
沖縄の鉱工業生産指数, 青がH17基準のトレンド, 赤がH22基準のトレンド. 薄い線がH17原系列, グレー線がH22原系列. 出典: 沖縄県「鉱工業生産」

沖縄の鉱工業出荷指数, 新旧比較..

沖縄の鉱工業在庫指数, 新旧比較.
  • 重複している期間を比べると,生産指数は3.82%アップ,出荷指数は1.64%ダウン,在庫指数は4.83%ダウン.
    • リンク係数は,生産指数で+3.11%, 出荷指数で-1.13%, 在庫指数で-4.97%, となる.(X-ARIMAを使ってないので公式のとは少しずれがあるはず)
    • 相関係数(pearson)は,生産指数で0.887, 出荷指数で0.846, 在庫指数で0.825, となる.案外低め(?).
    • 前年同期比に直すと,相関係数は生産指数で0.922, 出荷指数で0.935, 在庫指数で0.952, となる.

前年同期比の違いを目視しよう.水準ではなく変化を見る場合は接続してもよいかもしれない(データ終期で差があるのはfilter特性+標本の違いな気がする).
鉱工業生産, 前年同期比.
鉱工業出荷, 前年同期比.
鉱工業在庫, 前年同期比.
在庫循環(のようなもの)も比較してみよう.横軸に生産・出荷どちらを取っても,13年頃からどちらの基準年でも不思議な動きをしている.(この手のdiagnosisに詳しくないのでよくわからない.)
横軸: 鉱工業生産トレンド(前年同月比), 縦軸, 鉱工業在庫トレンド(前年同月比), 青がH17基準, 赤がH22基準.
横軸: 鉱工業出荷トレンド(前年同月比), 縦軸, 鉱工業在庫トレンド(前年同月比), 青がH17基準, 赤がH22基準.

以下は業況判断と物価と失業をまとめておく.
県内企業業況判断(13年Q4):
沖縄県内企業の景況感. 点線は原系列, 実線は季節調整値. 黒線: 沖縄公庫のD.I., 青線: 内閣府沖縄総合事務局のB.S.I., 紫線: 日銀那覇支店のD.I., オレンジ線: おきぎん経済研究所.  出典: 沖縄振興開発金融公庫「県内企業景況調査」, 内閣府「法人企業景気予測調査」, 日本銀行「県内企業短期経済観測調査結果(短観)」, おきぎん経済研究所「おきぎん企業動向調査」.
  • おきぎん経済研究所のデータ(オレンジ色)も加えてみた. 相対的にポジティブな動きをしている.
  • 全体的には,ブームも一服,という印象も.増税後にどこまで折れるかな.

消費者物価指数(12月分):
那覇市のCPI(灰色), コアCPI(赤), コアコアCPI(青)の前年同期比のトレンド(単位: %). 薄い色が原数値. 出典: 沖縄県 「消費者物価指数」
沖縄県のCPI(灰色), コアCPI(赤), コアコアCPI(青)の前年同期比のトレンド(単位: %). 薄い色が原数値. 出典: 沖縄県 「消費者物価指数」
  • 生鮮食品・エネルギーの上昇が目立つが,少し前の日経にもあったように卵の値段も上がってきている模様.交通費もじわり上昇中.
完全失業率(12月分):
沖縄県の完全失業率, 男性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
沖縄県の完全失業率, 女性 (単位: %). 青がトレンド, 灰色太線が季調値, 薄い灰色が原数値. 出典: 沖縄県「労働力調査」
  • パートは増え名目賃金はこれといって顕著に上がる兆しが見えない中,失業率自体は引き続き低下中.
とりあえずこのへんで.

Saturday, February 1, 2014

国際経済学II, 第15回


すっかり暖かくなってきましたね.

講義内容:

  • 最適通貨圏
    • 景気の動きが地域間で似通っているか,違っていても所得移転などでそれを均すことができるような場合,共通の為替レートにするデメリットは小さい.そうでない場合は独自通貨を持つのもありかも.
    • 通貨の選択は,国際的な所得分配の問題と直結するので,政治的な要因を考慮するのも大切.
  • 全体のまとめ
    • 国際収支表,為替レートを巡る理論と実際,為替と景気循環,など国際金融論の主要なトピックスを概観した.お金のクロスボーダーな動きを捉えるきっかけを身につけることはできたはず.
    • 今週は,アルゼンチンなどいくつかの新興国でマーケット混乱中(たまたまVIXを買ってたので助かった…).本講義では十分にカバーできなかったが,通貨危機のメカニズム解明と危機回避のための金融アーキテクチャ設計は国際金融の重要課題.
    • よりアドバンストな内容に関心がある場合,中級マクロ(マンキューやジョーンズなど)を理解した上でクルーグマン・オブストフェルド(・メリッツ)に挑むとよい.マクロや金融の基礎知識がないと,国際マクロの問題意識や分析手法をなかなか理解しにくいと思う.
      • ただし,本学のカリキュラムに沿って勉強するだけでは,中級マクロまでたどり着くのは難しいかもしれない.このあたりまで行くと面白くいし使えるようにもなるとは思うんだけど.(Bewley model以降はもっと面白いよ!)
    • 半年間(前期から履修していた方は一年間)ありがとうございました.

