めっきりblogの存在を忘れていた.テスト前日なので更新.
講義内容
コメントより
講義内容
- 労働市場のモデル
- インフレ・デフレが労働の需給そのものに影響しなければ,均衡も結局動かない.
- インフレーション
- フィリップス曲線という経験則がある.通常は中央銀行はフィリップス曲線を所与として景気をコントロールしようとしている.
- インフレは貨幣の持つ実質的な価値を下げることになる.ただし,それがどう経済に影響するかは,素朴な庶民感覚で判断していけない.
- 教科書的には靴底コストやメニュー・コストといった煩雑さがインフレ・デフレのコストの代表例である.
- ただし近年のデフレを巡る論争で特に焦点になっているのはそこではなく,名目金利の非負制約により実質金利を自然率と一致させられない,という点にあるようです.
- 貨幣の役割
- 欲望の二重の一致を回避し,取引決済を円滑にするためのかけがえのないインフラになっている.
- 貨幣は預金も含む.取引決済に使えるのは現金だけではない.
- 日銀の仕事について詳しくは,『日本銀行の機能と業務』やその他日銀の広報パンフレットによくまとまっているのでご覧あれ.かなり手強いが,白川前総裁の『現代の金融政策: 理論と実際』日本経済新聞出版社,も手元に置いておきたい.
- 金融政策による景気の制御
- 金利を動かし投資に働きかけることで,総需要を動かし景気を動かしている.ここでの議論はIS-LMモデルに基づいている.IS-LMは別途勉強してほしい.
コメントより
- 「失業者がいないときはインフレでも人手不足で実質賃金は元に戻りそうだが,失業者がいるときは下がったままになりそう」
- 非常に勘が良いですね.名目変数が市場メカニズムが想定するように動かないようなときには,インフレは実体経済にも影響が及びます.
- 「インフレはよいと思っていたけど,実質的に貧しくなるので嫌いな人が多いのを初めて知った.でも市場メカニズムがうまく働けば,実質賃金は元に戻るので結局同じで,そんなに変わらないのかなと思った」
- インフレ・デフレがなぜよい・悪いと言えるのか,多岐にわたる論点を丁寧に考える必要があると思います.一概にいいか悪いかの二者択一で判断しようとしないことが何より大切ではないでしょうか.
- 「インフレの時は社会的にお金が回るので景気は良くなるのではないか?それともデフレのほうよいのか?」
- 講義ではインフレは労働需要曲線にも労働供給曲線にも影響を及ぼさない,と暗黙に仮定していました.もしインフレで景気が良くなり,労働需要曲線が右方向 にシフトすれば,雇用・賃金におっしゃるようなポジティブな影響があると考えられますね.よいところに気がついたと思います.
- ただ,インフレになるとお金が回るようになるかと言えば,私にはそれを正当化する理論がすぐには想像できないです.
- (貨幣の流通速度が内生的に決まるモデルをよく知りません…)
- 総需要・総供給モデルを学んだときにも注意喚起しましたが,「景気が良い→インフレになる」と「インフレになる→景気が良くなる」は意味が異なります.
- デフレのほうがよいか,というとそうだという理論(フリードマン・ルール)がプロの間では一つのベンチマークだと思います.現在の日本にとってデフレのほうがよいか,については様々な議論があります.私自身はこれといって特定の信念や専門性を持っていないので何とも言えません.
- 「インフレは経済でも財政でも上昇していることを表しているが,なぜそれが失業につながっていくのか?」
- フィリップス曲線を頑健な関係だと認めれば,失業がインフレ率と密接な関係にあること想像が付きそうではないでしょうか.フィリップス曲線自体がどこから来ているのかを説明するのは少し厄介なので迂回させてください(たとえば価格を自在に変えられるわけではない企業の価格戦略が背後にあると考えられます).質問前半の意味はよくわかりませんでした.
- 「インフレになると失業率はどうなるのか」
- 下がるといいんですけどね.「失業→デフレ」という逆の因果関係もありえますし,データで検証するのは簡単ではないと思います.
- 「M1などはものの取引以外にも使えるのか?」
- 貨幣は単に取引決済をする以外にも使い道があります.価値を将来まで保存すること(価値保存機能)や性質の異なる財・サービスの価値を一つのモノサシで計れるようにすること(価値尺度機能)があると考えられています.
- 「政府が赤字の場合,日銀はどこからお金を借りてくるのか?」
- 政府が赤字をファイナンスする見込みがなくなった場合,お金を借りるというか,インフレが生じて貨幣を保有する主体から富を奪う,という形になるのではないかと思います.
- 「紙幣などは年間いくらまで作ることができるのか?」
- 実際のマネーの変化は,毎月日銀が公表しています(リンク: マネーストック統計, マネタリーベースと日本銀行の取引).M1からM3で見ると,およそ年率2~5%で増えているようです.
- 限界でどのぐらいできるかというと,所詮はお札なので限界などなく,いくらでも刷ってばらまくことができる,とは言えます.ただし貨幣は貨幣でなくなるでしょうけど.
- 「話が早すぎて難しかった」
- 申し訳ないです.用意していた分をまるで消化できず焦ってしまいました.
- 「あけましておめでとうございます.」「今年もよろしくお願いします」「テストに向けてがんばりたいと思います」
- 今年度はあとわずかですがよろしくお願いします.