Wednesday, February 18, 2015

佐藤『都市・地域経済学への招待状』ほか

アメリカに行ってきた.都市経済学の扱う問題は,アメリカに行かないとなかなかイメージが掴めないものだ.

今回の旅ではUberがとんでもなく便利だと実感した.交通後進国沖縄でも早く使えるようになってほしい.

たまには読書エントリも.
  • 佐藤泰裕『都市・地域経済学への招待状』有斐閣, 2014.
    • 都市経済学の教科書はそれなりに充実しているものの,地域経済学はそうではない.これらの分野を統一的に扱っており,地域経済系の講義にも役立つテキスト.面白い定理をわかりやすく記述しており,教え甲斐がありそうだ.
    • 内容的には東大都市経済学の衣鉢を継ぐかのような正統派モノになっている.レベル的には(ミクロと経済数学が必修な)普通の経済学部で使えそうだ.あと10年は定番教科書として定着しそう.ただ,教員側の行間を埋める能力は試される.
    • 献本ありがとうございました.次年度新たに持つ予定の講義で指定教科書にいたします.
  • 矢作弘 (2014) 『縮小都市の挑戦』 岩波書店.
    • デトロイト・トリノのケーススタディ.特にデトロイトはなまじ有名なだけによく知らないまま持論を牽強付会する論者が多く見られるが,本書では実際生じている問題の多面的な複雑さを日本語で一望できありがたい.行政と開発のガバナンス,居住の層化,空きロットの調整,などはいずれ日本の都市でも直面する重要課題になるのではないか.反転の兆しが見えるあたりは少し感動的だ.
    • 元日経記者らしい視野の広さと簡潔な文章もよい.なかなかの労作.
    • 都市のshrinkは今に始まったことではないが,増え続ける遊休地の研究は都市計画のほうで最近ブームのようだ.経済学でも昔からやられているはずだ(金本先生の教科書にあるし,少子高齢化+都市経済の分析自体は珍しくない)けど最近はどうなんだろう.ゾーニングのやり直し,資産価値の毀損,治安の悪化,など,実践上喫緊の課題は少なくなさそうだ.一昔前は日本の家が狭いことが問題視されていたのにね.
  • 堤未果 (2008) 『ルポ 貧困大国アメリカ』岩波書店.
    • 読点ごとに論理を飛躍させるのはやめてほしい.「暴走」や「破綻」をしているのは筆者のほうだろう.
    • 「世界的な経済学者」と紹介されている人,Google Scholarで査読論文がヒットしないんだけどなぁ.
  • 有馬哲夫 (2011) 『ディズニーランドの秘密』 新潮社
    • 本家ディズニーランドに行く前に読みたい.テーマパークのコンセプトやそこに込められた思い入れを知ることが出来る.ただちょっと冗長.
    • 自分はCalifornia Adventure Parkのほうに行ってしまった.罰が当たったのか,乗っていたジェットコースターが緊急停止してしまった.sudden stop!
  • 岩田規久男『国際金融入門 (新版)』岩波書店, 2009.
    • 現副総裁.戦後の日本経済をマンデル・フレミングの枠組み内で解釈しようとして無理が生じている.こういう本が国際金融の定番入門書として紹介されていることに違和感を覚える.
  • 服部哲也 (2014) 『統計と確率の基礎 (第3版)』学術図書出版社.
    • 数理統計.今年度読んだ本の中で一番かも.学部のときに読んでおきたかった.
  • Uri Gneezy and John A. List (2013) The Why Axis: Hidden Motives and the Undiscovered Economics of Everyday Life, PublicAffairs. (『その問題,経済学で解決できます.』2014年,東洋経済新報社)
    • この業界にいたらどこかで小耳に挟んだことのある話が多い.けれどとても挑戦的で面白かった.経済学が退屈だと思っている人にこそ,経済学の最先端ではどういう問題意識とどういう手法でどういう試みがなされているかを知ってほしい.

教育業務の後片付けをしたらやっと研究に専念する時間を捻出できそう.なかなかキツイ状況である.

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