期末試験お疲れさまでした.授業評価アンケートへのご協力も感謝いたします.以下テストの講評・解説などを.
結果:

  • 受験者数30人.
  • 平均点67.9, 中央値70.0, 標準偏差15.1.
  • 得点分布は以下の通り.中間試験よりも難しかった模様.
  • 最終的な成績でA以上は16人いた.GPA高めな人は本講義でもしっかり好成績を収めている模様(当たり前の成績評価をしているだけなので).
    • 期末がボロボロでも中間でそこそこ取れていたので助かった,という人も多い.ご安心を.
  • いつものように採点・成績は公平に機械的に処理しています.ゼミ生に限ってFばっかりなの勘弁してください…(点数以前に出席しなさい) (ゼミ生をいじめてるわけじゃないですよ)

(追記: 試験の解説はその役目を終えたため削除しました.)

Saturday, January 25, 2014

国際経済学II, 第14回

講義内容:
  • 為替と貿易収支
    • 変動相場制は,国際収支のアンバランスを調整する効果も持っている.貿易は通貨の需給に影響するから.
  • 近隣窮乏化
    • 貿易相手国とwin-winにならない政策は,政治的に揉める原因に.
    • 金利を下げたりインフレにしたり,という政策は自国通貨安につながる.
  • トリレンマ
    • 金利平価がポイント.国家間で裁定取引できる(資本移動できる)ときは,金利と為替の動きがリンクする.
    • 固定相場にして世界の金融市場にくっついちゃうと,独自の金融政策は難しくなる.
    • 資本移動をコントロールすれば,為替の安定と自律的金融政策は達成可能.でも,外国資本を受け入れられる土壌を作る中で資本移動のメリットを享受できるかも(特に金融市場が発達している先進国は.cf. Rajan and Zingales 2004).
    • 国際金融の有名な命題であるだけに,様々な検証がなされている.実際,自由に資本が移動する中で,完全に外界と隔絶した金融政策を行うことは変動相場制であっても難しい.
期末試験:
  • 31日に期末試験を予定.おおよそ中間試験と同じ要領で行う.悔いの残らないよう勉強してほしい.
    • 出題範囲は第4.4章以降の内容.
  • 練習問題もアップロード済み.適宜挑んでほしい.
  • 万一31日に出席できない場合,事前に相談を.寝坊に注意(早めに来てどこかで試験勉強するのが吉).

コメントより:
  • 「円安が日本に与える影響がよくわかった」
    • 将来円高になったら何が起こるかも予測できるかもしれませんね.

参考文献:
  • Raghuram G. Rajan and Luigi Zingales (2004) Saving Capitalism From The Capitalists: Unleashing The Power Of Financial Markets To Create Wealth And Spread Opportunity, Princeton University Press. (堀内昭義ら訳『セイヴィング キャピタリズム』慶應義塾大学出版会)

Wednesday, January 22, 2014

経済政策II, 第15回

講義内容:
  • ゼロ下限制約
    • 日本では長らく通常の金融政策がうまく力を発揮できない状況にある.ではどうすればよいか,議論が喧しくなされている.
      • 10年前私が初めてマクロ経済学を学んだときにも,量的緩和の話が出てきた記憶がある.英語での講義だったこともありまったくついて行けなかったけど,流動性の罠の図による説明だけはとても印象的であった.
    • こうした状況を脱出した暁に何が起こるかにも注意しなければならない.現行の金融政策の学術的評価が定まるには,しばらく時間を要する.
  • 通貨発行の利益
    • インフレは税としての側面を持っている.再分配の問題が関わってくるので,政治的イシューも大いに絡んでくる.
    • 徴税手段に乏しく財政赤字に苦しむ国は過剰なインフレになりがち.
    • マクロ経済政策運営に失敗するとハイパーインフレになる危険性もある. 
  • 全体のまとめ
    • マクロ経済学は様々な市場が相互に関係し合う厄介な分野.マクロ経済政策運営も当然大変な作業であり,多くの優れた研究者達が頭を悩ませてきた.
    • 勉強してすぐに役立てることができるという代物ではないけれど,社会を大局的かつ体系的に眺めることができるようになるのは,学問をする愉しみであると思う.
      • 個人的には,やはり10年前は,男ならマクロだろう,と変なロマンを感じて勉強していました.あのときの興奮を伝えられたかどうか不安ですが,教えている側はけっこう楽しい講義でした.おつきあいいただきありがとうございます.

期末試験お疲れさまでした.授業評価アンケートもご協力ありがとうございました.以下,結果の概要と,間違いの多かった設問について簡単な解説を行います.

Tuesday, January 21, 2014

現代の世界

他学部のオムニバス講義に駆り出された.Gilboa and SchmeidlerやWeitzmanの議論を踏まえながら,期待効用のリーチとリミットについて簡単なレクチャーを行った(確率リテラシーがない人にとって簡単だったかは関知しない).未読だが,小島寛之(2013)『数学的決断の技術: やさしい確率で「たった一つ」の正解を導く方法 』朝日新聞出版, も似たような話を平易に解説しているようなので,私の説明不足だった分を補完するのに役立ててほしい.

Cンター試験監督含め,参加制約が満たされてない仕事が多くなってきた.(試験監督はある種のlump-sum taxだと観念している.課税対象集合に疑義はあるが.)
専門外のことを勉強してそれなりに得るものはあったが,研究で使えるほどではないし,何より専門家としての良心に悖る.アウトリーチ活動(と呼べるかどうか定かでないが)に十分大きな正の外部性があり,私がもっと利他的な選好を持ち合わせていればいいのに.

期末試験の採点さえ終われば今年度も終わり.春休みにはワークショップを開催するなど,健全な研究生活に戻りたい.(WS報告者募集中.今のところ旅費や謝金は出せません.)(主催するよりも余所で報告できる論文を作るほうが先決というツッコミは勘弁してください.)

Wednesday, January 15, 2014

経済政策II, 第14回

講義内容:
  • 貨幣市場と金融政策
    • 日銀当預を通じて日本の貨幣経済が成り立っている.日銀当預ではなんと1日あたり120兆円にも上る額の取引決済が行われている.
    • マネーの需給バランスから利子率が決まる.
      • 貨幣供給は,債券の売買を通じて行うのが基本.タダでばらまいたり,強制的に回収したりはしない.
      • 貨幣需要は,貨幣を保有する機会費用(利子率)に依存する.
        • 現金は無利子である.これは自明だがとても重要な性質.
      • 中央銀行は,貨幣供給に働きかけることで,景気循環をマネージしている.
    • 中央銀行は利子率のコントロールを通じて,景気とインフレーションをコントロールしている.利子率は投資やGDPの動向と密接なのである.
    • コントロールの方針として,テイラー・ルールのようなシンプルな方程式に基づくやり方がある.ルールに基づいた政策運営は,場当たり的に政策を左右しない,誰かの賄賂や脅迫には屈しない,という意思表示でもあるかもしれない.
    • 失業を減らすのはいいけれど, フィリップス曲線が動かなければ,インフレという別のコストが発生する.インフレに許容的な人(いわゆる「ハト派」)もいれば,インフレは庶民の大敵と見ている人(「タカ派」)もいて,彼らの政治的なせめぎ合いの中で現実の金融政策は運営されている.
  • 金融・貨幣市場の動きが財市場(インフレ)や労働市場(失業)とつながっていくような,とても壮大なストーリーになっている.こうした複雑な経済システムをより丁寧に理解していくためには,連立方程式などの数学的テクニックが避けて通れなくなる.市販のマクロ経済学の教科書を手に取り,本講義でカバーした入門レベルの内容を越えてどんどん勉強していってもらえれば幸いである.

期末試験:
  • 労働市場の需給の話から,今日カバーした分までを出題範囲とする.
    • レジュメ6の残りは来週補足説明するが,出題はしない.
  • 練習問題を作成し,アップロードした.特に今日の話は論点が多く消化不良ぎみかもしれないので,問題を解いて頭を整理してほしい.直前になってしまいすみません.
    • (独り言) 練習問題はフォーワード・ガイダンスに似ている.練習問題を充実させすぎると,学生の到達度をかえってこちらが測りにくくなる,というのはglobal gameの話に似ている.金融政策の勉強は仕事の役に立つものだ.(?)
コメントより:
  • 「日本銀行がそのような役割をしているとは初耳」
    • 日本銀行は異色な組織ですね.国民にはなかなか理解されにくい役割ではありますが,失業やインフレといったマクロ経済政策の中心的問題を考える上で,中央銀行の働きは無視できません.世界中の投資家も日銀やFRBの動きをいつも注視しています.